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北朝鮮にも流されていた米ラジオ放送が全面停止。静かに進む「情報封鎖」の勝者は誰なのか?

米国がラジオ・フリー・アジア(RFA)やボイス・オブ・アメリカ(VOA)の北朝鮮への放送を停止し、さらに韓国までもが半世紀続いた自国の対北ラジオを全面的に中止しました。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、韓国・北朝鮮情勢に詳しい宮塚コリア研究所の代表である宮塚利雄さんが、その詳細とともに情報を絶つことの危機の深刻さを語っています。

アメリカの対北ラジオ放送の中止は金正恩政権情報線の勝利?

産経新聞の2025年11月19日号に「途絶えた対北ラジオ放送」という、特派員によるコラム記事が出ていた。「先日、米首都ワシントンのシンクタンクが拓いたイベントで、二人の若い女性の脱北者による講演を聞いた。その一人、姜ギュリさんは近年、北朝鮮から船で脱出した。暗闇の海を航行中、北当局の船に見つかって銃撃を受けながら、かろうじて韓国領海にたどり着いた壮絶な経験を語った。

ただ、イベントでは懸念すべき現状も耳にした。トランプ米政権が海外事業の削減・撤廃を進める中、北朝鮮内にも流された米ラジオ・ニュース「ラジオ・フリー・アジア」や「ボイス・オブ・アメリカ」の放送が停止されたというのだ」。

アメリカのラジオの停止については、先月の10月31日に都内で開かれた韓国の一般財団法人・北朝鮮発展研究所主催の国際セミナーで、同研究所のチーム長であるキョン・ドッキョン氏の「トランプ第二期政権以降の対北朝鮮活動の現状──民間対北ラジオを中心に」という演題の講演で、アメリカの対北朝鮮放送の中止の経緯などを詳しく語ってくれたので、産経の特派員記事を見て改めて、事の重大さを再確認した。

同記事は「米ラジオの停止は、北朝鮮で海外の情報を入手する手段が制約されることになり、金正恩指導部にとって『情報戦での大勝利になった』(米スティムソン・センターのウイリアムス上席研究員)と指摘される」とも報じている。北朝鮮の国民にとって、海外からの米などの食糧支援を受けることのありがたさもさることながら、海外からのラジオ・テレビ放送などによる情報の流入は、精神的な「心の糧」とも言えるもので、情報の重みを他の国の誰よりも感じているはずだ。

その心の糧となるラジオ・テレビ放送の中止は大げさではなく「生きる希望を奪われることにも等しい」のである。体制護持のために海外からの情報の流入に厳しく対処している金正恩政権にとっては、「情報戦の大勝利」かもしれないが、北朝鮮の国民には「死刑」を科せられたも同然で、金正恩政権の情報戦での大勝利などと優雅な評価をしている場合ではないのである。

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北朝鮮へのラジオ・テレビ放送の中止はアメリカだけではなく、なんと、同族の韓国がすでに行っている。南北統一を国是としている韓国の李在明政権は、今年7月に韓国の国家情報院が北朝鮮向けのラジオやテレビの中止を断行した。国家情報院は李鐘?院長の指示により、実質的な検討を経て、7月5日から15日にかけてすべての北朝鮮向け放送の創出を中止した。中止になった北朝鮮向けラジオ放送の周波数は5つ。「人民の声」「希望のこだま」「自由FM」「自由コリア放送」と北朝鮮向けのテレビ放送一つの計6つ。

これらの放送は中央情報部時代(現・国家情報院)の1973年に始まって以来、52年ぶりに全面的に送出禁止である。韓国に脱出して来た多くの人が「南朝鮮の放送を傍受して脱北を決意した」と語っている。前出の姜さんは「ひそかに入手したテレビで韓国ドラマを見て、別世界へのあこがれを抱いて脱出を決意した」という。死の危険を冒してまでも脱出を決意させた、情報の重みを痛感させる。果たして韓国の李在明政権はいつまで「対北放送」の停止を続けるのか。「金の亡者・トランプ大統領」も金正恩総書記との対話の再開を言いふらしているが、独裁者金正恩との再会よりも、一日も早く「対北放送」を再開させるべきではないか。

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

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