とどまることを知らないかのごとき勢いで成長を続けてきた中国経済。しかしその足元は、すでに大きくぐらつき始めているのが現状のようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、中国が国内に数兆ドルもの負債を抱えているとするNYタイムズの記事を紹介。さらに当局がその扱いを誤れば、習近平政権への国民の批判が強まる事態に発展するとの見解を記しています。
中国を揺るがす不動産問題
コロナの始まる直前、2019年8月に中国の広州市を訪れる機会がありました。
市内も郊外も、高層マンションが林立しており、SF世界の風景のようでした。
広州市でこれだけの高層マンションができているならば、中国全土でどれぐらいあるのだろう?どれぐらいが実需なのだろうか?と思ったものです。
それぐらい、圧倒された光景でした。
その中国の不動産に対して7月8日のNYタイムズ、オンライン版が記事を出していますのでご紹介しましょう。
中国が巨大な借金の山を抱える理由
海外では融資大国である中国は、国内では地方政府、その金融関連会社、不動産開発業者が抱える何兆ドルもの負債という爆弾を抱えている。
そのほとんどが簿外取引の金融関連会社、不動産開発業者が負っている数兆ドルの債務である。
どれだけの負債があるのだろうか?公式データが乏しいため、正確に知るのは難しい。
JPモルガン・チェースの研究者は先月、家計、企業、政府を含む中国国内の負債全体が、中国の年間経済生産高の282%に達したと算出した。
中国が他の多くの国と違うのは、経済規模に比して債務がいかに早く蓄積されたかということだ。
米国や日本でさえ、債務の急激な増加は少ない。15年前の世界金融危機以降、中国の債務は経済規模に比べて2倍以上に急増しており、その管理が難しくなっている。
中国はなぜこのような借金地獄に陥ったのだろうか?
始まりは不動産で、過剰な建設、価格下落、買い手不足に苦しんでいる。
過去2年間で、海外の投資家から資金を借りていた数十の不動産開発業者が債務不履行に陥り、そのうちの2社が最近も債務不履行に陥った。
デベロッパーは、中国国内の銀行に負債を支払い続けるのに苦労している。
この問題をさらに深刻にしているのが、地方自治体の借金である。
過去10年の間に、多くの市や省が規制の緩い特別融資部門を設立し、多額の借金をした。
役人は、道路、橋、公共公園、その他のインフラ建設だけでなく、他のローンの利息を含む日常経費を賄うためにその資金を使った。
不動産と政府債務の問題は重なっている。
昨年冬、中国の21の銀行が、中国南西部の地方政府の融資部門に対し、返済期限が迫っている融資の返済を20年に延長させることに合意した。
しかし、この取り決めは銀行にとって大きな損失を意味し、中国のほとんどすべての省に同様の問題を抱えた地方金融部門がある。
どのような政府や企業にとっても、生産的かつ効率的に資金が使われるのであれば、借入は経済的に理にかなっている。
しかし、十分なリターンを生まない負債を乱発する借り手は、トラブルに巻き込まれ、貸し手への返済に苦しむことになる。それが中国で起きていることだ。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
解説
成長している時は見えなかった課題、先送りできた課題が、成長がとまったとたんに顕在化することがあります。
中国の一人当たりのGDPは1万ドルを超え、成長率は鈍化しています。その中で不動産融資の問題が顕在化してきたという状況です。
問題はまず中国政府自体がどのぐらいの不良債権があるかを認識できていない事でしょう。
地方の役人が金融機関に口頭で債務保証している場合などいくらもあるでしょう。
そして、この不良債権問題は、影響を受ける国民が多すぎるために、扱いを誤ると直接的に政権への強い批判となりえます。
中国政府、この不良債権問題については強面を演出しつつ、しかし、綱渡り的な運営が続くと思われます――(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』7月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために
メルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 では、在米14年の経験と起業家としての視線、そして大学教授という立場から、世界で起きているさまざまなニュースを多角的な視点で分析。そして各種マスコミによる「印象操作」に惑わされないためのポイントを解説しています。7月中であれば、7月配信分のメルマガ全てが「初月無料」でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。
月額:¥330(税込)/月
発行日:毎週 日曜日(年末年始を除く)
形式:PC・携帯向け/テキスト・HTML形式
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
image by: Naga11 / Shutterstock.com