医療漫画の金字塔として、今なお色あせることのない手塚治虫の『ブラック・ジャック』。1973年から1978年にかけて「週刊少年チャンピオン」で連載された本作には、実は「雑誌掲載時」と「現在流通している単行本」とで、内容が大きく異なるエピソードが数多く存在する。
手塚治虫という作家は、単行本化の際に自らページを再構成し、徹底した加筆・修正を施すことで知られる。完成度を極限まで高めようとするその執念は、物語の結末すら変えてしまうこともあった。その過程で「失われたピース」となったオリジナル版(初出版)に光を当てたのが、本作『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ Second Operation』である。
驚愕の比較構成:オリジナル版と単行本版の「差分」を可読化
本書の最大の見どころは、大きな改変が加えられたエピソードを中心に、「オリジナル版」と「単行本版」を比較して読める形式で掲載している点だ。
-
カラー版の忠実な再現: 「パク船長」「イレズミの男」「地下水道」「通り魔」「海は恋のかおり」では、当時の美麗な4C/2C彩色版を忠実に再現。雑誌掲載時の鮮烈な色彩が蘇る。
-
創作の軌跡を辿る: 「雪の夜ばなし」は初出版と単行本版を併載。さらに「ふたりの修二」「血がとまらない」「パク船長」「地下水道」では、単行本化に際して生じた「差分」を収録している。
読者はページをめくるごとに、手塚治虫がどのコマを削り、どのセリフを書き換えたのかという「編集術」を、生々しい手触りとともに目の当たりにすることになる。
『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ Second Operation』立東舎・刊 定価5,500円(税込)
収録コンテンツ:歴史的資料価値を持つラインナップ
本書は、単行本初収録となるピースを含め、資料的価値が極めて高いエピソードが並ぶ。以下に、本書の目次を列挙してみよう。
©️TEZUKA PRODUCTIONS
第6話「雪の夜ばなし」雑誌版+単行本版
第9話「ふたりの修二」前後編 雑誌版+単行本版(差分)
第19話「木の芽」雑誌版
第22話「血がとまらない」雑誌版+単行本版(差分)
第26話「パク船長」雑誌版+単行本版(差分)
第50話「めぐり会い」雑誌版
第72話「イレズミの男」雑誌版
第83話「地下水道」雑誌版+単行本版(差分)
第115話「不発弾」雑誌版
第171話「壁」雑誌版
第181話「通り魔」雑誌版
第195話「二人目がいた」雑誌版
第205話「海は恋のかおり」雑誌版
「笑い上戸」雑誌版
ブラック・ジャック アーカイヴス
解題:濱田髙志
「完成」を拒み続けた巨匠の、生々しい息遣い
これまで一般の読者が目にすることのできなかった「創造の軌跡」。それは、単なる「修正」の跡ではない。一人の天才が、己の表現と格闘し続けた記録そのものである。
©️TEZUKA PRODUCTIONS
『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ Second Operation』は、既存のファンには驚きを、新たな読者には手塚マンガの深淵を提示する一冊となるだろう。濱田髙志氏による解題も含め、まさに「永久保存版」と呼ぶにふさわしい内容だ。
なお、立東舎では、既刊として『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ』と『ブラック・ジャック ヒストリカル・カラー・ピーシズ』も発売中である。こちらも併せてチェックされたい。(文中敬称略)
【関連】「永遠の命」を描き切ろうとした手塚治虫『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ』に見る“迷い”と“苦悩”の欠片
【関連】手塚治虫「ブラック・ジャック」雑誌オリジナル版の鮮やかなカラー印刷から垣間見えた“本物の色”
『ブラック・ジャック ミッシング・ピーシズ Second Operation』
著者:手塚治虫
定価:5,500円(本体5,000円+税10%)
発売日:2026年2月20日
発行:立東舎/発売:発行:リットーミュージック
著者:手塚治虫
定価:6,600円(本体6,000円+税10%)
発売日:2024年11月15日
発行:立東舎/発売:発行:リットーミュージック
著者:手塚治虫
定価:4,950円(本体4,500円+税10%)
発売日:2023年11月20日
発行:立東舎/発売:発行:リットーミュージック
image by: ©️TEZUKA PRODUCTIONS