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高市早苗「馬車馬」「ワークバランス放棄」発言に批判殺到。労働者を殺す“科学も歴史も無視”の時代錯誤な「働かせ方改悪」

4日の総裁選に勝利し、投開票会場の壇上で新総裁としてスピーチを行った高市早苗氏。その内容が大きな議論を呼んでいます。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、高市氏の「馬車馬」「ワークバランス破棄」発言の危うさを指摘。さらにその裏に隠された政府の本音を推測しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ワークライフバランスと働きたい改革

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ワークライフバランスと働きたい改革

「全員に馬車馬のように働いてもらう。私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」――。

過労死弁護団全国連絡会議は6日、自民党の新総裁の高市早苗氏のこの発言に「強く抗議し、撤回を求める」などとする声明を出しました。

声明では「この発言は、公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながり、古くからの精神主義を復活させるものである」と指摘。2014年に過労自殺した総務省のキャリア官僚男性の遺族も「大変憤慨している。発言を深く反省し、家族を亡くした過労死ご遺族に謝っていただきたい」とするとコメント。

声明には男性の当時の状況が書かれた記事が添付され、男性の時間外労働が100時間越えが常態化し、178時間に達したこともあったと記されていました。

高市さんの発言後、石破さんが「全身全霊で国家国民のために、次の時代のために、決意の表れだと思います」とフォローしていましたし、総裁選翌日、取材にきた記者団に「みなさん休日ですから休んで!」などと必死に声をかけていましたが、時すでに遅し。しかも、安倍政権が進めた「働き方改革」の否定ですから、高市さんはきちんと声明に答えた方がいいと思います。

しかし一方で、「ワークライフバランス捨てる」は高市さんの発言であって高市さんだけの発言ではない。自民党が参議院選で掲げた「働きたい改革」そのものです。

「人手不足対策のため、働く人がより挑戦できるため、意欲と能力を最大限活かす社会の実現のため、働きたい改革を推進する!」と自民党は働きたい改革の推進を掲げました。

結局、第1次安倍政権の時から、要件を変え、名前を変え、手を尽くしてきた「ホワイトカラーエグゼンプション」をなんとか復活させたい、が本音なのでしょう。

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みなさん、もう忘れてしまったと思いますが、2007年に「ホワイトカラーエグゼンプション」が取り沙汰され、政府から聞こえてきたのは耳を疑うような発言のオンパレードでした。

ときの総理は「残業代が出なければ、早く帰宅する」などと呑気な発言をし、ときの厚労大臣は「家族だんらん法」と言い換えを指示し、某女性起業家は「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言っていない。あくまでも自己管理。つらいなら、休みたいと主張すればいい」などと断じたのです。

おそらく階層最上階の人たちは、「長時間労働がなぜ、いけないのか?」が理解できていないのでしょう。人間には「働きすぎると働き過ぎを自覚できなくなる」という心理があると共に、「脳の『疲れの見張り番センサー』が機能しなくなるという、科学的根拠が示されているのに。

いわば感情論で政策を進めようとするのは、政治家たちが掲げる「国民の幸せ」「国民の希望」の否定でしかない。

そして、何よりも「政治家」がワークライフバランスを捨てれば、その皺寄せがダイレクトに向かうのが官僚たちの負担です。

人事院の最新調査で、一部の官僚たちが過労死ラインを超える月100時間以上の残業を強いられている状況も明らかになっています。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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