小池百合子が絶たれた「日本初の女性首相」への道。東京15区補選に“女帝”が出馬を断念した深刻なウラ事情

2024.04.16
 

東京15区補選に見る国政の現状を象徴するような構図

この噂は、どこまで真実かわからない。言えることは、この一連の処分の流れで、岸田首相は、党全体に隠然たる影響力を誇る二階氏と、首相を最も牽制してきた安倍派の幹部で、参院を掌握していた世耕氏を自民党から追い出した形になった。そして、今後最大のライバルとなりうる存在だった小池氏の国政復帰の芽も摘むことにもなっている。

どこまで首相が意図的にやったことかはわからない。だが、派閥という牽制役がなくなって、首相の権力が、過去にないほど強大化していることは間違いない。

東京15区補選は、小池知事の国政復帰の場となるとみられたため、自民党・公明党を除く各党が競って候補者を擁立する状況となった。だが、当の知事が出てこないため、各党・候補者は「梯子を外された」形となった。

だが、それでも「奇妙な盛り上がり」は続いている。この選挙は全国289の小選挙区の1つで行われるものに過ぎないが、国政の現状を象徴するような構図となっている。自民党が候補者を擁立できない状況だからとはいえ、8候補が乱立している異様な状況そのものが示すものがある。

この補選は、次期衆院総選挙の前哨戦の意味合いが強い。岸田内閣の支持率、自民党の政党支持率が急落している状況で、「5年後の政権交代を目指す」と発言したことがある泉健太立憲民主党代表さえ、非自民各党で一致できる政策に取り組む「ミッション型内閣」を提唱し始めるなど、状況が変わってきた。野党にとって、次期衆院選は「政権交代」を目指すことになるはずだ。

ところが、東京15区補選では、野党各党がアピール合戦を繰り広げている。それは「違い」を一生懸命強調している。各党や候補者個人の「コアな支持者」に対しては、強いアピールになる。実際、「コアな支持者」からの反応はいいのだろう。手ごたえと充実感を感じているかもしれない。

だが、そのホットな闘いから一歩引いて、冷静にみたらどうだろう。野党はバラバラであることをわざわざアピールしているようだ。政権交代の千載一遇の好機なのに、それをつかみ取って、日本を改革しようという強い決意がまったくみえないのだ。

おそらく、野党には「コアな支持者」の声しか聞こえていないのだ。それは、大きな声ではあるが、全有権者の中では少数派に過ぎない。総選挙の結果を決めるのは、全国民の60%を上回っているといわれる「無党派層」だ。

無党派層には、中道的な考え方を持つ現役世代、子育て世代、若者らに加え、都市部で暮らすサラリーマンを引退した高齢者などが含まれる。普段は、イデオロギーに強いこだわりがなく、表立って声を上げない「サイレント・マジョリティ」である。

サイレント・マジョリティは、常日頃から支持している政党はないものの、時流や政局に応じて一票を投じ、選挙の結果を事実上左右する力を持ってきた。例えば、かつて民主党への政権交代を支持したのはこの人たちだ。また、第2次安倍晋三政権は、経済政策「アベノミクス」や、弱者を救済する社会民主主義的な政策でサイレント・マジョリティの支持を獲得し、憲政史上最長の政権を実現した。

ところが、現在のサイレント・マジョリティは、自民党はもちろんのこと、野党第1党である立憲民主党にも満足していない。彼・彼女らの票が流れ込んでいるのは「改革」を標榜(ひょうぼう)する維新である。

2023年4月の統一地方選を思い出してほしい。この選挙では維新の会が躍進した。大阪府知事・市長・府市議会を「完全制圧」し、維新に所属する全国の首長・地方議員の合計は774人となった。このうち505人は近畿圏であり、悲願の全国政党への脱皮は道半ばだが、それまで以上に維新に支持が集まったのは確かだ。その理由は「バラマキ」を是とせず、地方分権・行政改革・規制緩和などを志向するラディカル(急進的)な政策が評価されたからだ。

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