ビジネスの現場では、信頼していた相手が実は「偽物」だったというケースが、決して珍しくありません。弁護士だと思っていた人物が無資格者だった、輝かしい経歴が丸ごと嘘だった——そうした資格詐称・経歴詐称の被害は、肩書きを「確認しなかった」という一点から始まります。では、なぜ賢明な経営者たちがこの落とし穴にはまるのか。今回のメルマガ『探偵の視点』では、著者の現役探偵の後藤啓佑さんが、実際の事例をもとにそのリスクと対策をお伝えします。
付き合う相手を見極めろ
様々なクライアントや経営者の方と話していると、事業を進める中で「危険な相手と組んでしまっていた」というケースの話題は、決して珍しくありません。
先日お会いしたある経営者の話。 1年間、一緒にプロジェクトを進めてきた弁護士と名乗る男性がいました。 名目は「会社の法務部門を担当」。 信頼して、力を合わせてやってきたそうです。
ところがある日、突然その男性と連絡が取れなくなった。 事務所に電話しても出ない。メールも返ってこない。
嫌な感覚がよぎり、改めてその人物を調べてみると 弁護士ではなかった。弁護士登録がされていない人物だったのです。
幸い大きな損失は出なかったものの、あと一歩で重大なトラブルに発展してもおかしくない案件でした。
肩書きが「確認」という発想を奪う
弁護士だと思っていた人物が実は弁護士ではなかった。 公認会計士だと思っていた人が、実は資格を持っていなかった。
こうしたケースは、思っている以上にあります。
本来であれば、調べればすぐ分かることです。 しかし不思議なことに、「そのクラスの肩書きになると調べない」という現象が起きます。
中途採用で年収800万〜1000万円の人材を雇う場合は、バックグラウンドチェックをする企業も多いでしょう。 しかし「一緒にプロジェクトを進める弁護士」や「外部パートナーの会計士」に対しては、意外と確認をしない。
肩書きが安心材料になり、確認という発想が抜け落ちるのです。
今回のケースは資格詐称でしたが、 ・大手企業での勤務歴 ・役職歴 ・過去の実績 こういった経歴詐称も珍しくありません。
調査が「必須」になる場面とは
正直に言えば、僕自身もプロジェクト単位で関わる相手すべての経歴をエビデンス付きで調べているわけではありません。
しかし、 株が絡む 多額の資金が動く 会社の信用に直結するポジション
このレベルになるなら、調査は必須です。
本名で検索するだけでも、過去のトラブルや逮捕歴が出てくるケースはあります。
さらに詳細に確認する必要があれば、我々のような探偵会社がバックグラウンド調査を行うことも可能です。費用は10万円以下で収まることが多い。
数百万、数千万の損失、そして何より信用の失墜を考えれば、安い投資と言えるでしょう。
実際、被害に遭いかけたその経営者の方は、以後、第三者と組む際には必ず事前調査を行うようになりました。
詐称する人間は、また繰り返す
資格や経歴を詐称する人間は、ひとつの会社を去っても、また別の会社で同じことを繰り返します。
そういう人間のメンタルは、ある意味で化け物です。
こちらが「そんな人はいないだろう」と思っている前提を、簡単に越えてきます。
だからこそ、 肩書きで信用しない 実績で盲信しない 必要な場面では必ず確認する
この姿勢が重要です。
付き合う相手を見極めること。 それもまた、経営の一部であり、リスク管理の1つです。
そういう人間が現実に存在するということだけでも、頭の片隅に置いておくといいかもしれません!
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