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満開の桜が呼び覚ましてくれる数々の“思い出”。元お天気お姉さんが「桜と日本人」の関係を考察する

古より日本人の目を楽しませ、心を癒やし続けてきた桜。今年も各地で満開の桜を楽しむ人々の姿が各メディアにより伝えられています。そんな「桜」を取り上げているのは、「ニュースステーション」などに出演していた気象予報士で健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、花見の起源やソメイヨシノをめぐる最新の研究結果を紹介するとともに、「桜と日本人の関係」を考察しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

桜と富士山と日本人

桜前線が一気に北上し、各地から「桜満開」の便りが届いています。桜って、本当に可愛い。「私を見て!」と言わんばかりに下向きに花を開く。東日本大震災の時には多くの人たちが「開いた桜」に癒され、元日に大震災に見舞われた石川県珠洲市でも、国道249号沿いの「谷崎(たんざき)の桜」が色づき始め、多くの人たちを勇気づけているそうです。

お花見の起源は諸説がありますが、奈良時代説が有力です。とはいえ当時は梅の花が主流で、桜を愛でるようになったのは平安時代に入ってからです。『源氏物語』にも貴族たちが桜の下で宴を開催している様子は記されていていますし、『古今和歌集』には桜を詠んだ歌がとても多く残されています。当時は貴族の遊びだったお花見が、庶民の行事になったのは江戸時代以降です。結構、最近なんですよね。

さて、そんな桜の代表格「ソメイヨシノ」が誕生したのは、江戸時代後期です。オオシマザクラとエドヒガンの園芸種との交配種で、種がないために「接ぎ木」で全国各地に広まりました。

最新の研究結果によると、全国のソメイヨシノは4つのグループ(4つの塩基配列)に分類され、祖先である「最初の一本」の枝に4つのグループの特徴の痕跡があると考えられているとのこと。つまり、4つの塩基配列を持つソメイヨシノを探し出せば、その木こそが“ソメイヨシノの祖先”=最初の一本かもしれない、のです。…ロマンを感じさせる研究成果です。

ただし、ソメイヨシノの寿命はあまり長くないともされているので(否定する説もあり)早いこと見つけないと、たどり着く前に“消されてしまう”かもしれません。

実は私のマンションの南側は桜に囲まれているのですが、倒木のリスクありとのことで数本が今季の満開を最後に伐採されてしまったのです。代わりに植えられるのが寿命が長いコマツオトメとジンダイアケボノです。同様の植え替えは全国各地で進められていて、『さくら名所100選』にもなっている、茨城県日立市の桜並木でも、植え替え計画が進められています。

さらには、特定外来生物の「クビアカツヤカミキリ(クビアカ)」による被害も報じられています。中国や朝鮮半島などに生息していたクビアカは、桜や梅、桃、柿などに産卵する習性があり、幼虫は数年かけて幹の中を食い荒らし、木を枯らします。

2012年に名古屋で被害が確認され、現在は13都府県に広がっているそうです。

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と、今回はいつもとは異なりやわらかネタでしたが、桜と富士山って、日本人のマインドの土台だと思うのです。日本人アイデンティの一部とでもいいましょうか。

毎年春がくれば桜は咲く。そのルーティン化した経験は、何重もの層になって心の奥底に蓄積されます。そこにはその年々の偶然の出会いや出来事があり、それぞれ異なるリズムを含んでいます。人はそれを「思い出」と呼ぶのでしょう。

何重もの層の記憶は、目で捉えた景色、その場の匂いや空気感、目の前にいる人の表情、自分の心の動きなど、複数のファクターで構成されています。懐かしくもあり、寂しくもあり、それでいて温かで。「ああ、今年も桜が咲いた」――と思い出をめぐるのです。

このルーティンは、「私」が考える以上に「私」を支え、「私」の価値観を形成します。大袈裟に思われるかもしませんが、人間は「思い出」なしには生きていけません。つい「新しい情報や出会い」ばかりを求めがちですが、思い出は人が人であることの証なのです。

さて、2024年春、あなたはどこで桜を見ましたか?桜を見て誰を思い出しましたか?

みなさまのご意見、感想、経験などお聞かせください。

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