小池百合子が絶たれた「日本初の女性首相」への道。東京15区補選に“女帝”が出馬を断念した深刻なウラ事情

2024.04.16
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前任者の辞職に伴い28日投開票が行われる衆院東京15区補選。小池百合子東京都知事の出馬が噂され注目されていましたが、小池氏サイドは同氏が顧問を務める「都民ファーストの会」が母体である「ファーストの会」副代表の乙武洋匡氏を擁立、結局小池氏は不出馬となりました。その「裏側」を考察しているのは、政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さん。上久保さんは今回、「史上初の女性首相」をキーワードに、小池氏が出馬を見送った経緯をめぐる「2つの可能性」について解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

衆院東京15区補選の“奇妙な盛り上がり”。自民は裏金、小池は断念、乙武氏出馬、野党乱立…

小池百合子東京都知事自身が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」により設立された国政向け政治団体「ファーストの会」の副代表で、作家の乙武洋匡氏が衆議院東京15区補選への立候補を表明した。

乙武氏は、幅広く支持を得るため無所属として出馬するが、元々小池氏が、ファーストの会の公認候補として擁立するために、乙武氏を副代表に迎えた経緯がある。そのため、小池氏の補選出馬の可能性が消滅し、国政復帰を断念したとみられている。

東京15区補選は、小池氏の出馬が噂されたからこそ、全国注目の選挙区となっていた。この選挙区で現職が2度スキャンダルで辞任し、候補者を立てられない自民党と、その連立パートナーの公明党を除き、野党各党が政治的アピールを狙い、競って候補者を擁立した。現在のところ8名が立候補を表明する乱立状態となっている。しかし、当の小池氏が出馬しないことになった。

小池氏の悲願は、「日本初の女性首相」になることだ。元々、その悲願を達成するための布石として、16年の東京都知事選に出馬し、東京都知事となった経緯がある。

当時、安倍晋三政権が長期政権化する中、小池氏は安倍首相と対立的になった。閣僚・党幹部の役職に就けず、干されていた。「日本初の女性首相」への道は遠ざかるばかりだった。小池氏は悲願への活路を開くために、2016年、舛添要一都知事(当時)の辞職に伴う東京都知事選に出馬し、当選したのだ。

17年の総選挙で、小池氏は地方主権を掲げる政党「希望の党」を率いて自民党と戦った。敗れはしたが、前原誠司代表率いる「民進党」と希望の党の合流が発表された時は、安倍長期政権下で、最も政権交代を期待させた瞬間だった。21年には、コロナ禍で1年遅れながら東京五輪を開催した。都知事としての実績を積み重ねたのも、「日本初の女性首相」という悲願のためだっただろう。

そして、自民党の「派閥の政治資金パーティー裏金事件」で、岸田文雄政権の支持率が急落し、政権を失う危機にある今、小池氏が「日本初の女性首相」の悲願達成へ最後の挑戦に出ると噂されていた。そのためには、都知事を辞職して国政に復帰し、自民党総裁選に勝利するために動く、その一歩目が東京15区補選に勝利することだとみられていた。

小池氏が、東京15区補選に出馬すれば楽勝だろう。だが、単に国政復帰するだけでは、何の意味もない。出馬断念は、「日本初の女性首相」への道を絶たれたからに他ならない。

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