あなたは、台風が近づくと気分が沈むタイプ?それともアガるタイプ?悪天候で気圧が下がると、私たちの心身にはさまざまな「悪影響」が出てくるものです。たとえば「頭痛」はその代表的なものの1つ。ただし「恋の病」に関しては、悪い話ばかりではないのです。メルマガ『富田隆のお気楽心理学』の著者で心理学者の富田さんが、ストレスが興奮に、興奮が快楽になる「台風エッチ」について分かりやすく解説します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:台風とSEX
低気圧で「病気」の症状は悪化しますが…
台風が近づくにつれ、気圧も下がってきます。
人間は気象の影響を受けやすい動物なので、人によっては、低気圧になると、様々な健康上の「不調」が現れます。
たとえば、よく聞くのは、「頭痛」や「片頭痛」。それに、「関節痛」や「リュウマチ」の症状が悪化することもあるそうです。
もう少し深刻なものになると、「心臓病」への影響があります。低気圧の日には「心臓発作」のリスクが高まるので、命に関わります。
さらに、気圧の変化は「血圧」にも影響を与え、「高血圧」の人は要注意です。また、「喘息」や「呼吸器系の疾患」にも悪影響を与えます。
一般に、何か病気を抱えている人に、低気圧は悪影響を及ぼすようです。
また、健康な人でも、体内リズムが狂うことで「睡眠の質」が低下したり、幸せホルモンの「セロトニン」が低下することで「気分の落ち込み」や「疲労感」「倦怠感」を感じることがあります。
さらには、「免疫力」が低下して、風邪やインフルエンザに感染しやすくなる、といった研究もあります。
もちろん、こうした健康への影響には「個人差」がありますから、一概に、誰もが不安になる必要はないでしょう。
ただ、一般的に、台風などに因る気圧の低下は、健康にはマイナスの効果を及ぼすと考えても間違いはないのかもしれません。低気圧は「ストレス」の一種です。
image by: 4 PM production / Shutterstock.com
「恋の病」が悪化すると、逆に情熱が燃え上がる!
これだけ、健康にマイナスの影響を与えるのですから、気分も落ち込み、とても恋愛やSEXどころの話ではなくなりそうです。
ただ、低気圧が近付いてくると「土砂降りの雨」とか「嵐が吹き荒れる」といったドラマチックで「非日常」的な環境の変化が起こるのも確かです。
子供などは、こういう「非日常」が大好きで、妙にはしゃいだりします。
ですから、心理学的に見ると、「非日常性」は恋愛やSEXにとっての「ファシリテーター(facilitator 促進役)」なのです。
ですから、「雨」や「嵐」は多くの恋の歌に舞台を提供します。
たとえば、ジーン・ケリーが土砂降りの雨の中で歌って踊って滅茶苦茶はしゃぎ回る『Singin’ in the Rain(雨に唄えば)』はあまりにも有名です。
日本でも80年代になると、竹内まりやさんが『恋の嵐』という曲の中で、「頬を寄せて 強く抱いて」と甘く囁きかけます。
淡谷のり子さんの『雨のブルース』の時代(1937年)に比べれば、日本の女性も随分と積極的になりました。
そして、「二人を急かすように 降り続く雨の音」が聞こえる中で、竹内まりやさんは「胸の痛み 熱いキスで 忘れたい」と歌うのです。
Rain(雨)とPain(痛み)が重ね合わされているのは見事です。
さらに井上陽水ともなると、『傘がない』ので降っている雨に濡れながらも、「行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ」と歌います。
そして、挙句の果てに、「つめたい雨が 今日は心に浸みる 君のこと以外は考えられなくなる」と言う始末ですから、かなりの重症です。
「コンビニでビニール傘でも買えば?」と突っ込みを入れたくなるような歌詞ですが、オブセッシブ(obsessive 強迫観念的)な想いの強さは怖いくらいに伝わってきます。やっぱ、井上陽水は「アブナイ」から好きです。
image by: Lysenko Andrii / Shutterstock.com
それはともかく、このように、雨や低気圧で情熱が燃え上がるといった歌は、けっこう多いのです。
