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いじめ加害者との「謝罪会」だったはずが…信じがたい“二次被害”の酷さ

夏休み後半、もうすぐ学校が始まりますが、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』を発行する、同ネット代表の井澤一明さんは「9月1日前後に子供たちの自殺が増える傾向は残っている」としていじめによる自殺未遂事件、その後に起きた二次被害について語っています。

学校は、いじめの二次被害を起こさないスキルを持とう

8月も後半に入りました。夏休みも終わりになってしまいますが、今年の夏はコロナによる制限が解除された地域も多く、本当に久しぶりに夏休みらしい夏休みを味わえたご家族も多かったことでしょう。夏祭りや旅行に出かけた子供たちも多かったことだと思います。ただ、9月1日前後に子供たちの自殺が増える傾向は残っているように思います。皆様の周りの子供たちに気を配っていただけるとうれしく思います。

さて、6月23日に2019年に、埼玉県川口市の当時15歳の男子がいじめを受けたと訴え、「教育委員会は、大ウソつき」などと書き残し、自殺した問題で、調査委員会の報告書が公表されました。

NHK NEWS WEB によりますと、調査委員会は、医師や弁護士で構成され、報告書では、自殺の主な原因を「いじめと、いじめ申告後の二次被害による非常に大きな精神的苦痛が軽減せずに、数年間にわたって継続したこと」と認定しました。加えて、男子生徒がいじめを受けたと繰り返し訴えてもいじめの存在を認めないなど、学校側が不適切な対応をとったことで男子生徒や母親がその後、非難されるなど「二次被害」につながったとしています。また、その後の学校や教育委員会の調査についても「反応は非常に鈍く、重大事態発生の認識がない」としています。

本人が遺したノートや手紙には、中学1年の2016年の5月、部活動の先輩やクラスの同級生から悪口を言われたり仲間はずれにされたりしたと学校に訴え、その4か月後には、「先生に話をするとすぐにあいてに言う。また見えないところでいじめられる。だから先生に話するのが怖い」と書き残していました。「先生たちは、しんけんに話を聞いてくれなかった」とつづっていました。
この記述の4日後、自殺未遂をしてしまいます。

その後も「学校は、いじめがないって言ってる」、「先生たちをしんじられない。やっぱりぼくが消えたほうがいいとずっと考えている」などと繰り返し、学校側の対応が変わらないと書かれていました。あわせて3回の自殺未遂を図ったあと、教育委員会は、ようやく調査委員会を設置しました。最初にいじめを訴えてからおよそ1年半後のことです。そして2019年9月、「教育委員会は大ウソつき。いじめた人を守ってウソばかりつかせる」とノートに書き残し、自殺してしまいました。

報告書について、被害者の母親はNHKの取材に対し、「時間はかかったが、中立公平に調査をしてもらい、ありがたく受け止めています。息子には本当なら生きて読んでほしかったですが、この報告書でようやくいじめの一次被害と二次被害を認めてもらい、仏前に『ここまで頑張ったよ』と報告できました」と話していました。

また、Yahooに取り上げられたテレビ朝日のニュースでは詳しく二次被害の状況を報道しています。

このニュースを読みますと、二次被害の構造は二段階になっていたようです。

一段階目は、学校の教師がいじめと認定しなかったことによるものです。報道によると、本人はいじめの被害を主にノートに記して「学校に行くのがこわい。このきもちは、だれにも分からない。ぼくの生きている意味はあるのかな?」「くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい」などと教師らに繰り返し訴えたと言います。本人のノートを受け取った教師らは、本人が軽い障がいを持っていることを理由に、「(本人が)そんなものを書けるわけないだろう」とか
「親が書いたんだろう」と被害者の苦しさを学校側は受け止めなかったとあります。残したノートは10冊以上にも上ったにもかかわらずです。

二段階目の二次被害は、学校が設定した「謝罪会」で起きてしまいました。中学3年の6月、加害者側の父親と祖母、被害者と母親が学校に集まりました。その時、本人は、前年の始業式の日、飛び降り自殺を図り、車いすでの生活が続いていました。その学校の「謝罪会」では、加害者側は、その自殺未遂を糾弾したのです。

下記にテレ朝の記事を引用します。

その時の音声が残されていた。

加害者祖母:「何を希望してるのよ」
被害者:「謝ってほしくて」
加害者祖母:「ふざけるんじゃないよ。あんた」
加害者父親:「はっきり言おうか。その足になったのは君が飛び降りたからだ」
加害者祖母:「それを人のせいにするんじゃないよ」

被害者は約1時間にわたり、加害者側に責められた。
母親によれば、そこには担任、教頭、別の教師の3人がいたが、
誰一人として制止しようとしなかったという。
耐えられなくなった本人は大声を上げた。そして、先生に連れられ、教室を後にした。

謝罪会以降、その時の光景がフラッシュバックするようになり、夜も眠れなくなった。

夜中に突然、家を飛び出そうとすることも多く、母親は被害者と自分の足をひもで結んで寝た。

二次被害がどのように起きたのかが明らかになった事件です。そもそもの問題は、学校側のいじめ対処のスキル不足です。そこには、生徒が苦しんでいるということを見て見ぬふりをした教師たちがいたのです。人間としてあまりにも冷たい対応です。さらに、「謝罪会」という名のもとに相手の糾弾を許してしまうというミスを重ねています。

「謝罪会」を開くのであれば、純粋に加害者が被害者に謝罪するだけの場になるように事前準備が必要です。事前準備とは、加害者および、加害者家族に対して、いじめの事実を伝え、何が間違っているのかを教え、導き、反省を促し、謝罪の必要性を加害者側に納得させる必要があるのです。そのようなことをせずにいきなり「謝罪会」を開けば「糾弾大会」になるのは当然だと言えます。

また、糾弾の場と化してしまったら、身を挺して、被害者を守るとともに、糾弾している者を諭してその場を収めること、それがその現場にいあわせた教師の責務です。現場に3人の教師がいて誰一人止めようとしなかったとは、ありえませんし、あまりにも情けない教師です。

いじめの対処の鍵は「早期発見・早期解決」ですが、キーマンは「教師」です。教育委員会等は、人格的にも立派で、いじめ解決スキルを持った教師を育成していただきたいものです。

冒頭にも述べましたが、9月1日をはさんでの期間、自殺する生徒が増える可能性があります。保護者はもちろん、教師の皆様には、いじめの二次被害を起こさないように学校内の連携を図っていただきたいと存じます。

保護者の皆様もなにか不安を感じましたら、ご遠慮なくご相談いただけると幸いです。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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