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大企業が下請けに対して嫌がらせ。顧客からの迷惑行為だけにとどまらぬ「企業間カスハラ」の過酷な現実

社会問題化して久しいカスハラ。これまでは顧客からの迷惑行為が注目されていましたが、「企業間カスハラ」とも呼ぶべき事態も存在していることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、とある企業が取引先からのカスハラ被害を訴えた民事訴訟を取り上げ、その内容を紹介。さらにこれまで見過ごされてきたこのようなカスハラに対して、国から何らかのメスが入ることへの期待を綴っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:大きなものは強きもの?

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

顧客からだけでなく取引先からも。見過ごされてきた“企業間カスハラ”

「カスハラ」に関する報道が増えていますが、顧客企業から営業担当者がカスハラを受けたとして、提訴しました。

訴状によると、従業員2人が2023年3月に取引先企業の創立50周年を祝うために訪問した際、この企業の社長から2時間にわたり罵声を浴びせられたそうです。

2人のうち1人しか面談のアポイントをとっていなかったなど、ささいな内容から発展。怒鳴られた社員は抑うつ状態になったとして、1,100万円の損害賠償を求めています。

一方、顧客企業側は訴えに対し、「不合理な理由で罵声を浴びせたり侮辱はしてはいない」「その日は別の来客予定もあり2時間面談もしていない」「(訪問した社員は)以前からうつ病だったと話していた」などと主張。事実無根だとして、全面的に争う姿勢を示しています。

これまで問題になっていた多くのカスハラは、顧客からの迷惑行為でしたが、今後は企業間のカスハラにスポットが当たることになるかもしれません。

とりわけ「下請け企業」は厳しい立場を強いられてきました。納期の短縮や買い叩きなど、「できない?だったら他に頼むからいいよ」と圧力をかけられ、長時間労働・低賃金で疲弊する社員を守りきれず、自責の念をいだき、それでもやるしかない、と経営者たちは日々資金調達に奔走していました。

もちろんすべての中小企業=かわいそう というわけではありません。大企業以上に稼ぐ会社はあるし、早くからホワイト化を進めた健康職場もあります。

しかしながら、東京商工リサーチによると、2024年4月の「物価高」を起因とする倒産は58件(前年同月比16.0%増)で、4カ月連続で前年同月を上回り、負債総額も139億8,600万円(同54.2%増)に膨らみました。円安に伴う物価高で厳しくても価格転嫁が難しく、倒産を押し上げる可能性も高まっています。

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「もう、無理ですわ」零細企業経営者が吐露した厳しい現実

「昔はね、取引先がみんな家族みたいだった。わしらは何やかんや言っても職人です。自分たちのできることしかできない。それを大企業さんも分かっていて、サポートしてくれた。仕事を発注してくれる大企業のために、うちのような零細企業が独自の技術を生かして頑張った。みんなで作っている感じでね。家族みたいで楽しかった。でも、リーマンショックで大企業さんもそんな余裕がなくなったんでしょうなぁ。もう、無理ですわ。うちみたいな会社は生きていけません」

今から11年前、中小企業向けに講演会を全国各地で実施したときに、ある会場で出会った社長さんがこう話してくれました。

働く人の7割は中小企業の会社員なのに、中小企業の“体力の脆弱さ”は一向に解消されません。中小企業の厳しさを示す「数字」はたくさん報じられていますが、その裏には取引先企業の「カスハラ」に涙する社員の存在もあるのではないでしょうか。

何がなんでも賃上げをしてもらいたい政府は、中小の賃上げ促す価格転嫁「Gメン」を増員し、対応にあたっていますが、これまで見過ごされてきたカスハラにもメスが入ればいいと、心から願います。

みなさんのご意見、お聞かせください。お待ちしています。

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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