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ビッグモーターの経営陣は熟読せよ。経営改革で躓くポイントを解説

常に動いていく時代。変化に合わせ、会社経営の戦略も考えていかなければなりません。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、経営改革について話をしています。今話題のビッグモーターの経営陣は必読かも?

経営改革は難しい

世の中の流れが変わっていけば、経営戦略も変わっていきます。経営改善や経営改革が必要にもなってくるでしょう。

しかし、経営改革に踏み込んだとしても、業績が良くなるとは限りません。

今回は、経営改革の話です。

1.経営計画書を作る

あなたのお店も、「経営改善」や「経営改革」に力を入れていることでしょう。その改善や改革は、うまく進んでいますか。うまく行っているとしたら、大したものです。

多くの会社は、経営改善や経営改革をかかげて、経営計画書を作ったり、アクションプランを作ったりしています。ところが、なかなか計画通りに行きません。なぜでしょう。

私の知っている会社も、経営改革を進めました。しかし、結論から言うと、その改革は失敗に終わってしまったのです。今回は、そのてん末を披露します。失敗の原因が分かることでしょう。

創業以来40年を経過したその会社は、社内がガタガタし始めました。二代目の社長になってから、売上が下がっていきます。社員同士もギスギスした雰囲気です。銀行からの借入も増えて、財務状況が良くありません。どうも、先行きの暗い状態になってしまいました。

そこで会社は、経営コンサルタントB氏と契約することになります。Bコンサルタントは、この会社の業績が下がっている原因をすぐに突き止めました。さすがですね。主な原因は3つです。

・売上ばかりを重視して、利益に対する意識がない
・年間の数値計画は立てられているが、計画達成のための実行プランがない
・営業マンは優秀だが、それぞれが個人商店のようで、統一された動きがとれていない

そこで、Bコンサルタントは、各部門の幹部を巻き込んで、5か年経営計画を作ることにしました。その計画書作りの作業は、深夜に及ぶことも多く、合宿をして討議を重ねます。

1年後、苦労が実って、計画書が完成しました。その内容は、この会社にとっては、大改革です。組織も大幅に変更となり、情報システムは刷新され、営業や物流の進め方も大きく変わりました。計画策定にあたったメンバーは、大きな期待をしたことでしょう。

2.経営計画が始まる

この5か年経営計画書がまとまったところで、全社員を集めて発表会を開きます。

最初に社長からの発表です。ところが、ここでちょっとした事件が起こりました。社長の話は、経営計画書の中身ではありません。経営者としての思いや進めたいことを、とうとうと話し始めます。その内容は、計画書のどこにも書いてありません。結局、計画の説明は、管理本部が行うことに。

大問題です。社長の思いは、経営計画とは違っていました。そして、今回の経営計画に乗り気ではありませんでした。それはそうです。5か年計画は、これまでの社長の経営方針を変更することにつながりますから。

計画書を作る過程で、社長は何度も説明を受けていました。しかし、聞くふりをしていただけなのかもしれません。どうせ計画はうまく行かないと、高みの見物をしていたようでもあります。

それでも、現場を巻き込んで作った経営計画です。社長の意向とは別に、計画は進められていきます。毎月の幹部会議には、Bコンサルタントも参加して、その都度アドバイスをもらうことにしました。

彼がリードをして作った計画書ですので、実行すべきポイントはよく分かっています。ところが、会議の雰囲気が良くありません。何人かの幹部が、経営計画に抵抗を示します。あれほど話し合って決めた計画なのに、いざ実行の段階になると、非協力的な態度です。

それもそのはず。非協力的な幹部は、計画の組織変更によって、不本意な部署に配置転換されてしまった幹部です。しかも、会社の主力となる部署ではありません。

それでも、新しく主力部署の幹部となったメンバーたちが中心となって、計画が進められていきます。この先、経営計画はどうなっていくのでしょう。何とも危うい気がしますね。

3.失敗の原因

確かに、今回作った経営計画書は、利益を考えることを強調したものになりました。計画達成のために各部署が「いつ、何をやるか」という具体策も盛り込まれています。また、今まで進めてきた事業多角化をやめ、本業に徹するという方向性も明確にしました。

このことで、当初にあげられた3つの問題は解決されて行くはずです。経営改革にも匹敵する経営計画と言っていいでしょう。

ところが、経営計画の実行は、そんなに簡単なものではありません。往々にして、改革には痛みが伴います。特に人事は難しいです。人の心という問題に突き当たりますから。今回の経営計画の実行にも、その問題がつきまといました。

それに、組織の形を変えれば、会社が良くなっていくというわけではありません。その部署に所属する人たちが、経営計画における組織の意味を理解しなければ、うまく機能しません。

残念ながら、今回の経営計画を作る過程では、その点が十分に配慮されていませんでした。現場に入ってドロドロになりながら経営計画を作っていただいたBコンサルタントには申し訳ない結果が待っていました。結局、この計画は達成されずに終わってしまったのです。

そこで、私なりに失敗となった原因を考えてみます。

・経営者がその気にならなければ、改革は上手くいかない
・計画には、会社の目指す姿が明確になっていない
・経営者の目指す方向が、計画書と食い違っている
・数値計画は明確になっているものの、4P戦略のような具体的戦略が組みこまれていない
・必ず改革の反対勢力は生まれるので、その対策が考えられていない

いかがでしょうか。経営計画を実行するのは、難しいことです。経営改革ともなれば、なおさらです。

さて、あなたのお店の経営改革はどうでしょうか。今回の事例から思い当たることはありませんか。

■今日のツボ■

・経営者がその気にならない限り、経営改革はできない
・経営改革には、必ず抵抗勢力が現れる
・経営改革では「人の心」という問題がついて回る

image by:Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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