MAG2 NEWS MENU

全ての日本人が拘束の危機。中国が「言いがかり」で外国人を次々と投獄する日

2014年に反スパイ法が施行された中国で、17人が拘束され10人が実刑判決を受けている日本人。しかしいかなる行為が反スパイ法に抵触するのかは明らかにされておらず、中国では日本人を含めた全ての人間が拘束されるリスクに晒されているのが現状です。そんな隣国の横暴を伝えているのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、台湾人が中国で逮捕もしくは拘束された複数のケースを紹介するとともに、日本政府に対しては、邦人保護の観点から早急なスパイ防止法の制定を提言しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年11月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

すべての日本人がスパイ拘束されるリスク。中国で繰り返される「文字獄」

中国で拘束の日本人男性 上訴棄却され懲役12年確定

4年前に中国湖南省長沙で国家安全当局に拘束された日本人男性に対し、今年2月、スパイ行為に関係したということで懲役12年の判決が下されましたが、男性は上訴していました。しかし11月3日、この上訴が棄却されたということで、懲役12年が確定しました。

反スパイ法が制定された翌年の2015年以来、中国当局にスパイ容疑で拘束された日本人は少なくとも17人に及んでいますが、中国当局はスパイに関連しているということで、逮捕や裁判の判決理由などについて、ほとんど情報を出していません。

そのため、どのような行為がスパイ行為に当たったのかということが、ほとんどわからないのです。町中で何気なく撮影した写真、あるいは誰かと交わした言葉がスパイ行為とみなされたのかもしれないですし、あるいは政治的な理由からの冤罪かもしれないのですが、その実態はまったくわかりません。

今年3月にはアステラス製薬の日本人男性がスパイ容疑で拘束され、その後、正式に逮捕されています。理由はまったくわかっていません。また日本の非鉄専門商社の中国法人で働いていた中国人も、今年3月に拘束されていたことが先日発覚しました。こちらはレアメタルを巡って外資企業への情報流出が疑われたのではないかとも噂されています。

「社員みな萎縮」動揺する中国の日系企業 非鉄商社の中国人社員拘束

2015年以降、拘束された日本人17人のうち、12人が逮捕され10人が実刑判決を受けています。拘束されてから逮捕されるまでに解放された日本人は5人しかいないそうです。

中国、アステラス社員を逮捕 スパイ容疑で3月拘束

この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ

初月無料で読む

拘束・逮捕される理由がない人のほうが少ないという現実

台湾でも同様に、中国大陸で拘束・逮捕される台湾人があとを絶ちません。しかも、その理由も非常に恣意的です。たとえば、2019年にスパイとして拘束され、懲役刑を課された李孟居氏は今年7月に刑期満了で中国を出国しましたが、深セン出張の際に、直前に香港で入手した「香港頑張れ」というカードが、拘束のきっかけとなったそうです。

民主化運動の支援者だと当局にみなされたようですが、本人はそのような意味があるとは思わなかったとのこと。単に「I LOVE NY」と同じような意味合いのものだと思ったのでしょう。

いきなり拘束され、政治権利を奪われ、服役…台湾人男性が「反スパイ法」を「人質外交の合法化」と批判する理由

今年4月には、台湾独立を主張する政治活動を行ってきた台湾人青年が、中国で拘束されています。彼は2011年に台湾独立を主張する台湾民族党を立ち上げたメンバーでもありましたが、すでに政治からは手を引いていて、中国には囲碁を教える目的で訪れていたとのことです。中国国営テレビは、この男性が手錠をかけられて拘束されている様子を放送しましたが、これら一連の動きは、来年の台湾総統選挙に向けて台湾人を威嚇する目的があるのではないかと言われています。

中国が台湾人男性を政治犯として逮捕。台湾市民への脅しが目的か?

加えて今年の3月には、台湾の出版社「八旗文化」の編集長・李延賀氏が、病気の母を見舞うため上海を訪れたところで中国当局に拘束されました。李延賀氏は中国人ですが、台湾人の女性と結婚し、2009年から台湾に移住していました。台湾の戸籍も取得し、中国籍の放棄を申請していましたが、コロナ禍で除籍が猶予されていたところだったそうです。

台湾をジワジワと追い詰める…中国政府が「3年ぶりに本土を訪ねた編集長」をいきなり拘束した本当の狙い

中国当局は李延賀氏を拘束したことについて、「国家の安全を脅かす活動を行った疑い」と、例によってよくわからない理由を掲げていますが、台湾では「八旗文化」が、新疆ウイグルやチベット問題、天安門、中国官界の腐敗に関する書籍や、日本で出版された中国批判本の翻訳書を出版していたことが原因ではないかとも言われています。

台湾をジワジワと追い詰める…中国政府が「3年ぶりに本土を訪ねた編集長」をいきなり拘束した本当の狙い

要するに、本人自身が直接発言・執筆したわけではなくても、中国にとって不都合な内容の文章を扱っただけで、拘束される可能性があるということです。ですので、中国を批判する書籍を刊行したことのある日本の出版社社員が中国に行けば、拘束される可能性あるということなのです。中国に不都合なニュースや番組を放送したことがある放送局社員も同様です。もちろん、SNSで中国批判のツイートをリツイートしたことがあれば、それも拘束理由の証拠になるでしょう。

