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Woman conducting a business interview

会社が「即戦力ではなかった」と判断した社員の降格&減給は認められる?

会社で働く人は、それぞれに役割が与えられているでしょうし、「役職」が付いている人は、一般社員よりも成果が求められているはずです。では、社員が「成果」を上げられなかった際、会社は「降格」や「減給」の判断をしても良いものなのでしょうか?今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』の著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、実際にあった裁判と結果について解説しています。

「新課長として力不足」で降格は認められるのか

「即戦力」という言葉がよく聞かれます。3月に日本中を歓喜させた野球でも、ドラフトのときに「即戦力ルーキー」などと言われることがありますね。

また、人事関連でも中途入社であれば今までの経験やスキルに期待して採用されるわけなので当然ながら「即戦力」が求められますし、役職者の社内異動の場合もおそらく同様でしょう。

ただ、とは言えそれが難しい場合もあります。

それについて裁判があります。

ある介護会社でM&Aで別会社と合併した後に新課長に任命された社員が、課長としての実績が出せなかったとして降格され、給与も大幅に減額されました。課長と言えば、当然ながら結果が求められる立場であるわけですが、この社員は

・営業目標を大幅に下回り、人事評価は最低の「E」であった
・課長会議では出席しても発言することが少なかった
・部下に対して、部下が満足できるような指摘やアドバイスをすることができなかっ

という状態でした。そこで会社はこの社員を異動させ降格・減給を行ったのです。これに納得がいかなかった社員が会社を訴え、裁判になりました。

では、この裁判はどうなったか。

会社が負けました。

その理由は以下の通りです。

・(この社員は)営業に配属されるまでは総務・労務管理系の業務が中心であり、営業業務にあまり慣れていなかった

・部下は営業経験が豊富な社員が多く、満足できるような指摘やアドバイスができなくても無理からぬところがある

・営業目標を大幅に下回ったことについて、そもそもその目標が達成困難であったことは会社も認めており、それにも関わらず、わずか1年の実績で適性を評価するのは酷である

・(この社員に)必要とされるのは、営業の管理職として部下を指導するに当たっての営業の経験であって、営業の現場で実績を上げる能力とは必ずしも一致しない

・給与の減額は約45%にもなり、不利益は極めて大きい

・以上により、降格・減給は無効である

いかがでしょうか?

会社の立場として「即戦力」を求めるのはごく自然なことです。また、中途入社や社内異動をする本人が「即戦力」になろうとする意識を持つことは当然ながら必要でしょう。

ただ、実際に「即戦力」になるかどうかは会社やまわりの社員の対応の仕方も大きく影響します。これを「オンボーディング」という言い方をしますが、新しく組織に加わった人にいかに早く組織に慣れ、戦力になってもらうかは会社の対応次第なのです。

これは私にも経験があります。開業当初は社労士の先輩の事務所に業務のお手伝いにいく機会も非常に多かったのですが、そのときもそうでした。

例えば、コピー機の使い方がわからないとか、備品がどこにあるかとか、そんなちょっとしたことがやりづらさや作業の非効率化につながっていたのです(「そんなことで?」と思う人もいるかも知れませんが、私も体験してみて初めて感じました)。

これが新卒入社の社員であれば知らないことを前提でまわりの社員も接するためある程度は聞きやすい環境はあるでしょう。ただ、中途入社や社内異動の社員はなんでも自分でできて当たり前という意識が自他ともにあるため、ちょっとしたことであればなおさら聞きにくいということがあります。

「即戦力」のために、お互いが協力し合えると良いですね。

 

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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