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台湾侵攻の布石か?中国が「ハマスのイスラエル攻撃」を非難しない理由

ハマスによるイスラエルへの大規模な攻撃を受け、「盟友」を守るため再び中東への戦力再配置を余儀なくされたアメリカ。この「軍事バランスの変化」は、日本を含む東アジアに大きな影響を与える可能性が高いようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中東危機の「漁夫の利」を狙いかねない中国の動きを解説。併せて習近平政権がハマのイスラエル攻撃を非難しない理由を考察しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年10月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

中東情勢の緊迫化で漁夫の利を得ようとする中国。いま日本はアジアの安全保障・最重要国となった

英国情報部:中国による機密フィッシング、2万人の英国人に届く

英国の情報機関MI5のトップ、ケン・マッカラム氏は、中国政府の工作員が職場向けソーシャル・ネットワーク・プラットフォームであるリンクトインを通じてテクノロジーやその他の分野の機密へのアクセスを試みており、その結果、推定2万人の英国人リンクトイン・ユーザーが中国側から接触を受けていると述べました。

中国の産業スパイの規模は大きく、特に人工知能(AI)、量子コンピューティング、合成生物学など、中国が優位に立とうとしている分野において、約1万社の英国企業がリスクにさらされているとしています。

マッカラム氏は、9月16日から17日にかけてカリフォルニア州で開催された、アメリカ連邦捜査局(FBI)主催の情報機関のトップによるファイブ・アイズ・サミットに出席、メディアに発言しました。

「ファイブ・アイズ」は、英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで構成される情報共有同盟です。

FBIによると、ファイブ・アイズ連合が新興技術と技術革新の安全保障に焦点を当てたサミットを主催するのは今回が初めてで、招待された出席者には、連合以外の国々からも業界代表者、政府関係者、学識経験者が含まれているとのこと。

このサミットでは、特に中小企業のような、これまでスパイ活動や知的財産の窃盗の標的になる可能性があることに気づかなかった企業や個人を中心に、ビジネス・コミュニティが安全保障上の脅威を特定、理解、予防、対応する能力を向上させることに重点が置かれたそうです。

FBIのクリストファー・レイ長官は、中国共産党を「イノベーションに対する一番の脅威」と批判し、経済スパイとアイデアやコンセプトの窃盗が北京の国家戦略の中心になっていると告発しました。

加えて、FBIはほぼ12時間ごとに中国関連の新たな捜査を開始しており、現在約2,000件の捜査が進行中だとも述べています。

また、MI5のマッカラム氏は、2020年以来、MI5における中国関連の事件数は約7倍に急増したと明かしています。

タイムズ紙は8月下旬、中国の工作員が機密情報を入手しようと、多くの偽アカウントや偽会社を通じて英国やその他の西側諸国の政府関係者にオンラインで接触したと報じています。

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中国とロシアへ有利に傾く可能性大の世界情勢

このファイブ・アイズについては、イギリスなどから日本の参加を期待する声も出ています。しかし、日本にはスパイ防止法も、情報機関もありません。これらを整備しなければ、ファイブ・アイズに入ることは不可能です。機密情報も敵国に簡単に漏れてしまう状態です。

しかし、上記の状況からしても、スパイ防止法の制定は喫緊の課題のはずです。

日本の「ファイブアイズ」入りは? 連携強化も課題多く

加えて、現在の中東情勢が世界を大きく変える可能性があります。このファイブ・アイズ・サミットでも、イスラエルがパレスチナのイスラム過激派組織ハマスに攻撃されて以来、中東の安全保障情勢が高まっているという懸念も表明されました。

マッカラム氏はMI5は英国内の情勢を注視しており、宗教的あるいは民族的過激派によるテロ攻撃の可能性に警戒を強めているとし、中東での事件は、個人または組織を「鼓舞」し、おそらく過去とは異なる方法で攻撃を実行させる可能性があると述べました。

さらに、イランが不安定な中東情勢にさらに火を注ぐ可能性もあります。マッカラム氏によれば、過去12ヶ月ほどの間に、MI5は反体制派やジャーナリストの殺害・誘拐未遂を含め、イラン関連の公式攻撃を15件防ぐことに成功したといいます。

こうした中東危機を受け、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、イスラエルとパレスチナの過激派組織ハマスの対立の結果、米軍が遠ざかろうとしていた中東に戻ったことで、ワシントンのインド太平洋地域への注力が弱まる恐れがあり、世界情勢は中国とロシアに有利に傾く可能性があると報じました。

美勢必降低關注印太 中俄得利

2021年、アメリカ・バイデン政権はアフガニスタンから米軍を撤退させ、中東におけるアメリカのプレゼンスを縮小しました。その一方で、中国とロシアからの潜在的脅威に注力してきたわけです。

しかしバイデン政権が軍隊と戦力を中東に再配置せざるをえなくなることで、中東に焦点を当てる以前の政策に回帰しなくてはならなくなる恐れがあります。

中東での紛争が、インド太平洋を封じ込めようとしてきた米国の長年の努力と、北大西洋条約機構(NATO)によるロシアへの抑止効果を覆す恐れがあると、WSJ紙は報じています。

フランク・マッケンジー元中央軍司令官は、ハマスに財政的・軍事的支援を提供しているイランは米国の行動を注視していると指摘、米軍が中東でのプレゼンスを低下させ、アジア太平洋にのみ焦点を絞ることを明らかにすれば、米国は中東地域の同盟国を安心させることができず、同地域の潜在的な敵対勢力の自信を助長することになると警告しています。

また、フィンランド元首相のスタッブ氏も、イスラエルとハマスの紛争は世界のパワーバランスに影響を及ぼし、ヨーロッパやアメリカの資源を限界まで引き伸ばすことになり、これら西側の体制を覆したい国々を利する可能性があると述べています。

とりわけ、中国、ロシア、イランのような、長い間、アメリカ主導の国際システムを弱体化させようとしてきた国が、アメリカが中東での戦争に気を取られている間に、チャンスを掴もうとしており、これは世界秩序の再編成の一環だとスタッブ氏は強調しました。

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中国がハマスのイスラエル攻撃を非難しない裏事情

その中国ですが、イスラエルとパレスチナの両方と友好関係を維持してきた中国としては、ハマスのイスラエル攻撃を「テロ」という言葉で表現することを避け、ハマスを非難することもしないため、イスラエルは「失望」を表明しています。

イスラエル、中国に「失望」 ハマスの攻撃非難せず

中国は7日の攻撃発生後も、「イスラエルとパレスチナは共通の友人だ」(外務省報道官)と強調し、いずれか一方への肩入れを避けました。かつて9・11アメリカ同時多発テロが発生した際には、中国はアメリカの「テロとの戦い」を支持しましたが、これは自国のウィグル弾圧を正当化すること利用されました。

今回、パレスチナを非難しない理由としては、台湾侵攻を見据えてのことだとも言われています。中東を不安定にさせてアメリカを引きつけることにより、台湾を攻めやすくする意図もあるのでしょう。

こうした状況下、日本の存在がますます重要になってきます。東アジアの安定と平和、民主主義を守るためにも、日本が果たす役割が世界秩序のための鍵になってくるといっても過言ではないでしょう。

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