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都民がやっと気づいた小池百合子の賞味期限。儚くも消えた「日本初の女性総理」の夢、都知事の椅子にすがるしかない小池劇場に響く四面楚歌

東京15区の衆院補選で小池百合子東京都知事の全面支援を受け選挙戦を展開するも、9人の候補者中5位という大惨敗を喫した乙武洋匡氏。この結果を受け、「乙武氏の大惨敗は小池知事の大惨敗」とするのは、人気ブロガーのきっこさんです。きっこさんは今回の『きっこのメルマガ』で、そのように判断せざるを得ない理由を解記すとともに、本来は自身が15区の補選に出馬するはずだった小池氏が候補として立たなかった裏事情を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:小池百合子の賞味期限

もはや賞味期限切れか。誤算続きの小池百合子「女帝劇場」のエンディング

今回は先週の続きのような内容になってしまいますが、4月28日(日)に投開票が行なわれた衆院補選の東京15区で、鳴り物入りで出馬したのに大惨敗してしまった自称無所属の乙武洋匡氏(48)について、その背景や敗因を振り返ってみたいと思います。何故かと言うと、この補選の結果が大きく影響する東京都知事選が、2カ月後の7月7日に行なわれるからです。

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今回、東京15区で乙武氏に出馬を要請したのは小池百合子都知事であり、小池知事は11日間の選挙戦で8回も応援演説に立ちました。さらには、応援演説しなかった3日間も、乙武氏の選挙カーに同乗し、車の中から細かい指示を出していました。つまり、今回の乙武氏の大惨敗は、言うなれば小池知事の大惨敗でもあるのです。

現職の都知事が前面に立って応援したのにも関わらず、東京都民でもある江東区の有権者には、ほとんど訴えが届きませんでした。それどころか、無所属の須藤元気氏や知名度の低い日本保守党の飯山陽氏にまで大きく差をつけられ、得票数19,655票で得票率11.51%と、供託金が没収されてしまう10%のラインをギリギリで死守するのがやっとという、陣営にしてみれば悪夢のような結果となってしまったのです。

でも、そもそもの話として、この東京15区の補選には、小池知事が都知事を辞職して出馬するという話も出ていたのです。今年2月、小池知事は自民党東京都連会長の萩生田光一氏と赤坂の料亭で複数回密会して、東京15区の補選への出馬について話し合っていたと報じられました。小池知事と言えば、自民党の衆議院議員だった2008年9月に、福田康夫首相の辞任に伴う自民党総裁選に出馬したことからも分かるように、常に「日本初の女性総理」を目指して来ました。

今回は、東京15区の補選で国政に復帰し、30年に渡って行動を共にして来た二階俊博氏の神輿(みこし)に乗ってポスト岸田の有力候補に躍り出て、今年の秋の自民党総裁選に出馬し、あわよくば…というシナリオを考えていたようです。しかし、この計画に暗雲が差したのが、3月25日に行なわれた二階氏の会見での「次の衆院選には出馬しない」という宣言でした。

小池知事と言えば、自民党の衆議院議員時代には二階氏率いる二階派「志帥会」の後継候補と目されていた時期もあり、二階氏自身も小池氏が総裁選に出馬するなら「俺が担いでやる」と公言していました。自民党の総裁は党内のパワーバランスで決まるため、総裁候補に必要なのは政治家としての能力や資質ではなく「強い味方」なのです。

しかし、小池氏が頼りにしていた二階氏が、裏金問題で次の衆院選への不出馬を宣言したことで、小池氏の目論見は大きく狂ってしまいました。もしも岸田文雄首相が会期末に一縷の望みを託して解散総選挙に打って出た場合、二階氏は現職でなくなり、一定の影響力は残しつつも、出戻り議員を総裁に据える力など失ってしまうからです。

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小池氏に大きな「借り」を作った萩生田氏の動き

そこで、東京15区の補選への自身の出馬を断念した小池氏は、自分の代わりに隠しカードとして用意していた乙武洋匡氏を出馬させることにしたのです。小池氏が出馬した場合、「自分の野望のために都政を丸投げした」という批判は免れられないため、小池氏は二階氏の会見を待たずして、3月初頭に乙武氏と直接面会して、出馬を打診していたのです。

しかし、乙武氏は2020年5月の参院選に東京選挙区から無所属で出馬し、改選数6議席に対して9位に惨敗しており、すでに痛い目を見ています。その乙武氏が出馬の打診に乗ったのですから、小池氏はそうとう良い条件、たとえば「自公の推薦」などを提示したと思われます。そして、二階氏の会見を受けた小池氏は、3月28日、都民ファーストの会が国政進出を目指して立ち上げた「ファーストの会」の共同代表に乙武氏を就任させ、その流れで乙武氏の東京15区の補選への出馬も発表しました。

しかし、フタを開けてみると、乙武氏は「無所属」での出馬だと言うのです。小池氏のイメージカラーである緑色のポロシャツを着て、緑色のキャップをかぶり、白地に緑色の文字で「乙武ひろただ」と書かれたタスキを掛けた乙武氏の隣りには、いつもの緑色のブルゾンと緑色のスカーフを巻いた小池百合子都知事が立っているのに、「無所属」とはこれいかに?

