MAG2 NEWS MENU

なぜ、人々は「Amazon」で本を買うのか?から考える差別化の意味

インターネットで買い物ができる現代は、たくさんの商品を比較し買いたいものを選ぶことができますよね。しかしその分、企業側は「他社との差別化」に苦労しています。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では発行人の理央周さんが本当の意味の差別化について解説しています。

本当の差別化は、他社と違う製品を作ることではない~ウォルマートとサントリーに学ぶ付加価値の付け方

今号の特集は「本当の差別化について」考えていきます。

消費財にしても、生産財にしても、市場に出した製品やサービスは、最初は画期的で差別化できていても、競合に真似されたり市場が縮小したりして、いつか陳腐化します。

一方で、私たちがどれほど頑張っても、顧客やユーザーの目線から見れば、買う時や契約する時には、「市場にある商品、製品、サービスは、全て同じに見える」のです。

今は、インターネットで、大半の情報を入手できる時代です。

なので、購入したい商品や、契約したい製品の情報は、自社のものだけではなく、競合他社のものまで、くまなく探すことができ、簡単に比較をされてしまいます。

ヘタをすると、顧客の方が私たちよりも、業界や製品について多くの情報を持っていることもあるのです。

なので、いつも私たち事業を推進する側は、つねに「うちの会社はここが違う」と、差別化ポイントをアピールしなければ、簡単に比較されて、最後には「安い方」が買われる、ということになりがちです。

これが価格競争の背景にあるのです。

そこで「差別化は重要だ!」となるのですが、この差別化を勘違いしている人もいるので、今号では、本来の差別化について考えていきます。

差別化とは、いったい何をすることでしょうか?

ちょっと読むのを止めて、頭の中で、考えてみてください。

考えつきましたか?

多くの人が、「差別化とは、ライバルと違うものを作ることだ」と答えます。

しかし、本当にそうでしょうか?

もちろん、違う方がよいのですが、もう少し顧客の目線になって考えてみましょう。

私たちが戦う市場とは、「顧客と企業が、価値と価値を交換する場所」です。

そこでの行為として“売り買い”するので、市場は「物を売り買いする場所」ではないのです。

市場で顧客は「自社・自分が出す金額よりも、“価値がある”」と判断したら購入・契約します。

なので、本来の差別化とは、「顧客の目から見た時に、ライバルよりも価値がある」と認識されることなのです。

ということは、仮にライバルと同じ物を提供していたとしても、その製品やサービス周りで付加価値をつければ、選ばれる、ということになります。

わかりやすいのがアマゾンの書籍販売ですよね。

日本では一部の例外を除いて、書籍は値引きもしないので、同じ本ならどこで買っても同じ値段です。

なので、多くの人がアマゾンで書籍を買う理由は「安いから」「他と違うから」ではありません。

ワンクリックで便利に買える、アマゾンプライムなら無料で配送してくれる、明日に届く、他書店で売っていない本も扱っている、検索がしやすい、欲しそうな本を教えてくれるなど、“便利さ”に価値を感じているので、アマゾンで買おう、という気になるユーザーが多いのです。

このように、差別化は、売っている製品や商品、サービスだけでなく、顧客が購買・契約するプロセス、すなわちバリューチェーンの、どこかのフェイズでも差別化できるのです。

 

この記事の著者・理央 周さんのメルマガ

初月無料で読む

米国の巨大小売チェーン、ウォルマートの事例で考えてみましょう

先日、

ウォルマートが自社店舗の半数に、EV充電用のスペースを設置する

と発表しました(日本経済新聞 2023年4月8日より)。

記事によると、巨大な小売チェーンなので、全米で5,300店舗あるそうです。

その半数の店舗に設置となると、莫大な投資金額が必要になります。

しかし、ウォルマートの試算によれば、「米国人の9割が、同社関連の施設から10マイル(約16キロメートル)圏内に住んでいる」ことになるそうです。

この動きは、ウォルマートだけではなく、大手ドラッグストアのウォルグリーンや、コンビニのセブンイレブンも同様だそうです。

小売業では「その店に行く理由」が明確でないと、安定的な集客が望めません。

その理由が“値段の安さ”や、“品揃えの多さ”だけだと、すぐにライバルに真似されてしまいます。

EVはこれから浸透していくでしょうから、地域の人たちに、「ウォルマートには充電施設があるよね」と、認識されれば、選ばれる理由の1つになります。

このあたりが多大な設備投資をしても、実施する価値があると踏んだ背景なのでしょう。

もう1つ、製品周辺で差別化を狙う事例を、考えてみましょう。

サントリー天然水が、折りたたんで6分の1になる新容器を開発しました。

ITmediaビジネス 2023年4月5日の記事によると、

「新容器は、つぶして、たたんで、ロックできるのが特徴だ。『つぶしたのに元に戻ってしまう』『回収日まで家の中でかさばる』といった声が消費者から寄せられており、こうした不満の解消を目指して開発を進めた」

とあります。

「コスパ」ならぬ、スペースパフォーマンスを、重視した容器になりますよね。

このような製品周りで差別化する動きは、他業界でも続々と出ているようで、

家具大手のニトリが販売する、ポケットコイルマットレスは、処分する際に分解しやすい、「かんたん分別」構造になっている」とのことですし、ジャム最大手アヲハタが、22年8月に販売を始めたボトル容器入りジャム、「アヲハタ Spoon Free」は、スプーンを使わず、片手でさっと使える仕様となっている。

とのことです。

どうでしょうか?

ウォルマートのEV充電スペースの設置は、売り物ではなく、購買体験の前後に、便利さを付加していますよね。

またサントリーの潰して畳めるボトルも、ジュースを飲み終わった後の、廃棄体験の時に感じる不便さを、減らしていくことで、やはり価値を付加をしています。

こうしてみると、顧客が自社製品を見つけ、調べ、比較し、買い、使い、その後廃棄するまでの、一連のプロセスの中で、私たちができることは、まだまだ多くありそうですよね。

このような差別化ポイントは、ユーザーのカスタマージャーニーの分析と、バリューチェーンの見直しを、同時にやることで見つけられます。

まずは、それぞれの過程で、顧客が何をしているか、不便に感じていそうなことはないか、を、棚卸しすることから始めるといいでしょう。

あなたも、ぜひ今日からやってみてください。

この記事の著者・理央 周さんのメルマガ

初月無料で読む

image by:Worawee Meepian

理央 周この著者の記事一覧

ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】 』

【著者】 理央 周 【月額】 ¥825/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 第2火曜日・第4火曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け