新しく生まれ変わった渋谷の宮下公園。その中の「MIYASHITA PARK」という商業施設の出店した新店舗は今までとは違う形態なのだとか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、浸透しはじめているOMOについて紹介しています。
なぜ、MIYASHITA PARKの新店舗には、“名前がない”のか?~AI時代のOMOは顧客視点で
今号では、ここのところ浸透してきた、OMOについて深掘りをしていきます。
OMOとは
OMOとは、Online Merges Offlineの略語で、オンライン、すなわちネットと、オフライン、すなわちリアルを、融合させて、相乗効果を出す、ビジネスモデルを指します。
具体的には、オンラインのデジタル技術やデータを、店舗やDMなど、リアルなオフラインの場面に取り入れ、両方のメリットを組み合わせて、顧客とのコミュニケーションに生かす、という比較的新しいビジネススタイルです。
MIYASHITA PARK内の注目すべき店舗「THE [ ] STORE」の事例
三井不動産は、EC基幹システム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOと組んで、東京渋谷のMIYASHITA PARK内の商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」に、「THE [ ] STORE(ザ・ストア)」をオープンしました。
MIYASHITA PARKはもともと、渋谷のランドマークとして注目されていて、次々に新しい打ち手を打ってくる“場”です。
その中に位置する「THE [ ] STORE」は、とても興味深い取り組みをしています。
7月11日のITmediaビジネスの記事によると、
店舗名の「THE [ ] STORE」の[ ] 内は、出店するECブランド名を入れる想定だ。ECブランド事業者は週単位でリアル店舗への出店が可能となり、接客面では「THE [ ] STORE」常駐スタッフが対応するため、人員確保が不要となる。
とあり、オンラインとオフラインの境界を、あえて“曖昧に”することで、逆に革新的なイメージを醸成しています。
MIYASHITA PARKのサイトによると、この「THE [ ] STORE」のコンセプトは、行くたび新しいブランドに出会えるショップとのこと。
さらに、以下のように説明がしてあります。
“行くたび新しいブランドに出会える”がコンセプトの次世代型ショップです。数週間に1度ブランドが入れ替わり、行くだけでワクワクするような世界観を楽しめます。普段リアル店舗で出会うことができない人気ECブランドのアイテムを展開。きっとあなた好みのブランドや商品に出会えます。
この店名の中にある、[ ]の部分は、顧客に向けて「ご自身の好きなXXを入れてください」というメッセージなのでしょう。
その意味では、とても斬新な、まさに新しいショッピング体験の形を、生もうとしているように見えます。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
これまでのOMOの事例
OMOを自社に取り入れて活用してきた企業は、これまでにも多くあります。
UNIQLOの一部店舗では、顧客がアプリを使用して、店舗内の商品在庫を確認でき、その場でも買えるし、もちろんオンラインで注文もでき、その後、店舗で受け取ることもできます。
私もよく使いますが、Starbucksでは、アプリで注文・支払いを済ませれば、待たずに店舗で受け取れる「Mobile Order & Pay」サービスがあります。
IKEAのIKEA Placeというアプリでは、AR技術を使い、自宅にいながらIKEAのインテリアを、自宅に配置したらどうなるかを、シミュレートすることができます。
これらが、OMOの事例ですよね。
今回の「THE [ ] STORE」は、さらにOMOを発展させ、顧客に問いを投げかけている点が、面白いと言えます。
顧客にしてみれば、自分の趣味嗜好にマッチした、ブランドが置いてあるかもしれないし、新しいブランドとの予期せぬ出会いがあるかもしれないという楽しさが期待できます。
多くのデベロッパーは、集客力のあるユニクロのような、ナショナルブランドや、人気の飲食店をショッピングモール内に入れ、集客をはかります。
今回のこの「THE [ ] STORE」は、「何が入るかわからない楽しさ」を持つ店を、OMOの仕組み込みで提供するという、今までとは逆のアプローチの店舗と言えます。
その意味では、より顧客に対して、新しい価値提供を狙う取り組みに見えます。
まとめ
OMOは、ネットが浸透し進化し続ける今、ビジネスシーンで必須となる考え方です。
一方で、IT、DX、新しい手法を取り入れる前に、まず必要なのは、顧客の立場と課題を理解し、どのように顧客の問題を解決するか、という、戦略をまず立てるが重要です。
その意味では、今こそ顧客課題を明確にして、顧客の本音を理解した上で、自社のビジネスモデルにOMOをどう取り入れるか、今一度考える好機といえます。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
image by: simpletun / Shutterstock.com