さて、時計の針を少し戻し、萩生田光一氏のお膝元で行なわれた今年1月の八王子市長選は、萩生田氏の恥も外聞もない裏金問題で逆風が巻き起こり、当初は自公が推薦する初宿(しやけ)和夫氏が劣勢で、野党系の候補がリードしていました。しかし、ここで負けてしまっては萩生田氏の立場がさらにまずくなります。そこで萩生田氏がすがりついたのが、自民党とは距離があると有権者から思われている小池百合子氏でした。

萩生田氏の要請で小池氏が応援演説に入ると、八王子の風向きが大きく変わりました。小池氏の肉声を録音した自動音声の電話作戦まで繰り広げた結果、なんと終始劣勢だった初宿和夫氏が逆転勝利したのです。小池氏に大きな「借り」ができた萩生田氏は、選挙後に招待した食事の席で、小池氏に「国政に復帰して自民党に戻るなら後押しする準備はできています」と述べたと報じられました。

その後、萩生田氏は「(裏金問題で)俺を切り捨てるのは構わんが、俺を切ったら小池都知事とのパイプがなくなるぞ」と言って、党内で幅を利かせるようになったとも報じられました。そんな萩生田氏ですが、八王子市長選のお礼として行なおうとしたのが、柿沢未途議員の辞職に伴う東京15区の補選を利用して、水面下で小池氏が目論んでいる国政への復帰を手助けするというシナリオでした。現職の都知事が出馬して自公が推薦すれば、寝ていても当選するからです。

しかし、前出の理由で小池氏は出馬を見送ることになり、東京15区の補選は「小池氏が推す候補を自公が推薦する」という段取りに変更されました。すると、小池氏は事前に萩生田氏に連絡せず、自分だけで乙武氏の出馬を決めてしまったのです。小池氏が萩生田氏に「乙武氏で行く」と連絡したのは、発表の当日の3月28日でした。

萩生田氏は慌てて推薦の方向で党内調整しましたが、ここで「待った!」を掛けたのが、乙武氏の5回にも及ぶ過去の不倫問題に嫌悪感を示した創価学会の女性部でした。これによって公明党の推薦は得られなくなり、その流れから自民党も推薦するかしないか考え始めたのです。そして、このスッタモンダをマイナス要因だと捉えた乙武氏は、自ら「自分が所属するファーストの会以外に推薦願は出さない」と明言し、改めて「無所属」をアピールしました。

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都知事選で3選を狙う道しか残されていない小池氏

しかし、この乙武氏の強気のアピールが自民党からソッポを向かれる原因となり、乙武陣営は寝ていても勝てる予定だった7万票もの自民票を失ってしまったのです。その結果、主力エンジンを失った乙武氏は急降下してしまい、告示から3日後の4月19日の調査では、9人の候補者中6位に沈んでしまいました。

この報道を受けて、慌て始めたのが創価学会の女性部でした。公明党の支持母体である創価学会としては、いくら推薦を見送ったと言っても、小池知事が応援している乙武氏があまりにも情けない負け方をしたら恰好がつきません。そこで創価学会の女性部の一部が投票へ走り、乙武陣営は約1万票を積み増したと見られています。

つまり、乙武氏の得票数19,655票のうち、半分は創価学会の同情票だったわけであり、もしも創価学会が動かなければ、乙武氏はさらに順位を落とし、供託金も没収されていた可能性が濃厚だったのです。仮にも都民ファーストの会と国民民主党が推薦し、小池百合子知事や玉木雄一郎代表が応援演説をした候補が供託金を没収されるほどボロ負けしていたら、候補者本人だけでなく、推薦した政党にも今以上の大きなダメージがあったでしょう。

今回、乙武陣営の最大の敗因は、自分の人気だけで勝てると思い込み、自公への根回しを軽視した小池百合子知事の「慢心」だと見る声も多く挙がっています。読売新聞の報道によると、小池知事は4月上旬に萩生田氏に電話して、連絡が3月28日になってしまったことについて、そして自分の一存で乙武氏を担いだことについて、謝罪したそうです。また、萩生田氏は小池氏から謝罪の電話があったことを認めた上で「(乙武氏ではなく)普通の人を出していたら勝てたよ」と述べたそうです。

こうした流れからも分かりますが、冒頭でも書いたように、今回の結果は乙武氏の大惨敗というよりも小池知事の大惨敗なのです。そして逆に言えば、乙武氏は小池知事に応援されたことで票を減らした一面もあったと思います。

小池知事には学歴詐称疑惑だけでなく、関東大震災で虐殺された朝鮮人らを弔う式典への追悼文を中止した問題、森喜朗元首相の言いなりで強行している神宮外苑の再開発を巡る問題、葛西臨海公園の大量の樹木伐採と太陽光利権の問題、築地市場跡地の再開発を巡る問題など、ゼネコンとの癒着が噂される数多くの疑惑があります。

また、都知事選に初出馬した時に掲げた「12のゼロ」という公約は、2期8年経った現在、1つも達成していません。その上、記者クラブを牛耳り、自分の定例会見ではやりたい放題。政治に興味のない約半数の東京都民も、そろそろ小池知事の独裁ぶりに気づき始めており、それが今回の乙武氏の大惨敗につながったのです。

すでに国政への復帰の道は断たれ、もはや7月の都知事選で3選を狙う道しか残されていない小池知事ですが、学歴詐称問題を告発した元側近の小島敏郎氏は、小池知事が「カイロ大学卒」という学歴を公式プロフィールに明記したまま出馬した場合には「公選法違反で刑事告発する」と明言しました。

都知事選の投開票日は7月7日ですが、告示日は6月20日なので、あと40日ほどしかありません。今回の補選で完全に「賞味期限切れ」を露呈してしまった小池百合子知事が、自民党の裏金議員のツートップである二階俊博氏や萩生田光一氏とベッタリ癒着している小池百合子知事が、一体どんな手に打って出て来るのか?8年間もの小池都政に苦しんで来た東京都民だけでなく、全国の皆さんも一緒に「小池劇場」のエンディングを見守りましょう。

(『きっこのメルマガ』2024年5月8日号より一部抜粋・文中敬称略)

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