そのように考えると、拘束・逮捕される理由がない人のほうが少ないと言えるのではないでしょうか。

この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ

初月無料で読む

中国の「何でも難癖をつけて相手を陥れる」風習

とりわけ、中国では「文字獄」(発表された文章が婉曲的に体制を批判していると認定し、その作者を弾圧、罰すること)が繰り返されてきました。作者にその意図がなくても、中国当局が「これは体制批判・国家分裂を示唆している」と認定することで、罰せられてしまうのです。

たとえば、明の洪武帝は貧しい家の出だったことから劣等感が強く、官僚の書く文章が自分を嘲っているのではないかと疑い、多くの官僚を処罰しました。学者の徐一夔(じょいっき)は洪武帝を称えた「光天之下、天生聖人、為世作則」という詩を書きましたが、「光」「聖」が僧侶であった洪武帝の頭の薄さを笑い、「則」の文字が「賊」と同じであるということから、洪武帝は自分を貶めているに違いないと曲解して激怒、一族郎党が処刑されてしまいました。その他、洪武帝の時代には文字獄によって多くの文人が処刑されています。清の時代にも康煕帝や雍正帝の文字獄が有名です。

『水滸伝』では、梁山泊の首領である宋江が酔って酒場の壁に書いた漢詩が、体制転覆を目論んだものだとして、朝廷から追われる原因となります。

また、文化大革命も、1961年に発表された新作京劇『海瑞罷官』について、毛沢東(の意を汲んだ四人組の姚文元)が「ブルジョアジーや地主階級を美化し、人民公社解体や反革命分子の擁護を主張している」と難癖をつけて、「実権派」潰しを行ったことから始まっています。

要するに、何でも難癖をつけて相手を陥れる風習が中国にはあるのです。清末の中国で20年以上にわたり布教活動を行ったアーサー・スミスも、著書『中国人的性格』で中国人は曲解の名人だと述べています。

今年7月に改正反スパイ法が施行され、「スパイ行為」の定義が拡大されました。今後、中国で日本人が逮捕されるリスクは、ますます高まっていくと思われます。いまだ中国の巨大市場を夢見て、中国事業への拡大を表明する日本人経営者も少なくありませんが、自社の社員が中国で拘束・逮捕される可能性があることについて、どう考えているのでしょうか?

日本維新の会の松沢成文氏は11月9日の参院外交防衛委員会で「日本もスパイ防止法を持たないと、スパイ交換ができず、海外で捕まったら何年も拘束される」と述べました。本メルマガで繰り返し述べてきましたが、日本国民を守るためにも、スパイ防止法の制定は急務なのです。

この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ

初月無料で読む

 


 

最新刊
中華思想の正体と行方 中国の恐ろしい未来
好評発売中!


image by: Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年11月15日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2023年10月配信分

2023年10月のバックナンバーを購入する

2023年9月配信分

2023年9月のバックナンバーを購入する

2023年8月配信分

2023年8月のバックナンバーを購入する

2023年7月配信分

2023年7月のバックナンバーを購入する

2023年6月配信分

2023年6月のバックナンバーを購入する

2023年5月配信分

2023年5月のバックナンバーを購入する

2023年4月配信分

2023年4月のバックナンバーを購入する

2023年3月配信分

2023年3月のバックナンバーを購入する

2023年2月配信分

2023年2月のバックナンバーを購入する

2023年1月配信分

2023年1月のバックナンバーを購入する

2022年12月配信分

2022年12月のバックナンバーを購入する

2022年11月配信分

2022年11月のバックナンバーを購入する

2022年10月配信分

2022年10月のバックナンバーを購入する

2022年9月配信分

2022年9月のバックナンバーを購入する

2022年8月配信分

2022年8月のバックナンバーを購入する

2022年7月配信分

2022年7月のバックナンバーを購入する

2022年6月配信分

2022年6月のバックナンバーを購入する

2022年5月配信分

2022年5月のバックナンバーを購入する

2022年4月配信分

2022年4月のバックナンバーを購入する

2022年3月配信分

2022年3月のバックナンバーを購入する

2022年2月配信分

2022年2月のバックナンバーを購入する

2022年1月配信分

2022年1月のバックナンバーを購入する

2021年12月配信分

2021年12月のバックナンバーを購入する

2021年11月配信分

2021年11月のバックナンバーを購入する

2021年10月配信分

2021年10月のバックナンバーを購入する

2021年9月配信分

2021年9月のバックナンバーを購入する

2021年8月配信分

2021年8月のバックナンバーを購入する

2021年7月配信分

2021年7月のバックナンバーを購入する

2021年6月配信分

2021年6月のバックナンバーを購入する

2021年5月配信分

2021年5月のバックナンバーを購入する

2021年4月配信分

2021年4月のバックナンバーを購入する

2021年3月配信分

2021年3月のバックナンバーを購入する

2021年2月配信分

2021年2月のバックナンバーを購入する

2021年1月配信分

2021年1月のバックナンバーを購入する

2020年12月配信分

2020年12月のバックナンバーを購入する

2020年11月配信分

2020年11月のバックナンバーを購入する

2020年10月配信分

2020年10月のバックナンバーを購入する

2020年9月配信分

2020年9月のバックナンバーを購入する

2020年8月配信分

2020年8月のバックナンバーを購入する

2020年7月配信分

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分

2020年3月のバックナンバーを購入する

2020年2月配信分

2020年2月のバックナンバーを購入する

2020年1月配信分

2020年1月のバックナンバーを購入する

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け