過去に発生したいじめ重大事態への問題を教訓に、第三者機関を常設化した静岡県湖西市。しかしながら同市では、その「教訓」が十分に生かされているとは言い難い事態がまたも生じています。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、新たに発生した重大事態と湖西市教委の対応を検証。さらに開示請求で判明した第三者委員会の実態を取り上げ、その独立性や第三者性に強い疑問を呈しています。
※ 本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:静岡県湖西市で新たな重大事態いじめ発生、そしてわかったトンデモ百景
静岡県湖西市で新たな重大事態いじめ発生、そしてわかったトンデモ百景
「第三者を入れる方がベターだと認識はしていた」
静岡県湖西市の教育委員会は、市立小学校で起きたいじめ重大事態の調査について、こう説明している。
「第三者を入れる方がベターだと認識はしていたが、児童への早期対応を重視し迅速に調査するための判断だった」
被害を受けたのは、この小学校の6年生の児童である。同級生からの暴言などのいじめを受け、頭痛や腹痛、吐き気の症状が現れ、適応障害と診断された。湖西市教育委員会は2025年7月24日、この事案をいじめ防止対策推進法上の重大事態と認定した。
しかも、いじめにより心身に重大な被害が生じた疑い(1号)と、相当の期間の欠席を余儀なくされている疑い(2号)の双方に該当する、併発事案である。
ところが、調査は教職員や学校担当のカウンセラーらでつくる校内組織で当初始められた。当然、第三者は加わっていない。
しかも湖西市には、2019年の中学校での重大事態を機に設けられ、2024年2月に調査の迅速化のため常設化されたと報じられている第三者機関「いじめ問題調査委員会」があったが、過去の反省は生かされずに、せっかく作った調査委員会は、使われなかったのである。
保護者は、そもそも学校の対応にも大いに問題があったのに、第三者のいない学校主体の調査が行われる以外にもいじめ防止対策推進法を無視した対応が行われていることなど、不信感を訴えた。
湖西市教育委員会が第三者委員会の調査への切り替えを決めたのは、認定から4か月以上が過ぎた2025年12月であった。松山淳教育長は、12月23日の記者会見で、「当初から第三者を入れる姿勢も大事だった」と述べた。
あの湖西市にてまた新たな重大事態いじめが発生し、さらに、再び大きな不手際…一体どういうことなのか?
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事件の概要
被害を受けた児童は、小学校の低学年のころから加害児童に一方的な暴言を受けてトラブルになっていた。被害保護者の記録によれば、小学2年生の頃から被害は始まっていた。そして、徐々にエスカレートしていき、5~6年生のころに暴言などのいじめが悪化したと訴えた。結果として、頭痛、腹痛、吐き気などの症状が現れて適応障害と診断され、欠席や保健室登校が続いた。
いじめ防止対策推進法は、重大事態を次の2つに分けている(第28条第1項)。1号は、いじめにより生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。2号は、いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるときである。
本件は、この1号と2号の双方に当たると認定された。認定の根拠は、「適応障害」の診断書が出たことと、6月中旬から保健室登校が続いたことである。
認定後の調査は、学校主体で始まった。
学校主体とは、教職員と学校担当のカウンセラーらによる校内組織である。保護者は、学校側が事前に示した聞き取りが一部行われなかったこと、加害児童が被害児童へ陰口をすることも続いたことを挙げて、不信感を訴え、第三者委員会による調査を求めた。
市教委は12月、第三者委員会の調査に切り替えると決めた。今後は、市教委が設置している「いじめ問題調査委員会」が調査を担うとしたが、実はこの委員会は、この段階では、構成するメンバーは非公開であったのだ。
■時系列
- 小学校の低学年のころ:同級生とのトラブルが相次ぐ。
- 5~6年生のころ:暴言などのいじめが悪化したと、児童が訴える。
- 2025年6月中旬:保健室登校が続くようになる。
