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問題は不発弾。それでも非難できぬウクライナの「クラスター弾」使用

ウクライナに対し、アメリカから供与されたクラスター弾を使用すべきではないとの声が一部で上がっています。このような非難を疑問視するのは、ジャーナリストの内田誠さん。内田さんはメルマガ『uttiiジャーナル』で今回、自身が強くそう思う理由を記すとともに、ウクライナ批判を展開する人々が認識すべき「事実」を綴っています。

アメリカがウクライナに「クラスター弾」を供与、使われ始めている現状について:「デモくらジオ」(7月28日)から

クラスター弾の話、ありましたね。アメリカがウクライナに対してクラスター弾という種類の砲弾を供与して、それがすでに使われ始めていると。これは、アメリカや中国などは、ウクライナももちろんロシアも加盟していません、加入していないですけれど「クラスター禁止条約」というのがあって、製造・保有・使用を全て禁止すると。

もちろん、何がクラスターなのかということについて、いろんな定義がありますので、その何でしょう…一般にクラスターなんて言われているものだけを考えればいいということではないのかもしれないのですが、それ、ちょっと置いとくとしまして。そういう、まあ2016年でしたかね、ちょうど7年前ぐらいに発効した条約です。

で、どういうことかというと、クラスター弾というのは、まあ親子の爆弾で、大きな砲弾なんですけれども、その中に小さな子爆弾が数百個入っていて、砲弾は途中で分解、破裂して、その小さな砲弾をばらまくというものですね。榴弾、今度届いたアメリカが供与したものは、榴弾砲という砲弾のクラスター弾。よく飛行機から落とす爆弾で、そういう親子の構造になっているものはもちろん幾種類もあるわけですけれども。この問題はどこにあるかというと、「不発弾の多さ」だということなんですね。

この不発弾に関してはいろいろあって、だいぶ以前ですけれども、日本人の新聞記者がイラク取材の記念に持ち帰ろうとした子爆弾、これがヨルダンの空港で爆発して空港職員が一人亡くなるっていう大変な事故が起こったことがありました。その人はいい大人だったわけですが、例えば子供がおもちゃと勘違いして触っていて爆発するとか、まあ30%から40%ぐらいの子爆弾が実は爆発しないで、その辺に転がってしまうということがあり得るといいます。アメリカ軍の場合にはその不発弾率はもっとグッと少なくできるというふうに言っているんですけれども、それは本当かどうか、よくわからない。

これあの、なんていうか、軍事関係の人に言わせると、普通、榴弾砲というのは「点」で勝負するわけですね。相手の兵隊がたくさんいるところに榴弾砲を一発ぶち込むと、そのすぐ近くにいる兵隊の体に榴弾砲の破片が突き刺さって、命を奪うと。あるいは戦闘力を奪うということなわけですけれども、これ、まあ、ボカスカ撃っているわけですけど、なんて言うんですか被害のエリアっていうのはそう広いわけではない。

ところが、クラスター爆弾というのは、相手が散開してる時でも、その上空で子爆弾をばらまいてやれば、かなり広い範囲の中に、子爆弾から飛び出した破片やあるいは鉄球ということもあり得ますけれど、そういうものが四方八方に飛びまくるわけですね。いっぺんに。これで軍事用語で言うところの、「面の制圧」を実現するということのようです。ですので、クラスターの基本的な構造が持つ「非人道性」っていうことではなく、むしろ、不発弾ということが問題になるんだと思いますけれども、それをまあ、ウクライナ軍が使うことに関してイギリスなんか、かなり批判したようですけれども。

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…ロシア軍という侵略者に関していろいろ言っておいて、ウクライナ軍だって汚い手を使うじゃないかっていう風なね、劣化ウラン弾の問題と合わせて、ウクライナ批判に使われたりしているわけですけれども、で、それに関して私は、それは違うんじゃないかというふうに、この前ちょっと申し上げました。

実はクラスター弾っていう言葉を聞くと、私にはちょっと思い出すことがあって、これね、ネット上でもこれに関して説明はないんだけど、ベトナム戦争の頃に米軍が使った、こういう爆弾があるんですよ。まあ当時は親子爆弾とか収束爆弾とかいう言い方をしたんですが、あるいは形状を捉えて、ボール爆弾っていう風に言われたり。一つの爆弾から子爆弾がたくさん飛び出してくるということなんですけど。

もう一つは「パイナップル爆弾」というのがあったんですよ。パイナップルのようにヒレみたいなのがついていて、小さなパイナップルみたいのがたくさん出てくるんですね。これ、今、パイナップル爆弾って言うと、違うもののことを指す言葉になっていて、歩兵が使う手榴弾のことになっちゃっていて。もちろんそれはそれでパイナップルみたいな格好していますから、手榴弾をそう呼ぶことはその通りだと思うんですが。

