かつては働く場を求める外国人労働者たちが押し寄せていたと言っても過言ではない日本。しかし今や、我が国は彼らから避けられる存在となってしまったようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、日本が外国人に選ばれなくなった事実を如実に能わすデータを紹介。さらにそのような状況を招いた原因について考察しています。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
隣人に冷たい国ニッポン
「外国人が選ばない国、ニッポン!」の厳しい状況をあからさまに示す“数字”が明らかになりました。
NHKによると、日本で看護師として働くことを目指す人たちを対象にした面接会がフィリピンで4年ぶりに開かれ、過去最少の17人しか応募者がいなかったそうです。
フィリピンでは、フィリピン国内の賃金の低さなどを理由に、看護師の資格を持つ人のおよそ3分の1が国外で働いていると言われています。数年前は日本は大人気で、09年以降、660人あまりのフィリピン人看護師がいました。
しかし、いわずもがなの「低賃金国ニッポン」です。日本語のハードルも高い。選ばれない国になった理由を一言でいえば、「日本で働くメリットがない」ということなのでしょう。
今年4月に同様の事態は、タイでも起きていました。多くの日本企業がタイに進出した1980年代には、「50人の募集」に2,500人の若者が殺到するほど人気だった日本企業に、人が集まらずに苦労している日本人スタッフの様子が報じられていたのです。
また、厚労省によると、21年10月末時点の外国人労働者数は172.7万人で過去最多を記録したものの、前年比では0.2%増と2年連続で大きく減速。「技能実習」は初めての前年割れを記録し、約8割を留学生が占める「資格外活動」も2年連続で前年を下回っています。
「資格外活動」として働く留学生の多くは、卒業後にそのまま日本で就職するケースが多いので、留学生が減少すれば将来の労働者も減少しかねません。
日本では低賃金で外国人を雇い、日本人がやりたがらない仕事を、外国人におしつけてきた。その末路が、外国人労働者からの「ノー」という一言です。自業自得としか言いようがないのですが、日本人は外国人旅行客には優しいのに、ともに生活する隣人になった途端、「異物扱いする」という冷たさも持ち合わせています。
この記事の著者・河合薫さんのメルマガ
日本語のハードルの高さもその一つです。
冒頭で取り上げた外国看護師は、経済連携協定(EPA)に基づくものですが、09年の外国人看護師候補者の看護師国家試験第1回の合格者数は、なんとゼロ。82名ものインドネシア人の看護師たちが挑戦して、誰一人受からなかった。その翌年もわずか3人で、2012年に、合格率はやっと1割を超え11.3%(合格者47名)となりました。
その後はさまざまな緩和策が講じられましたが、それでも求める日本語力は他国に比べれば圧倒的に難しいのです。
そもそもなぜ、読み書きまで求めるのか?日本と同じように少子高齢化で、介護や看護の人材が不足しているドイツでは、同じ国家試験でも外国人には口頭で試験を行っているのに。なぜ、ペーパーにこだわるのでしょうか。ただでさえ日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字を使う世界でも有数の難しい言語なのに…、外国人に厳しすぎます。
日本で働く外国人の子供たちも、日本語が話せず苦労するケースも度々報じられてますよね。
もし、本当に、外国人に日本に来て働いて欲しいなら、日本人より高い賃金を払い、外国人を受け入れるコミュニティを、地域などと連携して作ることは必要不可欠です。
今の日本に、そこまでやる気があるのでしょうか?…ない。そう思ってしまうのは私だけでしょうか?
みなさまのご意見、お聞かせください。
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