- 2025年7月24日:市教委が、1号かつ2号の重大事態と認定する。
- 2025年8月(9月とする報道もある):教職員や学校担当のカウンセラーらによる校内組織で、調査が始まる。第三者は加わらない。
- 2025年8月15日:市教委が、地方公共団体の長等へ、重大事態の発生を報告する(1回目)。認定から22日後である。
- 2025年12月3日:同じく、長等への報告を行う(2回目)。
- 2025年12月:保護者が不信感を訴える。市教委が、第三者委員会の調査への切り替えを決める。第三者委員会の調査についての、1回目の事前説明が行われる。
- 2025年12月23日:松山淳教育長が記者会見を行い、「当初から第三者を入れる姿勢も大事だった」と述べる。
- 2026年2月:学識経験者の委員を、職能団体等の推薦を経た大学教授に変更する(2月2日に推薦を依頼、5日に推薦)。
- 2026年2月25日:2回目の事前説明が行われる。委員は4人となる。調査は3月ごろに始める予定で、1年以上かかる可能性があると説明される。
認定から、すでに1年以上経っているが、第三者委員会の調査は開始されていない。
さて、ここで、これまでずっと追っている湖西市重大事態いじめ隠ぺい事件での流れを示してみよう。
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2019年の中学校事案(はじまりの事件)
湖西市では、2019年にも、市立中学校で重大事態が起きている。卓球部での集団無視をきっかけに、当時中学2年の女子生徒が不登校になった事案である。
保護者の申立てを受けて、市は2021年8月に「いじめ問題調査委員会規則」を施行し、11月に第1回の委員会が開かれた。委員会は2023年5月11日に、20回目の会議で報告書をまとめ、教育長に答申した。報告書は、いじめに該当する行為があったと認め、学校と市教委の対応の遅れを指摘した。
その後、保護者は調査の過程を問題にして、第三者による検証委員会の設置を求めた。前市長は2023年12月に設置を決め、交渉が進められたが、2025年8月14日、新市長は、検証委員会も再調査も行わないと保護者に通告した。尚、再調査は行わないことは、ずっと以前から決められていたと打ち明けたのだ。自治体が市民と約束し、報道にも公言したことが、一方的に破られるという前代未聞な約束破りが起きたのである。
一方で、2024年2月の常設化は、この事案を受けた対応と報じられている。常設化の目的に照らせば、今回の小学校事案は、その委員会が使われるはずの事案だった。
なぜ、常設の第三者機関がありながら、調査は校内で始められたのだろうか。
理由は至極単純である。湖西市では、新たないじめ対策を開始するために大幅に条例などを変更させている。その仕組みを紐解けば、湖西市教育委員会は、学校が個別に行う調査を第三者委員会扱いにする「学校主体調査」か、一応の非公開の第三者が問題を調査する「常設の第三者委員会(いじめ問題調査委員会)」か、を恣意的に決められることになっている。
つまり、今回の小学校事案で学校主体調査が行われたのは、湖西市教育委員会の判断ミスに他ならなかったということだ。
ところが、この第三者委員会、蓋を開けたら驚愕に値する問題が噴出したのである。
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変わっていない自称第三者委員会
はじまりの事件を途中からであるが支援に当たった私は、はじまりの事件についての対応をしたわけだから当然、その第三者委員会の対応などを深く知っている。
当時の文科省のガイドラインを無視し、事前に行わなければならなかった重要六項目の説明を全て省き、半ば見切り発車で、第三者委員会を発足し調査を進めた。また、被害側が入手した重要証拠を取り上げず、検討すらせずに、重要証明を回避するばかりではなく、調査報告書の説明と被害保護者を会議室に呼び出し、騙し討ち的に答申を行って、終了させてしまったのである。
私自身も他の自治体や私学で第三者委員会の委員経験があり、設置の支援やオブザーバーとしての参加などをしており、現在も継続的に第三者委員会の調査審議に加わっている自治体もあるが、事前の重要六項目説明をしていない自治体はあり得ないし、していない段階で調査を進めることはできない。
