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スパイ気球撃墜の原因は「中国の痴話ゲンカ」涙目の習近平 処刑か戦争開始か?

2月2日にアメリカ上空で確認され、大きな騒ぎとなった中国の偵察用と見られる気球。結果的に米空軍機により撃墜され習近平国家主席の面子が潰れた格好となってしまいましたが、この騒動、誰が何の目的で仕組んだのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、気球を米上空に飛来させた勢力を推測する専門家の分析を紹介。さらに中国の歴史を紐解きつつ、この気球事件が対外戦争にまで発展する危険性があることを示唆しています。

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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年2月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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戦争する気満々の偵察気球が露わにした習近平のボロ。中国のお家芸「失脚なら処刑」も?

中国、気球問題で対米姿勢急変-遺憾の意表明から一転、報復を警告

アメリカ本土に中国の気球が飛来し、これをアメリカ空軍が撃墜したことは、すでにニュースなどでご存知のことでしょう。事の起こりは2月2日、アメリカ国防総省の報道官が、中国による偵察用気球がアメリカに飛来したと発表したことからでした。

この気球はアメリカを横断し、2月4日、サウスカロライナ沖に出たところで、米空軍のF22戦闘機によって撃墜されました。被害を回避するため、海上に出たところで撃墜したわけです。この件に絡んで、ブリンケン国務長官は、2月5日から予定していた中国訪問を延期することを発表しました。

中国政府は当初、気球は民間の気象研究用であり、不可抗力によってアメリカ領空に入ったと説明し、「遺憾の意」を表明していましたが、撃墜後の5日には「明らかな過剰反応」だとアメリカを非難し、報復措置の可能性も示唆し、態度を急変させています。

来るなら迎撃するまでだ。スパイ気球は日本に飛来の過去も

中国の気球は中米コスタリカでも確認されており、中国はこちらに対しても不可抗力で進入したとして「遺憾の意」を示しています。2つもの気球がいずれも計画航路をそれて他国へ進入したことになりますが、そのようなことがあるのでしょうか。同様の気球は、日本でも2020年に仙台で目撃されています。

そもそも、民間のものだというなら、その民間会社の責任者が記者会見なりを開いてもよさそうですが、そういう動きもなく、また、中国政府はその民間会社の名前も明かしていません。これも不思議なことです。

中国外務省の毛寧報道官は、メディアから「中国はなぜ自国の気球をコントロールすることがそんなに難しいのか」と問われ、「私は専門家ではないので答えられない」と答えをはぐらかしたそうです。

被問為何中國很難控制氣球? 毛寧稱:我不是專家

この気球がスパイ用だったかどうかは、今後のアメリカでの分析で明らかになると思いますが、いま中国問題の研究家のあいだで話題になっているのは、習近平政権は、なぜ世界中に撃墜シーンが映し出され、面目が丸つぶれになるようなことを、わざわざしたのかということです。アメリカが撃墜しないとタカを括っていたのでしょうか。他国の領空を侵犯するような物体を飛来させておいて、それではあまりにも能天気です。

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米上空に偵察気球を飛来させたのは誰か?バカにされた「中国最大の小学生」習近平

ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズは、この事件は習近平の指導力に疑問を投げかける出来事であるとし、習近平政権が誇るコントロール体制や内部セキュリティが、言うほどきちんと構築されていない、または有効ではない可能性があると指摘しています。

しかも、ブリンケン国務長官の訪中を前にして、わざわざアメリカを刺激するような事態を引き起こしてしまったわけですから、わざわざ緊張関係を作り出してしまったことになります。

MITの安全保障研究プログラムディレクターのテリー・フー主任研究員は、ブリンケン米国務長官の訪中が予定されていることや、習近平が気球の航路を知っていたなら放出を承認することはなかったと思われることから、「気球が発見された場合の政治的影響を認識していなかったか、あるいは長期計画で取り組んでいたため存在を忘れていたか、そうでなければ、米中関係の緩和を望まない解放軍による策動」と論じています。

氣球事件 加深習近平領導力的質疑

また、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の元上級客員研究員である唐安竹氏は、人民解放軍と党中央委員会との連携不足、あるいは習近平の米中関係緩和を妨害する共産党による陰謀の可能性があると指摘しています。