それらに関しては、米軍がベトナムで使ったことに対して、かなり強く批判されたことでした。考えてみると米軍は最大時52万でしたかね、大軍をベトナムに派遣して汚い戦争をやったわけですね。まさに侵略者アメリカだったわけですけれど、その時にまあ一つは例えばナパーム弾のようなものの使用であるとかあるいはこの収束爆弾、これはもう例えば、民族解放戦線(米国や日本ではベトナムの共産主義者という意味で“ベトコン”と呼んでいた)の兵士たちが散開しているところにこれを落として、いわば一網打診するとか。

とにかく、米兵は5万人死にましたけれど、ベトナム人の死者は200万人と言われていますので、まあ殺しまくったということを忘れることはできない。ソンミ村ミライ地区の大虐殺とかですね、数百人の村民、基本的に女性や子供を撃ち殺すということがありました。そういう、まさに侵略者としての米軍が、ベトナムで使用した爆弾というのが、クラスター爆弾の意味だったと思っているんです。

ですから今回、ウクライナ軍がクラスター弾をまあどのように使うかということについては、どこに使ったかについての記録を残すとかから、もちろんウクライナの国内でしか使わないこと、さらに住民が残っているような都市部では使わないという、いろんな条件を付け、条件をクリアして使用するということで、実際に使っているようなんです。これ全く意味が違うわけですね。

もちろんクラスター弾が素晴らしい兵器だなんていうつもりもないですけれども、しかしこれだけ激しい侵略を受けていて、総反抗がそううまくいってない中、ロシア軍の陣地であるとか、あるいは塹壕、こういったものを除去して、占領地を解放するという戦いに関して、それに使われる爆弾だということと、それからまあ、現に侵略が始まって、かなり早い時期からロシア軍がクラスター弾を使っていると言われています。

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ロシア軍のクラスター弾は不発弾の率が非常に高いと言われていますけれども、侵略者の側は使ってるわけですね。条約で禁止されるようなもの(米、露、中、ウクライナなど条約に署名していない国も多い)をウクライナ軍が使うべきでないという風な言い方で非難するのは、全く当たらないというふうに私は思います。先ほどいいましたように、アメリカがこれを供与した理由というのは、いろんな条件下で使うだろうということとともに、これ、よく考えてみると、F16の代わりなんですよね。

攻めていく側というのは被害が一般に大きいと言われますが、特に航空支援がない場合には、攻めていくのが非常に難しくなるというのが現代の戦争の常識と言われています。F16は戦闘機ですけれども戦闘爆撃機という位置付けができる飛行機ですから、それが航空優勢をとって、そしてロシア軍陣地に対して空爆を加えた上で、ウクライナの陸軍が攻め込んでいくということを多分イメージしていた…そのF16が簡単には供与されないものなので、まあ、パイロットの訓練とか、やってるようですが、それに代わるものとしてクラスター弾というのは、ウクライナ軍が自国の被占領地を解放していく上で、非常に重要な兵器という風に、まあおそらくアメリカ軍は考えたんじゃないかと。アメリカもウクライナもそう考えたということではないかと思います。

この手の話をやっていくときに、人道的な兵器ってあるんだろうかっていつも考えるんです。自動小銃は人道的でしょうか。クラスター弾というのは…。そのうんと果ての方に核兵器があるっていう見方もまあ可能ですよね。つまりその辺にいる人みんな巻き添えになるわけですよ、もし市民がいるところで使えばね。不特定多数の人たちに被害が及ぶような兵器、その極致は核兵器ですけれど、あるいは超大型爆弾なんていうのも、そうなるかもしれません。

そういう意味で今ロシア軍は何を、どういうことで使っているかというと、住宅地などに対するクラスター弾がその一つ、それからサーモバリック爆弾というもの、これは燃料気化爆弾とも言われますけど、中で衝撃波がパーッと続くような爆発の映像、もしご覧になった方がいれば覚えておられると思うんですけれど、その一定のエリアの中にいる人たちが、まあ人に限らずですけれども、生き物が呼吸困難になってしまうような恐ろしい爆弾ですね。これまさに不特定多数、そこら中にいる人たちを巻き添えするための爆弾ですよ。

それからもう一つあるのはテルミット焼夷弾。最初白リン弾ではないかと言われたもので、白リン弾も同じようなものですけれど、2,000度ぐらいの高温でマグネシウムが燃えながら落ちてくる焼夷弾ですね。あたり一面を焼き払うための、まさに不特定多数を攻撃する、これぞ「非人道兵器」、こういうものをロシアという侵略者は、ある意味堂々と使っているわけです。その辺のことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。

(『uttiiジャーナル』2023年7月30日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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