もしも、自治体の教育委員会がこれを怠っていることを知れば、至急行うように委員として申入れをするのは当然であるし、委員としても、今度は被害保護者や当事者性のある関係者には、重要六項目説明を行うのは基本である。
一般的には保険でも賃貸物件でも重要事項説明はある。探偵業ももちろんあって、これを怠れば刑罰対象になることもある。ネットの通販でも特商法の記載は必須だ。予め目的やルールを示す、当然、いじめ問題でも法に定められてこうしたルールは存在する。
つまりは、この基本的なルールを無視することは、公の立場になれば絶対にあり得ないのである。
つまり、これを行っていないことを知っている状態で、そのまま進め、さらに、自らの説明をも省略した委員というところにおいては、もはやあり得ないのである。それは、どんな資格を持っていても専門書を書いていても、認められない。
一方で、湖西市教育委員会は、公に、重要事項の説明は行っているというのだが、これはその理由がお粗末で、事前六項目にするものを、一項目ずつ、別の時期に点々と行い、調査開始までにすべて行っていないのだ。嘘も方便とは言うが、嘘は泥棒のはじまりともいう。いわゆる権力の無駄使いとも言えよう。
さて、前提が長くなってしまったが、この「いじめ問題調査委員会」は構成メンバーが非公開で、マスメディアの取材にも頑として明かされることは無かった。
そうして、初お披露目となったわけだが…従前の委員会メンバーと同じメンバーであったのである。今回の委員については、1名明らかな利害関係があると判断されて変更となっている。
しかしだ、湖西市教育委員会がいう委員の中立公平の根拠は、職能団体の推薦状だという。つまり、弁護士さんなら弁護士会、医師なら医師会などが発行する推薦状があるから大丈夫なんだということなのだが、しかし、時と場合によっては、これは違うのだ。
文科省の令和6年改悪ガイドラインには、こうある。
職能団体等からの推薦は、公平・中立に行われるものであり、職能団体等からの推薦を経て、調査組織に加わる者については第三者性が確保されていると考えられる。ただし、推薦のあった者が当該重大事態の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有していないか調査主体においても確認が必要である。
これを多くの教育委員会が悪用してきた。そもそも、自治体の第三者委員会の報酬は業界の相場からすれば10分の1のレベル、責任は圧倒的に重く、訴訟を提起される恐れもあるわけだから、好んで推薦を受ける専門家はいない。むしろ、避けたいものなのだ。ある職能団体では、手を挙げれば推薦状は受けられる状態であるという。つまり、その推薦状自体を担保とするのは、実態とは乖離する部分がある。
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それだけではない。
このガイドラインの一文は、常設の委員についてのものではなく、個別事件で設置される第三者委員会の委員の推薦状について主に言及したものである。
常設では、予め、どの当事者が調査対象となるのかは不明であるから、各事件との第三者性があるかということは求められない。特に地方で親戚縁者のみならず、人と人との関係が深い地域では、いつ友人のこどもが調査対象となるかもわからないのだ。
つまり、常設委員会の推薦状というものは、職能団体においては、確実な予知能力があるわけではないから、その分野の専門性や実績がありますという証明にしかならないのである。
つまり、文科省のガイドラインの一節は、大いに悪用されているというのは、本来は個別の事件において推薦状が出る場合は、職能団体や大学、学会に対して、直接の人間関係又は特別の利害関係がない公平・中立的な専門家の推薦を依頼し、任命することが考えられるから、大丈夫だよねということであって、常設の委員についての事ではないということであるのに、全てが適用されるとなってしまっているのだ。
これでは、職能団には予知能力があるのだと文科省が認めたということになるし、矛盾と曲解を指摘しても、多くの教育委員会担当者は、「だって、文科省が言ってるもん!」すねるわけだ。
結果としてガイドライン改悪変更の令和6年8月以降は、ガイドラインを曲解して、子どもでもわかる解釈を捻じ曲げてしまうという不当委員会や隠ぺい促進委員会がやたらと設置されてしまったのだ。
我々支援団体や被害者の会などでは、令和6年8月以降から現在までを悪夢の期間と呼んでいる。
