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さすがは日本。世界最高水準の「ボールペン」を作り上げる技術と努力

パソコンやタブレット、スマホの爆発的な普及により、以前に比してかなり減少した文字を手書きする機会。しかし文具メーカーは決して努力を怠ることなく、筆記具も着々と進化を遂げていたようです。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、およそ30年ぶりに得たという高品質ボールペン購入をきっかけに、国産ボールペンの現在地を考察。その機能を「世界最高水準」と絶賛しています。

改めて思う「日本のポールペン」の凄さ

1.単色ボールペンで十分

30代の頃、見栄を張って、ペリカンの高級万年筆を使っていた。筆圧の高い私でも、太軸で疲れにくかった。グリーンのストライプの軸に、インクはモンブランのブルーを合わせた。当時でも4万円程度だったと記憶している。モンブランが一番人気だったが、私は二番手のペリカンを選んだ。でも、落として割ったり、失くしたりと身につかなかった。分不相応だったと反省し、高級万年筆を使うのを辞めた。

次に、ペリカンの子供用万年筆ペリカーノが目についた。1本1,000円程度だった。いかにもプラスチックのきれいな色で、持ちやすいグリップ。結局、私は太軸なら何でも良かったのかもしれない。

万年筆は意外に、仕事には使いづらいので、トンボ鉛筆の水性ボールペンZOOMを購入した。当時は、水性ポールペンが新しかったのだ。次に、更に安価なペンテルの水性ペン、トラディオ・プラマンに移った。

しかし、ワープロが登場して、手書きの作業が激減した。いつしか文字は、キーボードで打つようになり、筆記具への関心は薄れてしまった。それでも、ゲルインキボールペンが登場した時には、その滑らかさに感動した。しかし、全体的には、100円程度の安いボールペン、ノベルティでもらった3色ペンなどで十分だった。そんな状態が30年ほど続いていた。

つい先日のこと、3色ボールペンの黒インキが切れて、書けなくなった。それが連続して起きた。筆箱の中に、書けるボールペンがなくなったのだ。

そして、気がついた。私は3色ボールペンを買っても、黒かブルーしか使わない。赤を使った記憶がない。これは勿体ない。

つまり、私には単色ボールペンで十分なのだ。書けるボールペンを探しているうちに、引き出しの奥の方から太軸の単色ボールペンを発見したが、やはりインキを使い切っていた。単色ボールペンの芯は、3色ボールペンの芯よりもかなり太い。そんな当たり前のことにも、改めて気付かされたのだ。

2.替え芯の規格

ここで、新しいボールペンを買うべきか、それとも単色ボールペン用の替え芯を買うべきか、という問題に直面した。

引き出しから出てきたボールペンは、既に生産中止になっていた。替え芯も生産中止。それでも、多分同じ規格の替え芯はあるだろうと、替え芯の寸法を計り、無事に同寸法の替え芯を購入できた。

ネットを見ていると、海外メーカーのボールペンは、国際規格のG2規格の替え芯を使っていることが多く、替え芯にも互換性があることが分かった。国産ボールペンでも、三菱鉛筆からG2規格の芯を使ったジェットストリームプライムが販売されていることが分かった。

そこで、ネット検索で美しいブルーのジェットストリームプライムのボールペンを見つけ、購入した。しかし、届いたボールペンの芯はG2規格ではなかった。G2規格の芯を使っているのは、ツイスト式の製品だけで、ノック式は国産ゲルボールペンの規格に準じていたのだ。

実は、日本でもボールペンの芯を規格化しようという試みはあり、ゲルボールペンの芯にはJIS規格が設定されている。しかし、各社の仕様の違いがJISに反映された結果、全長は同じでも、先端部分の長さや太さなど、微妙に異なる3種類に規格が分かれている。これらの規格は微妙に互換性がない。

これは日本の特徴でもある。標準規格で統一するより、他社との差別化を重視する。ある意味、消費者にとっては迷惑な話だが、一方で他社との差別化を競い合い、技術も進化していくのだ。

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3.高デザイン高品質中価格の商品

バブル崩壊以前、ボールペンは万年筆と共に、ステイタスを表現するアイテムだった。しかし、バブル崩壊と共に、ボールペンは低価格高性能の商品に集中した。ゲルインキや消えるポールペンなど、技術革新も進み、機能的には世界最高水準に達したと思う。

学生がターゲットであれば、低価格高品質の商品が理想だが、高齢化が進み、大人買いも一般化し、高デザイン高品質中価格の商品が増えている。

そして、パーツの一部を変えることで、更に高級品になる製品も出てきた。例えば、パイロットのフリクションボールノックゾーンは、軸のペン先に近い部分(首軸)の素材を木製やマーブル調の樹脂に変えることで、実用品から高級品までの製品の幅を広げている。これができるのは、基本となるプロトタイプのフォルムが美しいということである。価格は安くても、デザインとしては、世界の高級品として通用するレベルに達しているのだ。

ボールペンは成熟しており、限界までコストダウンを図り、技術革新を進めてきた。その上で、デザインの完成度を高め、バリエーションの拡大が可能になった。愛好家にとっては、コレクションしたくなる製品になったということだ。

そう考えると、日本のボールペンは日本の製造業の強みが結晶化したものかもしれない。

編集後記「締めの都々逸」

「筆を選ばぬ 弘法さえも ボールペンなら 選ぶでしょ」

「欲しいものなんてないなぁ」と思っていたのですが、「突然、ボールペンが欲しい」と思いました。「ボールペンなんて安くて書ければいいんだよ。高級ポールペンなんて意味ないじゃん」と思っていたのに。

実は、自分の字が下手になっていることに気がつきました。小さな文字で自分の名前を書くと線が震えるのです。しかし、新しいノック式のジェットストリームプライムで書いたら、文字がきれいに書けました。まさか、ポールペンを変えると文字が変わると思っていなかったのでびっくり。ペンの重さとバランス、軸の太さ、インクの滑らかさなどが相まって、とても良い感じです。

それで俄然興味が出てきて、欲しいボールペンをピックアップしました。すると、昔、愛用していたポールペンが出てきて、「ああ、まだ現役なんだね」と感じ入ったりして。

どうせ買うなら、「全部ブルーで揃えようかな」なんて思っています。楽しみ。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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