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焦る習近平。なぜ中国は福一原発処理水の放出を猛批判するのか?

日本からの鮮魚の輸入を実質的に停止にするなど、福島第一原発の処理水放出をことさら問題視する中国。その裏には習近平国家主席の「焦燥」があるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中国国内で国民の不満が高まりつつある状況と、その不満を日本への憎悪に転換したい習近平政権の企てを紹介。さらに日本国民に対しては、中共の謀略に同調しかねない日本の左派メディアへの警戒を呼びかけています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年7月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

中国のお家芸。国民の不満を日本に向けたい習近平が企んでいること

白紙革命2.0!反習近平暴政抗爭恐「原子化」爆發

「自由時報」によれば、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が、7月28日に四川省成都市で開幕するワールド・ユニバーシティ・ゲームズ(WUG)の期間中、習近平国家主席への不満を表明するため、白い紙を使ったフラッシュモブを行うよう中国人に呼びかける「成都白紙革命」がインターネット上で広く流布していると報道したそうです。

「白紙革命」とは、2022年11月ごろに中国全土に広まった抗議活動で、何も書かれていない白い紙を掲げることで、ゼロコロナ政策を批判した運動です。

もともとは、新疆ウイグル自治区ウルムチ市の高層集合住宅火災で犠牲となったウイグル人を、南京メディア学院の学生たちが「ウイグル人迫害の結果だ」として追悼活動したことに端を発したものですが、この運動はやがて習近平の強権的なゼロコロナ政策への抗議行動に変化し、中国20以上の省の大学生による一連の行動へと発展していったのです。

ゼロコロナ「白紙革命」

この白紙革命がきっかけとなり、中国のゼロコロナ政策は突如として解除へと向かったのです。一方、白紙革命に参加した学生や市民は逮捕・拘束され、運動は収束していきました。しかし、現在、この白紙革命を再び呼びかける声が、インターネット上で広まっているというのです。

冒頭の「自由時報」の記事によれば、中国事情に詳しいオブザーバーの話として、この行動は中国国民の北京に対する怒りが長期化したものであり、抗議行動が拡散する可能性が高く、7月の成都でのワールドゲームズ、9月の杭州でのアジアゲームズ、10月の杭州でのパラリンピック、そしてそれ以降のあらゆる機会に見られる可能性があるといいいます。

「成都白紙革命」の呼びかけを最初にリツイートした、ワシントンの「シャイニング・ライト・メディア」の創設者アンナ・ワン氏は、VOAとのインタビューに対し、「この白紙革命の呼びかけは中国国内で発信されたメッセージであり、力強く、内容も的確で質が高く、そこに使われている考え方や言葉は中国の政治状況に精通していることを示している」と語っています。

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中国の主張に呼応するかのような日本の一部メディア

かつて青海省政治協商会議の議員を務めたことがあるアンナ・ワン(王安娜)氏は、このニュースが流れたことで、中国共産党は武装弾圧の準備を整えるだろうし、中国人が街頭に出るリスクも高く、成都で白書運動が好意的に受け入れられるとはあまり期待できないとしながらも、その一方で、それでも勇気を持って立ち向かう人もおり、成都の抗議運動の参加者がたとえ一握りであっても、大きな意義があるだろうと述べています。

台湾のある政府関係者は、習近平の権力は今後も揺るがないだろうが、前例のない3期目の任期延長を正当化できるのは「中国の夢の実現」だけなのにもかかわらず、中国経済は深刻な落ち込みを見せ、若者の失業率は20%を超えており、これが「白紙革命2.0」ともいえる新たな抗議活動の原因となっていると述べています。

最新の数字でも、4~6月期の中国のGDPは前期比+0.8と大幅にブレーキがかかっており、失業率も上昇して雇用状況はさらに悪化しています。

中国経済が“予想外”急減速 GDP前期比+0.8% 失業率も上昇し雇用状況は悪化

私は、中国が日本の福島原発処理水の海洋放出をことさら批判しているのは、中国人民の憎悪を掻き立てて、不満を海外に向ける目的があるのではないかと考えています。そもそも、中国の原発自身がトリチウムを含む水を海洋放出しており、その量も日本が予定する量より多いことはよく知られています。その量は福島が放出しようとしている量の6.5倍にもなるのです。