さらに、その職能団体の推薦状は被害者側には明かされていなかった。もしも知りたいのであれば、開示請求をしろというのが湖西市教育委員会の回答であった。
だから、開示請求を数日後のうちに行って、これを入手したのだが、これがまた酷いのだ。
武士の情けで名前や職業は、明かしはしないが、日付だけ見てみよう。
- 常設いじめ問題調査委員Aさん 令和5年5月12日 推薦状を受けた日
- 常設いじめ問題調査委員Bさん 令和5年6月22日 推薦状を受けた日
- 常設いじめ問題調査委員Cさん 令和5年4月25日 推薦状を受けた日
- 常設いじめ問題調査委員Dさん 令和8年2月5日 推薦状を受けた日
入れ替えがあったDさん以外は、全て令和5年の推薦状であり、改めて推薦状を取っているものではないわけだ。
時間というものは人を変えたり、状況を変えてしまったりする。再任の際に改めて、推薦状を取るなどしないということは、なかなか怖い手続きではないだろうか。
第三者委員会というものは、特別な権限(処分権とかはない)は持たないが、事案を調査し、被害を認定したり、因果関係を認めたりする。主な役割は再発防止であるが、その関係から自治体や教育委員会の不正的対応の是正を提言することもある。つまりジャッジする機能を持つ。
こうした役割を持つ職種は、ほぼ例外なく必ず定期的な転属転勤が存在する。警察官や検察官、裁判官、教師も同様で公立教員は定期的に配置が換わるのだ。教師については、学校教育法などで懲戒権を持つなどがあるからであろう。
これは、癒着があると大変なことになるからであり、人同士の関係が長くなれば、それなりに情もわくからであろう。
特に、第三者委員会の提言や調査が信頼に足る事となる担保は、独立性と第三者性であり、それがあるからこそ、中立公平かつ公正であると言えるわけだ。
ちなみに、本件の第三者委員会の調査対象には、学校のみならず、湖西市教育委員会、新たにできた湖西市いじめ防止対策室がある。本当に大丈夫なの?と思うのは私だけだろうか?
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迅速では断じてない
湖西市教育委員会がいじめ問題調査委員会や市長直下の未だ非公開組織「いじめ問題専門員会」を常設の第三者委員会として、血税の予算を割いて設置したのは、過去の手痛い失敗を踏まえ(隠ぺい事件と言われてしまったはじまりの事件)このようなことが起きないように、迅速な調査を行い、対応をしていくということであった。
これについては、公文書など各書面でも確認できるし、新聞記事でも確認ができる。
しかし、今回取り上げた2025年発生いじめ重大事件では、湖西市教育委員会が司令塔として誤り、強引に学校主体調査で進め、やっぱり駄目だとなってから、当時非公開であった「いじめ問題調査委員会」という常設の第三者委員会が動くことになった。
しかし、重大事態いじめと認めたのは2025年7月である。現在は2026年9月下旬であり、いまだに調査は始まっていない。
湖西市教育委員会はこの遅滞をまずは、被害側に謝罪すべきであろう。そうでなければ、市教委の言う迅速というのは、「だいたい1年ちょっと」ということになる。それは、迅速とは普通言わない、「大いなる遅滞」「ほぼ不作為」と世間ではいうのだ。
被害者側は、メンバーを見てがっかりしたとのことであった。その理由は、はじまりの事件をしっかり見ていたからである。
尚、現在、私は本件において、被害側の支援者となっている。その関係から、はじまりの事件の被害保護者をスーパーバイザーとして任命させてもらった。
被害側の権利を守るために連携が不可欠であると考えたからだ。
いついきなり約束を破られるかもしれない、それはそもそも信用ならない組織であるということの実績でもある。非公開とするのは不都合だからというのは短絡的思考であると思っていたが、開けてびっくり、その通りであった。
ある種の期待を絶対に裏切らない湖西市、果たして次は何が発覚するのだろう――(メルマガ『阿部泰尚メルマガ「伝説の探偵」』2026年9月23日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみ下さい。いじめ探偵はみなさまからのご支援を必要としています)
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image by: X(@湖西市役所【公式】)