浮気調査を多く取り扱う現役探偵の後藤啓佑さんは、浮気調査を行って証拠をとった後の依頼者の選択を見守ることになります。後藤さんは自身のメルマガ『探偵の視点』で、離婚に至らない依頼者さんの考え方を語り、関係修復の現実と向き合い方について考えています。
壊れた信頼は戻せるか?
浮気調査を行い、証拠を取り、離婚に至る──。
探偵事務所に来られる多くのお客様は、そのような道を選ばれます。
しかし中には、「浮気の証拠は取ったけれど、離婚はしない」という選択をする方もいらっしゃいます。
そういったお客様は「信頼を取り戻したい」と言うことが多い。
ただ、実際のところ“信頼関係を元に戻す”というのは非常に難しい。
一番のネックになるのは──「相手が浮気をしたという事実が消えないこと」です。
これはつまり、二人の間に“平等な関係”を築きにくい状態になっている、ということでもあります。
依頼者さんとしては、「もう浮気を許すから、元の関係に戻りたい」という気持ちがあるのだと思います。
ですが、相手の頭の中ではさまざまな感情が渦巻いています。
例えば──本当に申し訳ないという気持ちから、関係の修復に真剣に向き合おうとする人。
こういった方は、自分が悪いという自覚が強いため、しばらくの間、相手を優先し続ける傾向があります。
数ヶ月、あるいは数年単位で「相手を立てる」関係が続くと、それはやがて“平等”ではなくなっていきます。結果として、どこかでほころびが生じてしまう。
この記事の著者・後藤啓佑さんのメルマガ
一方で、浮気をした自分を100%悪いとは思っていない人もいます。
中には──「コソコソ自分を調べやがって」という反発心を持ってしまう人も。
この場合、相手に対して「疑っているんじゃないか」「監視されているのではないか」と感じながら接するため、やはり以前のような関係に戻ることは難しくなります。
では、どうすればいいのでしょうか。
個人的には、「“元の関係に戻す”のではなく、“新しい関係を作る”」という視点に切り替えることをおすすめしています。
浮気をしたパートナーと、浮気によって傷ついたパートナー。
この二人の関係を“マイナスからゼロに戻す”のではなく、「ゼロから新しい関係を構築する」という感覚です。
浮気の事実を完全に忘れることは難しいでしょう。
しかし、相談者さん側は「忘れる努力」をする。
そしてパートナー側も、「罪滅ぼしのために優しくする」のではなく、“これから新しく関係を築く人に対して優しくする”という姿勢に切り替える。
重要なのは、どちらかが“あの時あなたが悪かった”という武器を握り続けないことです。
その武器がある限り、二人の関係は平等ではなくなります。
壊れた信頼を“元に戻す”のではなく、新しい信頼を一から作り直す。
この小さな意識の転換が、二人の関係を再生へと導く第一歩になるのではないでしょうか。
この記事の著者・後藤啓佑さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com