楽天モバイルが基地局建設のパートナー向けに開催したイベントで、プラチナバンドの展開時期とともに2025年までに「衛星通信の商用化」を目指すと発表。他社に先駆けての「衛星通信」への期待は大きいようですが、課題も多くあるようです。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、実用的なサービスにするには、衛星の数や周波数帯の問題があると指摘。2月27日にバルセロナで始まった「MWC2023」で、ボーダフォンやAT&Tから衛星通信関連の話題が出てくるかを注目点としてあげています。
楽天モバイル「頼みの綱」の衛星通信の商用化は2025年までに実施へ
楽天モバイルは2月22日、法人向けイベント「Rakuten Mobile Partner Conference」を開催した。基地局建設を行うパートナー向けのイベントのようで、これまでの楽天モバイルの取り組みなどが改めて語られた。
目新しい話はほとんど無かったが、ネットワーク関連で矢澤俊介社長からプラチナバンドの展開について「スケジュールは出ていないが、今年の年末から来年の年初には使いたい」とかなり具体的な日程が明らかにされた。
AST社の衛星を使った「スペースモバイル」に関しても「商用化は2024~2025年を目指す」とした。衛星を使った通信に関しては単に衛星を打ち上げればいいというものではない。先日、某社の技術イベントでHAPS関係者にも聞いてみたが「衛星から飛ばす周波数帯は新たなものを用意しないといけない。地上で使っている周波数帯と同じだと干渉してしまう」とのことだった。
楽天モバイルは総務省に提出している資料を見る限り、1.7GHz帯を使うものと思われる。このあたりの干渉をどうするのか、気になるところだ。
また、低軌道衛星を打ち上げるということで、単に1機だけでは無く、相当数、打ち上げないことには継続的なサービス提供はできない。アップルの衛星SOSサービスは数十個の衛星で実現しているが、数に限りがあるため、常時、通信は行えず、SOSメッセージというかなり限定的なサービスしか提供できていない。スマホを通常のように使えるほどの速度を確保するには、相当数の衛星を飛ばす必要がある。
相当数の衛星を飛ばすということはそれだけコストがかさむ。楽天モバイルのためだけに飛ばすというのは現実的ではないため、当然のことながら、ASTのパートナーであるボーダフォンやAT&Tも同時期にサービスを始めることになるだろう。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカで同時にサービスを提供するのであれば、相当な数の衛星を飛ばしてもビジネスとして成立する可能性は高くなるし、全地球をカバーするとなれば、必然的に相当数の衛星が必要になる。
2月27日からスペイン・バルセロナで始まる「MWC」では衛星関連の技術やサービスもいくつか登場する見込みだ。事前に入手しているところだと、衛星通信対応のスマートフォンが登場するなど、端末側の話が多そうだ。残念ながら、AST社での展示はなさそうなだけに、ボーダフォンやAT&Tが衛星関連の話をするのか、展示があるのかというのが注目すべきところだ。
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