MAG2 NEWS MENU

国民の70%超が賛成。それでも同性婚を認めない後進国家ニッポン

先進各国で進む同性婚の法制化。しかし日本は国民の70%以上が同性婚に賛成しているにもかかわらず法制化は遅々として進まず、G7では我が国だけが認められていないのが現状です。アジアに目を向ければ台湾に続きタイでも実現化目前となっていますが、なぜ日本政府はこうも「及び腰」なのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では社会健康学者の河合さんが、10代のLGBTQの48.1%が過去1年に自殺念慮を経験したという調査結果を取り上げながら、政府はなぜ「変わらない選択をし続けるのか」を問うとともに、その選択をすることで誰が得をするのかという疑問をぶつけています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「平等」とは何か?

東南アジアで初となる同性婚の法制化が、間もなくタイで実現しそうです。その名も「平等婚」。婚姻を「男性と女性」の間と明記している現行法を「人と人」に変更し、「愛し合う2人に結婚を認める」ことに大きく前進することになりました。

海外からは「タイ=LGBTQに寛容な国」というイメージがありますが、差別や偏見が後をたたず、多くの人たちが生きづらさを抱えていました。そんな中で、タイに先駆け2017年に台湾がアジアで初めて同性婚を承認します。

そこで「タイも!あとに続け!」とタイ政府も同性パートナーの権利の保障に向けて動き出し、2018年12月には、同性パートナーシップ法案が承認されました。

しかし、その後の議論は進まず、同性婚は棚上げされた状態に。やっと昨年9月に発足したセター政権が、LGBTQなど性的少数者問題に積極的に取り組んだことで、同性婚への足取りが急ピッチで進んだのです。

これが「世界」です。世界は「変わるため」に動き続けています。すべての人が幸せになるために、変わることを決してあきらめません。

外国人と話をしたり、海外のニュース番組を見たり、実際に現地に足を踏み入れると、LGBTQはLGBTQとして、共に暮らす社会が実現していると実感するのです。

一方、日本では「選択的別姓」すら認めず、「LGBT法案」は「LGBT理解増進法」にされてしまうなど、「愛し合う2人に結婚を認める」など夢のまた夢。日本人の多くは「認めてあげたい」と思っているのに、国は一向に動きません。

例えば、昨年5月に共同通信が行なった調査では、70%超が「同性婚に賛成」と回答。同時期に朝日新聞が行なった調査では、選択的夫婦別姓に「賛成派」は60%で、反対派13%を大きく上回りました。自民支持層でも賛成派53%に対し、反対派はわずか17%です。

社会は「変わる準備」ができているのに、階層最上階の意思決定権を持つ人たちが「変わらない選択」をし続けている。しかも、その「変わらない選択」はどこを向いた末の選択なのか?変わらない選択をし続けることで、どこの、誰が、得をしてるのか?パーティ券問題、裏金問題、統一教会問題など、あれこれ長年表に出なかった問題にやっと、本当にやっとメスが入り始めたのに、誰も責任を取らない、誰も本当のことを言わない、ただただ「どうせみんな忘れちゃうからさ」と、国民をバカにし続けているのが、「世界」に置いてけぼりをくらっている、今の日本です。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

おかげで、G7で、同性婚が認められていないのは日本だけ。同性婚の合法化は01年オランダ、03年ベルギー、05年にスペインとカナダ、06年南アフリカ、09年スウェーデン、19年には台湾が続き、さらにはタイと、24年現在で世界32の国や地域で同性婚が正式に認められている、あるいは認められようとしているのに…。

もちろん同性婚が合法化したからといって、すべての人が暮らしやすい社会になるとは限りません。差別がゼロになることもないでしょう。それでも、大人たちが「愛し合う2人に結婚を認める」社会を作ろうと努力することは「未来の光」になると思うのです。それは今を生きる「若者」を照らす光でもあります。

10代のLGBTQを対象にした調査では、過去1年に48.1%が自殺念慮を経験したと回答し、以下の回答が寄せられました(NPO法人ReBit調べ)。

自認する性で生きられないことが死にたくなるくらい辛いことだと分かってほしい。何気ない言葉に沢山傷ついてるのを知ってほしい、気づいてほしい(15歳)

LGBTQの芸能人のことを「なにあれキモイ」と親が言っているのを見て、同じセクシャリティでは無いけれど、嫌だなあと思った(16歳)

親に「お前そっちじゃないよな」など探りを入れられる度に「そんなわけない」と嘘をついて笑うことが辛かった。家の中でさえ、自分が自分でいられないことが辛かった(18歳)

日本のLGBTQの割合は8.9%とされ、学校の場合、1クラスに2、3人当事者がいる計算になりますから、決して少数派ではありません。

…誰もが平等を望むのに、そもそも平等とは何か?平等な社会を実現するには何が必要なのでしょうか。

みなさまのご意見、お聞かせください。

【関連】ryuchellさんが浴びせられた「罵詈雑言」の卑劣。“自分らしく”も許されないのか?

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

image by : Shutterstock.com

初月無料購読ですぐ読める! 2月配信済みバックナンバー

※2024年2月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、2月分のメルマガがすべてすぐに届きます。
2024年2月配信分
  • 「平等」とは何か?ーーVol.361(2/14)
  • 健全な社会はどこへ?ーーVol.360(2/7)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2024年1月配信分
  • 「数字」が語る理不尽ーーVol.359(1/31)
  • 自然災害国ニッポンと超高齢社会ーーVol.358(1/24)
  • ノブレス・オブリージュなきニッポンのエリートーーVol.357(1/17)
  • 航空機の未来ーーVol.356(1/10)

2024年1月のバックナンバーを購入する

2023年12月配信分
  • 2023年末特別号ーーVol.355(12/27)
  • 聖職? 長時間労働でも生きがい?ーーVol.354(12/20)
  • “老後“の未来ーーVol.353(12/13)
  • “プロ“はいらない? いや、もういない。ーーVol.352(12/6)

2023年12月のバックナンバーを購入する

2023年11月配信分
  • なぜ、キレる?ーーVol.351(11/29)
  • 「人の顔」を忘れた介護政策ーーVol.350(11/22)
  • 「悪の構造」を放置するメディアの罪ーーVol.349(11/15)
  • プライドはカネ?ーーVol.348(11/8)
  • 空気に国境はないーーVol.347(11/1)

2023年11月のバックナンバーを購入する

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け