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Massive Excavation Underground Mine with Jumbo Drill

非難轟々でも「盗掘」を続けた朝鮮総督府。バックについた“味方”の正体

北朝鮮にある金剛山は、地下資源が豊富な鉱山として知られていますが、この金剛山で自然破壊を行っていることについて、戦前から議論がかわされてきていたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、かつて おこなわれていた「盗掘」への批判についてまとめています。

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2023年1月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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盗掘などで自然破壊する北朝鮮「金剛山」

朝鮮半島は地下資源に恵まれている。特に北朝鮮は鉄、銅、金、銀、石炭、ニッケル、アルミニューム、マグネサイト、タングステン、モリブデン、黒鉛、鉛、亜鉛、タンタル、モナザイト(モナズ)、希土類(レアアース)などが知られており、マグネサイト(40億トン、世界2位)、黒鉛(200万トン、同3位)など世界的な埋蔵量を誇るものが少なくない。

金属の強度を高めるタングステンは現在、中国が全世界生産額の8割を占めるが、北朝鮮もタングステンの埋蔵量は多く、北朝鮮各地にタングステン鉱山が分布している。景勝地として有名な金剛山は「山そのものが鉱脈」であると紹介されるほどで、金剛山は黄海道の天恵鉱山と共にモリブデン鉱山としても知られている。

さて、広瀬論文の「金剛山の自然破壊」の項によると、朝鮮総督府が1936年8月から金剛山国立公園化政策を中止し、その一方でタングステン採掘を進めて金剛山の自然の自然を破壊していることに、朝鮮人や日本人から批判の声が起こった。1938年7月、「東亜日報」は社説で「霊峯金剛を守護しよう」として、次のように述べた。

「最近産業奨励の当局の方針により、特に水鉛、重石等軍需物の需要激増に促され、金剛山に着目着手する鉱業家が続出する一方、保護区域内に盗掘が盛行し、これら無軌道無統制な徒党の跳梁によって霊峯金剛の風致が日毎に損なわれ、このまま放任すれば金剛山がその面目を失う日は遠くない。(中略)所謂(いわゆる)保護区域の設定にこのような大きな遺漏があり、これを補足する対策を急いで考究しなければ、保護区域設定の意義を喪失するだけでなく、さらに重要なのは霊峯金剛を失う千古の惨事を迎えるだろう」と危機感を示した。

1938年12月、東亜日報は社説「金剛霊峯の脅威──毀損は絶対不可」で、朝鮮総督府殖産局が採掘許可を拡大していることに対し、次のような反対の立場を示した。

「タングステンやモリブデン等貴石鉱は軍需工業に不可欠と言えども、金剛山でなければ収得できないわけでなく、他所でも需要量は取得することができる。その産出額からも、その品質からも金剛山は良質ではなく(採掘を)あえて許可しなくても国策上、別に支障はないでないか。(中略)金剛山のように山と水と地の絶妙さを備え持つ名勝は、世界が広くてもこれを求めることはできない。(中略)吾人(ごじん=我々)はこの一つの理由だけでも、殖産局の金剛山採掘許可方方針に極力反対するものである。

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東亜日報はまた、1940年1月の社説「金剛山保勝に警鐘」で、政策の矛盾を次のように指摘した。

「われわれは霊山金剛に対する開発という言葉を受け入れることはできないと主張してきた。仄聞(そくぶん)するところによると、(総督府殖産局では)七、八ケ所の鉱区を認許し、会社組織によって開鉱し、その利益の寄付を保勝費に充(あ)てると言うが、このような近視眼的開発案はあり得ない。鉱区を認定することはすでに開発であり、また官営でない企業が会社に開発を一任すれば、営利の前に保勝が蹂躙(じゅうりん)されることはあまりに明確なことだ」。

しかし、朝鮮語新聞のこうした批判を、朝鮮総督府はまったく受け入れなかった。前述したように、実際には、総督府殖産局の背後には朝鮮軍があったのである。

総督府への批判は朝鮮人にとどまらず、日本人も同様だった。

1935年10月、東京帝大農学部の内田桂一郎は金剛山で1か月調査し、観光客の急増と鉱業の拡大により、大きな危機に直面していると指摘した。

観光客は1934年が約4万人だったと推定し、地域の面積を基準にすると日本の雲仙国立公園、中部山岳公園の訪問客より多いとする、と。また鉱業についても、金剛山中にも金・重石・水鉛などを蔵してゐる。現在、新豊里・上登峯千佛洞,金剛川上流・外金剛駅付近等諸所に上記の鉱石の採掘選鉱をなしてゐるが、此等鉱山の採屑鉱を四方構わず放置散乱せしむるは重大な風景地の破壊である。又此れに付随して選鉱等の工場を建築し、鉱煙を煙突より吐出し森林岩石を汚物を以て被はせる事を見れば、探訪者をして再び来らざるを誓はしめるであろう、と警告した。

このように、1935年10月時点で金剛山では地下資源の掘削が行われ、自然破壊が進んでいたのである。当時の新聞には、山にこっそり入り、リュックサックに鉱石を詰めて盗む「タングステン泥棒」の記事が散見された。

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image by: Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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