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母親が出す「母乳」の成分は?これだけで生後数か月赤ちゃんが育つ“高脂質食”を現役医師が解説

母親が出す母乳だけで育つことのできる、生後まもなくの赤ちゃん。果たして母乳にはどのような栄養が含まれているのでしょうか。糖尿病専門医で自身も二型糖尿病である江部康二さんは、自身のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』で、母乳の成分について詳しく調べています。

母乳の成分

今回は、母乳とその成分について、考察してみます。

日本食品標準成分表2015(七訂)によれば、

人乳は100gで、65kcal、炭水化物が7.2g、利用可能炭水化物(単糖当量)6.7g、脂質が3.5gくらいです。

糖質が総カロリーの44.9%、脂質が総カロリーの48.46%です。

日本食品標準成分表には、具体的な記載はありませんが、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)は、乳糖および脂肪に次いでヒトの乳の3番目に豊富な固体成分を形成しています。

1デシリットル(dl)は100ml です。

血糖値が100mg/dlくらいと仮定すると循環血液量4000ml中に、ブドウ糖は合計で4gしかありません。

100g中に100mg(0.1g)のブドウ糖しか含まれていない血液から母乳(100g中に6.7gの糖質)を作るのですから、乳房内でかなり濃縮していることとなります。

『おっぱい先生の母乳育児「超」入門』 平田喜代美/著 東洋経済新報社 2010年 P96~98 「母乳育児で生まれるふたつの『愛情ホルモン』」に、

「赤ちゃんが唇と舌を使って乳頭に与えた刺激が、お母さんの脊髄を通って脳に伝わると、脳の脳下垂体前葉というところから、母乳をつくる『プロラクチン』という物質が分泌されます。このプロラクチンの作用によって、お母さんの乳房の中の毛細血管にたくさんの血液が流れ、その血液が母乳となって乳房の中に蓄えられます。このとき、約1ミリリットルの母乳をつくるのに、500ミリリットルの血液が乳房を通過するといわれています。」

と記載されています。

ということで、1mlの母乳をつくるのに、500mlの血液が必要なのですね。

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上記のように母乳には、糖質もかなり含まれていますが、それ以上の高脂質食でもありますね。

母乳が高脂質食なので、母乳育児中の乳児の血中ケトン体値は、成人基準値よりはかなり高値となります。

ヒトが吸収できる単糖には、ブドウ糖、果糖、ガラクトースがあります。

人乳あるいは哺乳類のお乳に、乳糖が含まれていることの意味は何か考えてみました。

乳糖は「ガラクトース+ブドウ糖」で構成されています。

エネルギー補給だけならブドウ糖だけでもいいようなものなのに、ガラクトースが必要なのには、理由があるようです。

乳糖が母乳の糖質の 80% 以上で、全エネルギーの 約38%を占めます。

乳糖以外には微量のグルコース、ガラクトース、種々のオリゴ糖などを含有しています。

ヒトミルクオリゴ糖(HMO)は、母乳で三番目に多い成分ですが、そのほとんどは口腔や上部消化管で分解されずに大腸まで到達し、ビフィズス菌など善玉腸内細菌の栄養源として利用されます。

善玉のビフィズス菌が栄養源を得れば、酢酸や酪酸といった短鎖脂肪酸を生成して、大腸粘膜のエネルギー源となり、また腸内を酸性に保つことで、腸内の悪玉の大腸菌群などが減少することが明らかとなっています。

ガラクトースで構成されるガラクトオリゴ糖も、同様に糞便中のビフィズス菌数増加や腸内細菌叢の改善と、これに伴う糞便中の酢酸濃度の上昇により腸内の酸性濃度を維持してくれます。

また、ガラクトースは、急速に発達する乳児の中枢神経系の完成に重要な役割を果たすとされています。

そしてガラクトースは自然免疫反応のブレーキ役を担っていますが、病原体に感染した時には、ガラクトース糖鎖の量が減少してブレーキが解除される仕組みになっています。

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image by: Shutterstock.com

江部康二この著者の記事一覧

(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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【著者】 江部康二 【月額】 ¥660/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火・金曜日

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