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A gavel and a name plate with the engraving Death Penalty

なぜ日本の死刑執行の方法は、いまだに「絞首刑」なのか?

前回の記事で韓国の死刑執行について紹介した無料メルマガ『キムチパワー』。今回は、韓国在住歴30年を超えて教育関係の仕事に従事する日本人著者が、 各国の死刑制度と韓国の犯人への人権擁護についても語っています。

ジンケン擁護もいいけれど

前号#795号で韓東勳(ハン・ドンフン)法務大臣が死刑執行施設を点検せよと発言した内容をお届けした。

【関連】なぜ、韓国ではこんなにも死刑執行がされないままなのか?

金泳三(キム・ヨンサム)政府時代の1997年12月、死刑囚23人に対して死刑執行をしたのが最後で、それ以降25年以上ずっと死刑執行は1件もなかった。韓国国内でこのところ出刃包丁を振り回して他人を殺すなど凶悪犯罪が急増しており、さらに模倣犯が続出するなど死刑執行を要望する声が次第に高くなってきている。今回は朝鮮日報をベースに日本、米国などの死刑制度などについてみてみる。

人権団体「アムネスティ」によると、昨年、世界20か国で1,800件以上の死刑が執行された。人権を重視する自由民主主義国家の中では、米国と日本が死刑執行をしている。米国は50州のうち27州が死刑制度を法律に明記している。今年に入ってミズーリ(4人)、オクラホマ(1人)、テキサス(5人)、アラバマ(1人)、フロリダ(5人)が死刑を執行した。最近、日本の年間死刑執行件数は一桁と少ない方だが、ほぼ毎年刑執行が行われている。

死刑制度を維持する米国の州は「凶悪犯罪を社会が容認しないという事実を死刑執行で示さなければならない」という論理を展開している。潜在的殺人者に死の恐れを植え付け、犯罪を抑制するということだ。代表的な死刑賛成論者である米社会学者アーネスト・ヴァンデンハーグ(1914~2002)は生前、「刑法は殺人者の生命より潜在的被害者の生命を先に保護しなければならない。死刑は収監だけでは犯罪を抑制できない一部の予備殺人犯を防ぐことができる」という論理を展開した。

さらに、反社会的凶悪犯罪者に対する国家レベルの正義具現手段として死刑が必要だという主張もある。国家が殺人犯に最高レベルの処罰を下すことで「生命保護」という共同体の価値を守ることができるという趣旨だ。「殺人犯が1日3食の食事ときれいなベッド、家族面会と果てしない控訴を通じて刑務所に安らかに横たわってはならない。正義の実現には(死刑という)報復が必ず必要だ」(ロバート・メイシー元オクラホマ地方検事)という主張などがこの論理を裏付ける。

日本は2021年には3人、昨年も1人に対する死刑執行を行った。08年東京・秋葉原無差別殺傷事件の犯人、加藤智大に対する刑を昨年7月に執行したのが最近だ。米国は人道的処刑のために薬物注入や電気椅子などで死刑を執行する場合が多いが、日本の処罰は絞首刑で行われる。死亡するまでの時間が長く残酷だという議論も起きているが、「死刑囚は多少の精神的・肉体的苦痛に耐えなければならない」(2011年大阪地方裁判所)というのが日本政府の立場だ。

日本国民の相当数は、犠牲になった被害者の恨みを晴らさなければならないという理由で死刑制度を支持している。いわゆる「伸冤の成立(無念を晴らす)」である。2019年11月に日本政府が施行した世論調査で81%が「死刑が必要だ」と答えたが、回答者の56%が「被害者と遺族の感情を考慮しなければならないため」と理由を挙げた。

死刑反対論者たちは制度の盲点として「無念な死の危険」を挙げている。特に日本では殺人罪で1951年死刑が確定したが、1983年再審請求で無罪判決を受けた「免田栄事件」など騒々しい誤審判決が時々浮上し論難になった。

このため、日本の死刑執行は誰が見ても明白な凶悪犯罪を犯した人々を対象に主に行われている。東京地下鉄に毒ガスを散布して6,300人余りの死傷者を出した「オウム真理教」教祖麻原彰晃および共犯12人(2018年死刑)、01年大阪小学校に侵入し刃物で子供8人を殺害した宅間守(2004年死刑)などが代表的だ。麻原の死刑を執行した後、日本の上川洋子法務相(当時)は「彼らは多くの人の尊厳な生命を奪った。慎重な検討の上、執行を命じた」と明らかにした。

日本の死刑決定基準は具体的な方だ。1968年、米軍宿舎で密かに盗んだ拳銃で4人を射殺した連続殺人犯「永山則夫事件」を契機に、最高裁がいわゆる「永山基準」を定めている。犯罪動機、殺人方法、年齢など9つの項目を考慮するが、結果の深刻性、特に死亡した犠牲者の数が最も重要視される。4人以上を殺した場合、無条件死刑とする。

韓国では人権弁護士だのなんだのと、暇さえあれば「ジンケン、ジンケン」と叫んでいる。はじめにも書いたように死刑判決はあるものの執行はこのところずっとなされていない。犯人のジンケンのせいでだ。被害者のジンケンは、じゃどうなの、という声がこのところやっと盛り上がってきている。せめて日本くらいにはなってほしいところだ。あまりにも凶悪な犯罪が急増している。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年8月31日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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