ツイッターやインスタグラム、TikTokなどのSNSはプライベートだけでなくビジネスにも活かすことができるツールですが、個人の投稿が炎上しニュースになることもめずらしくない時代、使う際には注意が必要なものでもあります。今回、無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』の著者で特定社会保険労務士の小林一石さんは、会社と従業員間で起きた裁判について紹介しています。社員のツイッターのつぶやきで裁判結果が決まった実例を挙げ、SNS時代に会社に求められることを解説します。
Twitterのつぶやきは復職判断にどう影響するのか
SNSの中で私が一番最初に使い始めたのがTwitterでした。
今では情報検索のときくらいしか使わなくなってしまいましたが、その当時は毎日、しかも1日に何回もツイートしていた気がします。
ただ、普通に使う分には楽しいツールではあるのですが一方で問題点もたびたび指摘されています。
最近も、飲食店での迷惑行為が炎上していましたね。
また、人事労務に関連してもSNSを使った採用活動など前向きな使われ方をする一方で、社員の問題投稿による炎上や、SNSを使ったセクハラなどがたびたび問題にもなっています。
このようにいろいろな方面でSNSの影響が大きくなっていますが、裁判所の判断についてはどうでしょうか。
それについて裁判があります。
ある保険組合で精神病により休職をしていた社員が、自分自身は働くことができるのに、それを認めてもらえずに解雇されたとして会社を訴えました。
それに対して会社は「元々の仕事ができるまでには病気が回復しておらず、休職期間満了による自然退職は合法である」と主張しました。
では、この裁判はどうなったか。
会社が勝ちました。その判断の根拠の一つがこの社員がしたツイートでした(実際はツイッターへの投稿だけで判断されたわけではありませんが、その他の部分は省略しています)。
具体的には以下の通りです。
・ツイッターへの投稿の内容によれば、(精神病の症状である)妄想が出現していることが認められる
・復職不許可の前後約1ヶ月にツイッターに投稿した内容によれば復職不許可の時点で、不安定なものであった可能性を否定することができない
・(ツイートの表現は)病院の受診時に医師に伝えた幻聴の内容と同じであり、幻聴の影響でツイッターへの投稿をしている可能性を否定することができない
・以上によれば、休職事由が消滅していたとは認められないから、復職不許可の判断は相当であって、違法無効であるとは言えない
いかがでしょうか?
冒頭にもお話しましたがSNSについてはメリットもデメリットもあります。
あるテレビ番組で、某タレントさんが「世界中のみんながSNSの使い方を思考錯誤している状態」と話をしていましたが、私もまさにその通りだと思います。
その過程で問題が出てくるのはある意味当然でもあり、今後はそれが良い方向へ落ち着いていくのだと思いますが(そう願いますが)今の時点では問題が起きないよう個人や会社が対策をとっていくしかないでしょう。
以前のような社員のSNS投稿による炎上は最近は減ってきたような気はします。
ただ、「バイトテロ」と言われた飲食店系の炎上投稿が、少し形を変えてまた炎上しだしているように、社員の炎上投稿がまたいつ復活してもおかしくはありません。
コロナの終焉で活動が活発になり、そのきっかけになる可能性もあります。
それを防ぐために新入社員研修、管理職研修等でSNSについての啓発をすることも今後は重要になってくるでしょう。
例えば、新入社員であれば、学生では無いので当然ながらSNSへの投稿もある程度の規律が求められます。
また、管理職になれば、知らなかったではすまされないSNSに対する法律知識を求められることがあります。
問題が起きてからでは遅すぎます。
それらの研修を行うことで、労務リスクを効率的に減らすことができるのです。
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