元国務次官補(アジア太平洋担当)のスーザン・シャーク氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、「特に中国にとって国際的にも国内的にもダメージが大きいのは、中国政府の能力に対する疑問を投げかけ、それが習近平のリーダーシップに対する疑念を深める可能性がある」と述べています。

シャーク氏は、習近平は若い頃は小学校までしか正規の教育を受けておらず、中学生の時に文化大革命の「下野」運動で中断されたことが中国のネット村民に暴露され、「中国最大の小学生」と言われることがあると指摘。

今回の気球事件は、中国の誇る安全保障機構である習近平政権内のコミュニケーションとコントロールが、米国領空の不正利用や無謀な軍事的奇襲など、自信を持って世界に示すほど首尾一貫していない可能性や円滑に機能していない可能性を世界に知らしめたとし、中国がグローバルパワーとしての地位を高めることを管理できるのか、中国研究家は疑問を持ち始めていると報告しています。

痴話ゲンカに涙目?習近平政権で内紛か

つまり、以上の意見はすべて、反習近平派が仕掛けた可能性を指摘しているわけです。中国ではどんなに権力を掌握しても、反対派による策動が湧いて出てくることが歴史上、繰り返されてきました。建国の父である毛沢東も、中華人民共和国成立後ですら何度も政治的失脚の危機が繰り返され、その結果、熾烈な権力闘争が展開され、文化大革命をはじめとする大動乱へとつながっていったのです。

振り返れば、習近平の外交機会にあわせて、それを邪魔するかのようなことが起こる、ということは何度も起こっています。

たとえば2014年9月、習近平はインドを初訪問しましたが、その最中、中国と国境を接するインド北西部ラダック地方では、約1,000人の中国軍部隊がインド側に越境し、インド軍と衝突するという事件が起こりました。

中印首脳会談、国境付近では両国軍にらみ合い

よりにもよって、インド初訪問時に、中国側からインド軍を挑発するような行為が行われたのです。もちろんインドのモディ首相はこれに対して抗議し、習近平は面子を潰すことになりました。さすがにこれは習近平の指示とは考えにくいでしょう。

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権力闘争に負けたものは「処刑」が中国の“お家芸”

中国という国は、大きすぎるために統制も大変です。習近平政権は数億台の監視カメラを使い、言論や思想の自由を統制しようとしていますが、それも完全にはできません。最近は、ゼロコロナ政策に反対するデモ「白紙革命」が起こりました。

独裁国家ではあるものの、極めて不安定なのです。中国では秦の始皇帝からラストエンペラーの清の宣統帝まで、約2,000年のあいだで皇帝は209人でした(通史)。しかしそのうちの63人は殺されており、じつに皇帝の3分の1は天寿を全うできなかったのです。しかも80歳まで生きることができたのはわずか5人しかおらず、殺害されずとも、さまざまな軋轢によって早逝した皇帝も少なくありません。

明朝最後の皇帝である崇禎帝は、反乱軍が都に迫る中、娘に手をかける際、「なぜそなたは皇帝の娘などに生まれたのだ」と嘆いたことは有名です。

このように、独裁政権をめぐる権力闘争が繰り返されるため、中国の政治は常に不安定でありつづけました。そして、こうした内部の権力闘争は、対外戦争に転嫁されやすいというのも、中国の特徴です。

始皇帝亡き後の秦王朝で専横を極めた宦官の超高は、権力闘争のライバルを蹴落とすため、楚との戦いに出た名将・章邯に援軍を送らず、敗戦の責任を取らせて誅殺しようとしました。

鄧小平は華国鋒との権力闘争に勝利するために、1972年、ベトナムに戦争を仕掛けて中越戦争を起こしました。軍を動かせるのが自分であることを示すと同時に、政敵の軍を最前線に立たせて敵に殲滅してもらい、政敵の力を削ぐためです。

このように、中国の政治権力は奇々怪々であり、その不安定さが対外戦争の原因に成ることも少なくありません。今回の気球事件の不可解さは、中国政権内部で大きな変化が起こっている可能性と、中国の対外冒険主義が増大する危険性をも示しています。

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image by: U.S. Department of Defense

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