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高市早苗の大失策。「トランプに日本の考え方をすり込む」どころか米中首脳から発せられた“日本への最悪メッセージ”

日米同盟の強さをアピールする高市首相をよそに、中国との協力姿勢を鮮明にしたトランプ大統領。「予想外」とも言える展開に日本国内でもさまざまな反応が見られていますが、このアメリカの変化をどう捉えるべきなのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、日米、米中と相次いで行われた首脳会談を比較し、その違いから見えてくる国際情勢の現在地を分析。さらに中国による日本への「新型軍国主義」批判を取り上げ、防衛力の増強や歴史問題をめぐる我が国の現状について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本は本当に中国の「新型軍国主義」批判を冷笑していてよいのだろうか 米中首脳会談が示す変化

トランプが中国を「同盟国」認定。日本は中国の「新型軍国主義」批判をどう受け止めるべきか

高市早苗首相は9月22日、日米首脳会談を終え、その成果を「日米同盟の強さを示すことができた」と会見で誇った。

会談が中国の習近平国家主席の訪米の直前というタイミングもあり、日本のメディアは「日本の考えを事前に米側にすり込んでおくことができた」と、成果に浮かれた。

だが、その日本の働きかけによって、米中首脳会談のいったい何が変わったというのだろうか。

ワシントンに近いメリーランド州アンドルーズ空軍基地に降り立った習近平国家主席はドナルド・トランプ大統領の出迎えで大歓迎を受けた。その様子一つとってもアメリカが中国との関係を重視していることがよく伝わってきたのだが、さらに驚いたのは空港に敷かれたレッドカーペットを、習氏の到着直前に兵士たちが這いつくばって入念にチェックする動画までが流されたことだ。ネット上には「さすがにやり過ぎ」という批判が沸き上がった。

大統領専用ヘリ「マリーンワン」を習氏に案内する場面では、米中の首脳が示し合わせたように同じ紺色のスーツに紫のネクタイ姿で登場して話題となった。

習氏の訪米は空港から首脳会談、そして晩餐会に至るまで終始和やかで、二人の首脳もにこやかであった。

これのどこに日本の「すり込み」の効果があったというのか。

それどころか日本にとってドキリとさせられたのは、米中両首脳が「協力」に向けてメッセージを発しあう場面で、互いが第二次世界大戦で共に戦った過去を引き合いに出して語ったことだ。

習氏は、24日のホワイトハウスの歓迎式典のスピーチで「第二次世界大戦中、中国とアメリカは肩を並べてファシストの侵略に立ち向かった。この歴史を中国人民は忘れないし、アメリカ人も忘れていない」(『人民日報』9月25日)と語り、トランプ氏も「第二次大戦で、我々が共に成し遂げた偉業を思い出そう。共通利益の追求が、距離や相違を超えて両国民を結びつけ、第二次大戦で我々を同盟国にした。共通の利益に焦点を当てれば、多くの成果をあげられると確信している」(『読売新聞』9月25日)と応じたのだ。

過去10年ほどの間に、日本では反中感情が高まり、台湾海峡や南シナ海問題にまで日本が積極的に関与する姿勢を見せていることに中国は苛立ちを募らせてきた。昨年11月以降は日本を「新型軍国主義」と批判するようになった。

そうした経緯を考えれば、今回、米中がそろって過去の戦争に触れたことは、おそらく中国側のリクエストにアメリカが応じたということだ。

つまり直前の日米会談で「日本の考え方をすり込む」どころか、最悪のメッセージが米中首脳から発せられたのである。

残念なことに米中首脳会談の直前に日米首脳会談を無理やりねじ込むというやり方は、日本側の思惑に反し、かえって世界の目に日中の力の差を見せつける役割を果たしてしまったといっても過言ではない。

実際、高市早苗首相とトランプ大統領の会談はわずか30分。よく言われることだが、通訳を入れた会談であれば実質的な時間はせいぜい15分である。これは本気で何かを話し合おうとする首脳会談の時間ではない。

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高市政権が強調する「保守」を突き詰めた先に待つ米国の逆鱗

さて、こうした状況を踏まえてタイトルの「新型軍国主義」批判について考えてみたいのだが、日本ではこうした中国の批判を、現実的ではないと、冷笑する専門家が多いこともあってか、日本社会で中国側の批判をまともに受け止めようとする動きはない。

もちろん現在の日本人が戦争を望んでいるとか、戦争をできる国になることを求めていると批判されても、ピンとくる日本人は多くはないだろう。

だが一方で中国の「脅威」が政治家の発言やメディアを通じて強調されてきた結果、少なくとも防衛力の急激な増強にも抵抗のない社会に変わってしまったのは事実だ。

そしてそうした空気を利用しているのが、過去の戦争を反省するどころか肯定的にとらえる言論を繰り返してきた現在の首相なのである。そうであれば中国が、日本の「過去への回帰」を懸念しても不思議ではない。

そもそも中国が日本を批判する際に使う「軍国主義」は、政治体制を定義するためのものではなく、過去の大戦を引き起こした主体を批判するための言葉だ。

だから過去の日本が戻ってくるという意味で「新」とつけられているのだ。

高市首相はかつて「(過去の戦争を)反省などしない」と公言したこともある。

日本の現状は、軍国主義と批判されるような体制とはいえない。しかし加速度的に防衛力重視の考え方に傾いていることも確かだ。

AI(ジェミニ)の回答で恐縮だが、2022年からの防衛費の伸びを並べると、21年から22年が1.1%だったのに対し、翌年からは26.3%、16.5%という驚異的伸びを示している。対GDP比の防衛予算も2%を目標(アメリカからの圧力のためだが)として着実に増えている。

ちなみに日本が批判する中国の国防予算は対GDP比で概ね1.5%程度で推移してきているのだから何をかいわんやである。

さらに問題は、日本の現政権が強調する「保守」が過去の日本の行いを肯定する意味を含んでいて、例えば靖国神社への参拝にこだわるような姿勢を貫いていることだ。

多くの日本人はこれを中国に対抗する政権の意思だと受け止めているようだが、もしこの道を進めば中国からの反発だけでは終わらなくなるという現実は見えていない。

靖国問題などの歴史問題は、突き詰めていけば日本の敗戦にたどりつき、いずれアメリカの逆鱗にも触れる問題だからだ。

事実、靖国神社は、敗戦後の日本に乗り込んできた占領軍が真っ先に問題視し、取り潰そうとしたことで知られている。

また日本が犠牲者数をめぐって中国と対立する南京大虐殺も、元をたどればたどり着くのは極東軍事裁判所だ。この裁判がアメリカ主導で行われてきたことはいまさら述べるまでもない。

つまり今回の米中首脳会談で垣間見えたアメリカの変化は、中国との関係次第で日本の「保守」批判にまで及びかねないという、そんな不都合な事実を日本に突きつけた会談だったと言えるのである。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年9月27日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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