来年の米大統領選に向けて、アメリカでは民主党と共和党をめぐり報道合戦が激しくなってきているようです。しかし、その報道は必ずしも「公平ではない」と、英国の経済誌『エコノミスト』が指摘しているほどに偏っています。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、不法移民問題にフタをしようとする米マスコミの意図的な偏向報道について苦言を呈しながら、世界一の大国の未来を憂いています。
報道不信のなかで行われる米国大統領選
今年最後のメルマガになりました。来年2024年は米国大統領選の年です。
共和党はトランプ、民主党はバイデンが出てくることは間違いないでしょう。
米国大手メディアは圧倒的に「反トランプ」です。大統領として不適格だという報道が山のようにされています。
問題は、多くの米国民がそのマスメディアの報道を信じていない事です。この問題を英誌エコノミストが12月16日号で特集しています。
「メディアとメッセージ、ジャーナリズムと2024年米国大統領選挙」という特集です。
記事をみて見ましょう。
「アメリカのジャーナリズムは民主党に寄り添っているようにみえる」
アメリカ国民のメディアに対する信頼は急落している。
その大半は共和党によるものである。報道が民主党寄りに偏っているという非難に拍車がかかっている。
我々(エコノミスト誌)はこの問題に学術的調査を行った。メディアがどちらかの党に偏向しているかどうかを調べたのである。
その結果、ジャーナリストは民主党議員が使う言葉を好む傾向があるため、メディアと民主党の間には確かに親和性があることがわかった。
しかも、この格差はドナルド・トランプの大統領就任以降拡大している。
バランスの取れた言葉で政治を報道するメディアの数は減少している。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
解説
調査は政治課題をどの単語で表現するかという統計をとって行われました。
たとえば、メキシコ国境から国境検問所をとおらずに入ってくる人々を共和党(トランプ側)は不法移民(Illegal Immigrant)と呼びます。
民主党(バイデン側)は「滞在許可証をもたない移民(Undocumented Immigrant)」と呼びます。
語感が全く違います。
マスコミがどちらの言葉を多く使うかを統計的に処理することで、民主党寄りか共和党寄りかを判断できるのです。
このエコノミスト調査では、米国の大手マスメディアのほとんどは民主党寄りであるという結論です。
こういったマスコミの偏向した報道に強い反発をもつ米国人が多数います。
私もその一人です。
最初、2016年の大統領選前は「トランプが大統領候補? 悪い冗談でしょう?」と思っていました。
しかし著書や発言のオリジナルを読んで支持する人の気持ちがわかりました。そこに真っ当な論理があると感じたからです。
- 合法移民はよい。しかし不法移民を許してはダメだ。国を亡ぼす
- 不法入国しようとして捕まったら「難民申請します」なんていう人々を保護してはダメだ
- 難民申請するなら最初から国境検問所にきてすべきだ
- ニューヨークやシカゴ、サンフランシスコなど不法移民を保護するような施策をとっているサンクチュアリシティ(聖域都市)はダメだ。法と秩序こそが国の基幹だからだ
これらの主張、私には当然に思えます。
しかし、マスコミは「トランプは人種差別主義者であり、すべての移民を追放したがっている」かのような報道をしていました。
彼が「不法移民だけ」を問題にしているにもかかわらずです。
さらに「トランプはポピュリスト(人気狙いの政治家)である、貧乏な白人アメリカ人を操っている」という報道もありました。
私はインタビューに答えるトランプを何回かみましたが、彼に「人気を得たい」という意図を全く感じませんでした。
ただ米国の穴だらけの国境政策に本気で怒っているという事だけはわかりました。ブスっとして怒りをぶちまけていたからです。
当たり前です。
彼はNYにたくさんの土地をもっています。不法移民を呼び込むような政策をされたら、ますます治安が悪化し土地の値段が下がってしまいます。
選挙民の意向がどうであれ、彼は不法移民に反対していたでしょう。
バカなほど首尾一貫した主張です。選挙民に受けそうに主張を変えていくポピュリストとは正反対です。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
閑話休題。
いずれにしても、来年は米国選挙です。
国境問題は、前回選挙よりもさらに重要性を増しています。民主党の中からも国境管理をしっかりしろという声が上がってきています。まさに国の根幹にかかわる問題だからです。
しかしマスコミはトランプの主張には焦点を当てたくないのでしょう。もしトランプが勝ったらどんな仕打ちを受けるか分からないからです。
つまり選挙は「トランプVS大手マスコミ」となります。
今までの歴史にない構図です。
どちらも譲る気配はありません。その関係は仲が悪いというレベルを超えています。
私は、このままならトランプが勝つと思います。
その時、米国にどのような亀裂が生まれるのか想像もつきません。
PS
このメルマガを読んで、「私(大澤)はあんなトランプを支持している」と反応する人が必ずいます。論点はそこではありません。国境管理や報道のあり方はトランプとは切り離して考えるべきなのです。
(この記事はメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために
メルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 では、在米14年の経験と起業家としての視線、そして大学教授という立場から、世界で起きているさまざまなニュースを多角的な視点で分析。そして各種マスコミによる「印象操作」に惑わされないためのポイントを解説しています。12月中であれば、12月配信分のメルマガ全てが「初月無料」でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。
月額:¥330(税込)/月
発行日:毎週 日曜日(年末年始を除く)
形式:PC・携帯向け/テキスト・HTML形式
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
image by: Below the Sky / shutterstock.com