中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6.5倍…周辺国に説明なしか

自分のところのトリチウム放出には全く触れず、日本の処理水ばかりを問題視するのは、明らかに国内での人民の不満を日本憎悪に変えようとしているからでしょう。かつて天安門事件後に反日教育に走ったのと同じ理由です。

そのような「歴史の鑑」があるにもかかわらず、意図的か無意識かはわかりませんが、あたかも中国の主張に呼応するような主張を繰り広げる日本のメディアがあることも確かです。

たとえば東京新聞はIAEAが処理水の海洋放出の正当性を科学的に論証したことについて、『原発処理水の放出にお墨付き…IAEAは本当に「中立」か 日本は巨額の分担金、電力業界も人員派遣』という記事で、日本はIAEAに金や人を出しているから、中立的ではなく、日本は金の力でIAEAのお墨付きをもらったかのような主張を繰り広げています。

原発処理水の放出にお墨付き…IAEAは本当に「中立」か 日本は巨額の分担金、電力業界も人員派遣

たしかに日本はIAEAに多額の拠出金を出しています。しかし、日本とIAEAの主張に猛反発している中国も、IAEAには多額を拠出しています。しかも、分担金・義務的拠出金では中国は日本より上位の2位です。

外務省 ODA

もしも日本が多額の拠出金を出してIAEAのお墨付きを買ったというなら、日本同様に多額の拠出金を出している中国の意見はなぜ無視されたのかを言わないと、「金で買った」証明にはなりません。そもそも、東京新聞はなぜ中国の拠出金のことを書かなかったのでしょうか。

加えて、拠出金の多寡による影響力を語るなら、国連のほうがよほど問題でしょう。常任理事国という「特権国」があるうえに、近年は中国が多額の拠出金を出して影響力を露骨に使用しています。

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ダブルスタンダードで中国の機関紙のごとき東京新聞

そして、そんな国連のご託宣をありがたがるのが日本のメディアです。今年4月には、国連特別報告者が「入管難民法改正は国際人権基準を満たさず」と指摘したことについて、東京新聞は「これを無視するのか?」などと日本政府を批判しています。

国連特別報告者の指摘をまた無視するの? 「入管難民法改正案は国際人権基準を満たさず」に日本政府が反発

ただし、アントニオ・グテーレス国連事務総長も述べているように、国連特別報告者というのは、「国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は国連の総意を反映するものではない」のです。それどころか、これまでも特定の人権団体とのつながりが噂されるなど、その主張が恣意的に政治利用されているという批判も少なくありません。

国連の特別報告者と国連の総意に関する質問主意書

国連自体も、たとえば人権理事会は2019年の天安門事件30周年時に「特にコメントはない」と述べたように、中国に忖度して最大級の人権問題に対して沈黙してきたという現実があります。問題にするならこちらのほうでしょう。アメリカもトランプ大統領時代の2018年に、「人権の名に値しない組織だ」などと批判し、同組織から離脱しています。

IAEAが日本の拠出金によってご用組織になったというなら、東京新聞は二度と国連や国連特別報告者の勧告を取り上げるべきではありません。

IAEAは日本の金に転んで信用できないと批判する一方で(しかも中国も多額を拠出していることは言わず)、中国が金銭的にも常任理事国としても影響力を行使している国連や国連特別報告者から出た日本批判を嬉々として取り上げるというなら、それはダブルスタンダードにほかならず、まるで中国の機関紙です。

いずれにせよ、国内に不穏な空気が流れるほど、中国は人民の不満を外国に向けさせようとしてきます。とりわけ来年は日清戦争開戦から130年、日露戦争開戦から120年です。原発の処理水をはじめ、さまざまな難癖を日本に突きつけてくる可能性があり、日本の左派メディがこれに同調する可能性もあります。

それはともかく、日本においても中国との情報戦、歴史戦がますます過激になってくることは間違いないでしょう。

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【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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