ですから、「低気圧ハイ」とでも言いたくなるような、感情の高まりは確かに存在しますし、そんな「ハイテンション」が恋につながったり、二人に最後の一線を飛び越えさせたりするのもまた事実なのです。
ストレスが興奮に、興奮が快楽になる「台風エッチ」
一方で、「一般的な傾向」として、低気圧が「心理的なストレス」となることもまた確かです。
前述のごとく、気圧の変動は体調に影響を与え、バランスを崩します。
たとえ健康な人でも、これがストレスとなり、場合によっては心理的緊張が高まり、不安感が強くなることもあるのです。
また、これも人によるのですが、気圧の低下が脳内のドーパミンやセロトニンといった情報伝達物質の代謝を妨げ、それにより、気分が落ち込んで、軽い鬱(うつ)のような状態になる人もいます。
このように、多くの人が疲労感や倦怠感を感じ、身体が重く感じられたり、片頭痛に悩まされたりするのですから、低気圧はほとんどの人にとって「心理的なストレス」を引き起こす原因となるのです。
しかし、ここが人間の面白い所なのですが、場合によっては、適度のストレスが「恋愛感情」や「性的欲求」のファシリテーターになるということも忘れてはいけません。
同じようなことは、ジェットコースターに乗ったり、スキーで滑降したりする時にも起こります。
もちろん、こうしたスリルが苦手な人にとってはジェットコースターであれスキーであれ、その種のスピード体験はただのストレス以外の何ものでもありません。「金払ってまで怖い思いする奴の気が知れない」というわけです。
しかし、こうしたスピードが大好きな人にとっては、その手のストレスはむしろ「快楽」の一種であり、これによって引き起こされた神経系全般の「興奮(活性化兆候)」は、容易に性的興奮に転換されるのです。
またまた登場「吊り橋効果」というわけです。恐怖を引き起こすストレスは、いくつかの条件さえ揃えば、性的欲求を高めます。
「台風エッチ」が上手い人と下手な人の違いって?
一般にはただのストレスとしてネガティブな影響をおよぼす「低気圧」ですが、いくつかの「条件」が揃うと、これが恋のファシリテーターとなり、興奮を引き起こし、性欲を高める刺激の役割を果たすのです。
その「条件」のひとつは、その人が誰かに「恋」をしていたり、誰かに「性的魅力」を感じていたりする、ということです。
こうした条件が整っていると、私たちの脳は、低気圧によるストレスを性的な興奮として「解釈」するのです。
これを補佐する「条件」として、その人の心理的な態度が「前向き」で「積極的」な状態にあるということがプラスに働きます。
恋を成就させたいとか、愛する人と結ばれたい、といった積極的で「目標指向的」な心の状態が、低気圧によるストレスをポジティブな興奮刺激に変えるのです。
そして、こうした積極的な心理的態度を整えるためには、自身の「欲望」や「意志」を明確に意識している必要があります。
そのためには、日頃から、自分の心に対して「正直」であるべきでしょう。
そうすれば、台風が近付いて来るにつれ、パートナーと情熱的に愛し合いたくなってくる自分に気が付くはずです。
これは、恋愛やSEXに限ったことではありません。
ある種の芸術家やクリエイターは、低気圧によって生じたストレスをポジティブに受け止め、自分の「感受性」を豊かにし、「創造性」を高めるための刺激へと転換して活用することができるのです。
こうした人々は、日頃から積極的で目標指向的な生き方を心掛けており、常に人生の意味を探究しています。
目標指向的であるということは、いつも、自身にとって大切な「価値」と向き合っているということでもあるのです。
ご利益宗教的で申し訳ないのですが、真善美などの価値を大切にしていて、目標指向的で積極的な生き方を実践している人は、それだけ辛酸を快楽に変える力を持っており、いわゆる幸運に恵まれるチャンスも自然に多くなる、と言えるでしょう。SEXだけの話ではないのです。
(メルマガ『富田隆のお気楽心理学』8月28日配信号より一部抜粋。他のコンテンツもお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)