独立100年となる2025年の完全移転を目標として進められている、インドネシアの新首都建設プロジェクト。この計画への巨額投資を予定していたソフトバンクグループですが、3年前に孫正義氏が突如撤退を表明し大きな話題となりました。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では国際政治経済学者の浜田和幸さんが、同グループが首都移転構想から手を引いた裏事情を解説。さらにインドネシアから「裏切り者」呼ばわりをされた孫氏の奇妙な言い逃れを紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:孫正義氏から見限られたインドネシア:ロシアと中国を手玉に取る!?
孫正義氏から見限られたインドネシア:ロシアと中国を手玉に取る!?
ぶっちゃけ、8月17日、独立80周年を祝ったインドネシアの存在感が増しています。
東南アジア最大となる3億人もの人口を擁し、大きな経済市場が注目を集めているわけです。
日本のアニメ『ワンピース』が爆発的な人気を得ており、「独立記念日には国旗を掲げて祝おう」と呼びかけたプラボウォ大統領でしたが、SNS上では「ワンピース」の海賊旗を掲揚するのがトレンドになっています。
地元では「政府の汚職に対する不満の表れ」との受け止め方も出ているようです。
そんなインドネシアでは首都の移転計画が進められているのですが、工事の利権を巡る汚職問題も深刻化しています。
現在の首都ジャカルタが温暖化の影響で水没の危険に直面しているため、ウィドド前政権では東カリマンタン島に首都を移転する国家プロジェクトの推進を宣言しました。
総工費325億ドルの事業であり、内外から投資家や建設受注を求める企業が群がっています。実は、この事業に計画段階から深く関与してきたのがソフトバンク・グループ孫正義会長でした。
孫氏は得意の環境ビジョンを掲げ、「カーボン・ニュートラルを実現し、自然と共生する新たな都市造りにソフトバンクの経験と技術を投入したい」と息巻いていたものです。
ところが、3年前、突然、「インドネシアからは手を引く」と言い出しました。
この記事の著者・浜田和幸さんのメルマガ
これには当時のウィドド大統領も面食らったに違いありません。
なぜなら、この国家プロジェクトを担当するパンジャイタン大臣によれば、「ソフトバンクは首都移転計画に対して300億ドルから400億ドルを投資する」とされていたからです。
しかし、孫氏は現地をたびたび訪問して実態調査を行った結果、「実現の可能性は低い」と見切りを付けてしまいました。
というのも、インドネシアは世界第4位の人口大国で、資源も大量に眠っているのですが、経済や技術力が乏しく、孫氏に対しては「首都移転計画の実現のために相当額の投資」が求められていたのです。
利に敏い孫氏は当初、乗り気だったようですが、後から進出に名乗りを上げた中国やロシアの企業が相当な裏金をばら撒き、“美味しいとこ捕り”に走ってきたといいます。
結果的に、孫氏は「採算が合わない」と結論付けたのでしょう。
当然、インドネシアからは「裏切り行為」とそしられました。
しかし、孫氏は「自分は誤解されやすい。イエス・キリストがそうだったように」と奇妙な言い逃れをしています。
ソフトバンクとすれば、インドネシアの汚職体質は看過できないと判断したのかも知れません。
とはいえ、名誉回復を狙いインドネシアは大阪万博の「ナショナルデー」の場を活かし、「インドネシアから日本、そして世界へ」と銘打った、特産品のコーヒーを切り札にしたキャンペーンを展開しています。
ぶっちゃけ、どこまで逆転効果が得られるものか、孫氏ならずとも気になるところです。
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