韓国の尹錫悦政権が早期の解決を望んでいるという徴用工問題。そもそも1965年の「日韓請求権協定」で既に解決済みとなっているはずのこの問題を、世界はどのように報じているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、香港の有力英字紙に掲載された記事を紹介。その内容が「韓国寄り」となっている理由を解説するとともに、日本が諸外国との宣伝戦に勝つためなすべきことを、具体的に提示しています。
大詰めを迎えている日韓の徴用工問題。世界はどのように報道しているのか?
日韓の徴用工問題の交渉が大詰めを迎えています。
世界はそれをどのように報道しているのでしょうか?
ご紹介するのは香港のサウスチャイナモーニングポストの2月17日記事です。
ソウル-東京戦時補償協議、被害者基金計画の欠陥で難航
韓国政府は先月「最も実現可能性の高い」案として、ソウルに拠点を置く基金が韓国企業から寄付を受け、被害者に補償を行うという計画を発表している。
この基金は、韓国外務省が提案したもので、巨大鉄鋼メーカーのポスコなどが資金を提供する。ポスコは、1965年の条約により韓国が日本から経済援助と融資を受けた企業のうちの一つであった。
被害者の中には、この提案を「検討する価値もない」と拒否し、日本が賠償金を支払い、明確に謝罪するよう求めている人もいる。
「死ぬ前の最後の願いは、日本から心からの謝罪を受けることです」と94歳の被害者ヤン・クムドク氏は木曜日に記者団に語った。
ヤンさんは、日本で強制労働させられた数万人の朝鮮人の一人で、1944年に学校の学部長から「日本で財産を築くことができる」と言われたそうだ。
その結果、彼女は名古屋にある日本の三菱航空機の工場で奴隷労働を強いられることになった。
韓国の最高裁は2018年、日本企業に対し元強制労働者に1人1億ウォン(約1,000万円)相当の賠償金を支払うよう命じ、裁判所の命令に従わない場合は国内の資産を清算すると脅した。
このような裁判で15人の韓国人が勝訴しているが、他に約200の裁判手続きが進行中で、補償を受けた人はいない。
解説
韓国よりの報道です。
この記事を書いた人はパク・チャンギョンという韓国系の方なので、当然そうなるのでしょう。残念ながら、世界の著名な新聞社で働いているのは、韓国人が日本人よりも圧倒的に多い印象です。
記事は続きます。
ソウルの国民大学校のイ・ウォンドク教授(政治学)によると、ソウルは現在、東京に基金への出資と被害者への謝罪を要求しているが、日本はこの提案に「激しく反対」しているという。
日本はこの問題を原則的な問題として捉えており、1910年から1945年の韓国植民地支配に起因する賠償問題はすべて1965年の条約によってきっぱりと解決されたと主張しているため、「日本は一歩も譲らない」と彼は言った。
「日本側との何回もの協議を経て、いらだったソウルは最後のオファーを東京に提示するだろう」と彼は言う。
この動きは、今週末のミュンヘン安全保障会議(MSC)の傍らで予定されているパク・チン外相と林芳正外相の会談で行われる可能性がある。
この会談が期待通りに行われた場合、日本が被害者への謝罪とともに、基金への「少なくともわずかな自国負担」を拒否すれば、韓国は交渉の「決裂」を宣言できるだろうと、この会談をよく知るイ教授は言う。
「ソウル側はやるべきことの90%はやったと考えており、あとは日本が解決してくれることを望んでいる」と述べた。
日本企業や軍用売春宿で働かされた韓国人への賠償など、1910年から45年にかけての日本の植民地支配の未解決の遺産は、長い間両国の争いの種となってきた。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
解説
交渉が決裂したら日本の責任である、といったニュアンスがあります。
しかし、「公平な記事ですよ」という印象をあたえるために日本の主張も最低限だけ書かれています。
現在の外交や戦争は、宣伝戦の様相が強くなってきています。
実際はどうあれ、世界を納得させて味方につけた方が勝ちなのです。
この香港サウスチャイナモーニングポストはアジアを代表する英字新聞です。この新聞を読む限り、日本はこの戦い(宣伝戦)に勝っているとは思いません。
ユダヤ人には名誉毀損防止同盟Anti-Defamation League(ADL)という組織があります。反ユダヤ主義と合法的に対決することを目的としています。
日本にも世界の新聞・マスコミを監視して、必要なら反論をするような団体・組織ができることを願います。
PS
話、変わりますが、「米国で撃墜された中国からの気球は民間のグループが趣味であげたもの」との報道を韓国の新聞で読みました。
「中国政府が偵察スパイするために気球をあげた」というよりも現実的かと感じました。
本当に偵察機器が搭載されていたなら、それを米国政府は公開すべきでしょう。世界も納得します。
米中のどちらを世界が信じるか、これも情報戦ですね。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』2月19日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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