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日本円で2千億円。そもそも「有人タクシー」でも低料金の中国でロボタクシーに100億元も巨額投資してモトは取れるのか?

中国の主要都市において目まぐるしいスピードで増え続ける自動運転タクシー。そんな隣国で7月、とある企業が発表したロボタクシー事業への巨額投資が大きな話題となっています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、日本円にして2,000億円もの大金を注ぎ込む決断を下した中国モビリティ企業の思惑を解説。回収に最低でも十数年を要す投資の「意義」を考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:広汽集団配車サービスがロボタクに2000億円投資、回収可能?

広汽集団配車サービスがロボタクに2,000億円投資、回収可能?

広東省広州市を拠点とするモビリティ企業「如祺出行(ON TIME)」は2025年7月23日、次世代型モビリティ戦略「ROBOTAXI+」の発表会を開催した。

同社は今後100億元(約2,000億円)規模の投資を自動運転配車事業に注ぐことを明らかにした。

構想では、100の核心都市にわたり、年間10万台規模のロボタク運行能力を構築し、三層構造の運営・整備ネットワークを全国に展開するとしている。

しかし、中国では配車ドライバーは貴重な就業機会であり、ここを極端に削減することは政府が許さない。

また、中国では有人の配車料金でもそもそも安価で、ロボタクとなれば、基本的にその料金よりも下げなければならない。

安価な料金で事業性が見込めるのか、これほどの巨額投資に対して、どれほどの回収スキームを見込んでいるのかは、今回の発表会では見えてこなかった。

壮大な計画なのに実績は…

一見すると、中国におけるスマートモビリティの未来をけん引する意欲的な取り組みに映るが、その実情はやや異なるようだ。

今回の発表内容には「巨大なスケール感」と「未来的なビジョン」が前面に押し出されている。

その一方で、実績として挙げられているのは2025年6月時点で300台あまりのロボタク運行と、累計走行距離400万kmという比較的控えめな数字にとどまる。

つまり、事業性という観点からは、まだ大規模投資を裏付けるほどの市場実績が伴っていないのが実態である。

商業モデルより重要なのは…

また、発表会では「安全運営」「高効率管理」といった抽象的なキーワードが並び、商業モデルや収益計画の具体性は乏しい。

現場発言でも、CEOの蒋華氏は「ロボタク産業は政策と規制を伴う発展が必要」と強調し、COOの韓鋒氏も「監督機関との連携が極めて重要」と述べている。

これらの発言は、同社のロボタク戦略が政府支援や政策的サポートを前提に構築されていることを暗に示している。

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計画の企業側の事情

では、なぜこのような巨額投資を打ち出すのか。その背景には、いくつかの“企業側の事情”が読み取れる。

第一に、ON TIMEの親会社は国有自動車大手の広汽集団(GAC)であり、同社グループとしての「スマート交通への取り組み姿勢」をアピールすることが戦略的に求められている。

広汽AIONや広汽研究院などと連携し、グループ横断での未来技術開発に取り組んでいる姿勢を示すことが、対外的な信頼性につながる。

第二に、政策や資本市場に対するIR(インベスター・リレーションズ)効果を狙ったものと考えられる。

中国では、自動運転・スマートシティ関連分野への国家支援が活発であり、地方政府による用地提供や補助金、優遇規制の獲得には、ある程度の“ビジョン演出”が必要となる。

ロボタクは中国で引き続き社会的インパクトが大きく、話題性もあるため、実態以上のスケールを提示することで、政府・市場両面からの注目と支援を引き寄せる狙いが透けて見える。

投資回収に途方もない年月

もちろん、全く実のない話というわけではない。

ON TIMEはこれまで広州・深セン・珠海などで配車サービスを展開しており、公共交通との連携や地域に根ざした運用経験も持つ。

だが、ロボタクというハードかつ規制依存型の事業において、単体で2,000億円の投資を回収できる見通しは極めて立ちにくい。

仮に1日1台あたり5回の配車で、年間10万台が安定稼働したとしても、粗利ベースでの年間収益はせいぜい600億円程度が上限と見られる。

最終損益で黒字転換して、そこから累損解消、純粋な黒字による投資回収には最低でも十数年以上を要する。

“やっている感”と未来感

結論として、今回の「ROBOTAXI+」戦略発表は、将来的な自動運転社会への布石というよりも、“やっている感”と未来感を演出したPR戦略とみなすのが妥当だろう。

広汽グループのスマート化・電動化戦略の一部として、政府向けの協調姿勢を見せつつ、政策資源や補助金、技術ブランドの確立につなげる──そんな「IRとしての意義」に主軸がある。

むしろ、このプロジェクトが実質的にどの程度の利用者に届き、どの段階で収益化の道筋を示せるかは、これから数年の政策動向や業界全体の構造変化に大きく左右されることになる。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/bcCCB5BzAsggwo8GZxLHaw

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image by: 中少, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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