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【突然死の科学】“不眠を気合で克服”は原始時代まで?意外と知られていない「睡眠」の重要さ

「睡眠」は体にどう影響しているのか?

どうせ言うだろうな・・・と、思っている通りです。

食事・運動・睡眠

この3つで体は構成されています。食事は食べた物が栄養になるから分かる、運動も運動すれば筋肉が付くし血流が良くなったりするから分かる、同じように睡眠時間も大事です。

あれ? ちょっとまってください。睡眠って何をしてるんでしょう? 運動も食事も睡眠も、どれもこれも健康を維持するには必要と知っていますが、どういう風に役立っているのかは意外と知らないものです。そこで今回は「睡眠」ってどう体に影響しているのかを見ていきます。

かつて人間の睡眠時間は単に体を休ませているだけ、ちょいちょい休めば実は不要なのでは? と研究された時代がありました。不眠でどれだけ耐えれるか競い合った時代もあったようです。その実験結果から分かるのは、3日目あたりで意識のレベルが明らかに低下、判断力、思考力、計算力、脳ができる仕事がどんどん低効率・低能力になっていくことが分かっています。

そして5日目あたりからは夢なのか現実なのか分からない状態が続き、最終的に幻聴・幻臭・幻覚、幻のつくものは全部発動、その後はすべての被験者が10数時間の睡眠をとり、完全に元に戻るには数日以上かかるというものでした。

また、寿命の短いマウスを電気刺激で眠らないようにしたところ、2週間で死に至るという実験結果もあります。

睡眠はまだ完全に解明されたわけではありませんが、寝ている間に情報処理の最適化を行っているとされています。

また運動神経が成長するのも睡眠中です。前日なんとか乗れた一輪車が、次の日にはびっくりするほど乗れるようになっていた・・・といった感じに似た感覚は誰しもあるでしょう。単身外国に行って異国語に囲まれていても、数日でなんとなく分かるようになってくるのもまた、そうした脳の無意識下の情報処理の賜なのではないでしょうか。

また、睡眠中は臓器の再生の場でもあります。脳内では神経伝達物質の素材が再生産され、次の日の情報伝達に備えられます。内臓も、消化酵素で傷ついた粘膜を再構築し、必要以上の活動をとめて、起きている間に起こる得るストレスに対する準備をします。

睡眠時間というのは次の日を快適に送るための回復時間であるわけです。そしておよそ6~8時間程度の睡眠時間で、人間は次の日に備えることができます。

故に、この睡眠の質が悪いと、次の日の生活の質が下がるわけです。なので1週間以上続く不眠や、過眠といった症状が出た場合、別にちょっと寝れないだけ・・・と考えず、悪化する前に、心療内科などの病院で治療を受けるべきなのです。

「精神科や心療内科に通って、睡眠薬なんてものをもらうようになったら人間終わり、不眠やストレスなんてものは精神力が足りないだけ」・・・そう考えて良いのは、森の中の原始の暮らしをしている場合だけです。少なくとも人工の灯りや、高速移動など、人類が未だ体験したことのない、超高密度情報社会に生きる以上、歪みは生じて当然なのです。

不眠が“かすり傷”の間に手を打っておくべきだった、と後悔するのは、体に大穴が空いてからでは遅いのです。風邪薬の副作用で眠くさせるだけの睡眠補助薬なんて飲んで、ごまかしていたりすると、手痛いしっぺ返しを喰らうかも・・・しれません。

では、その睡眠する時間をどうやって作るか? ・・・睡眠の質を上げればいいのでしょうか?

睡眠時間を増やすには

まず、睡眠時間を削って仕事を・・・趣味を・・・という発想をやめましょう。睡眠不足によって、思考に必要な脳の神経伝達物質も枯渇し、楽しみや幸せを感じるための伝達物質すら枯渇していくことを考えると、睡眠時間を犠牲にし続けるのは得策ではないのです。

睡眠時間ありきでスケジュールを組む・・・これに尽きます。それにあたり、まずは自分にとって最適な、また最低限必要な睡眠時間はどれくらいか、日々自分を観察して出しておくのが必要になるわけです。

そもそも「快適な暮らし」というのは衣食住が満たされて初めて完成するものです。例えば冬の寒い日にエアコン代をケチりにケチって始終寒い思いをして、ギャンブルやタバコなどの嗜好品にお金を使うような本末転倒なことは、あってはならないわけです。むしろ快適な暮らしをするために光熱費がかかるなら、そのために働くのです。

すでに睡眠自体に障害がある場合、寝付きが悪い、長時間寝ていても寝た気がしない、といったものは、速やかに専門病院で治療を受けましょう。

精神疾患は心の病と言われていますが、人間を化学の目で見れば、しっかりと脳内の受容体の数や伝達物質の量、その他脳内ホルモンのバランスがおかしい異常状態になっています。つまりは「病気」なのです。

不眠症は聴診器で分からない、顕微鏡で見れないだけで、しっかりと機能不全を起こしている「病気」なので、治療が必要なのです。最近では、画像診断や血液診断も出来るようになってきましたが、まだまだ精度は微妙です。

とにもかくにも、不健康の積み重ねは死ぬことまで行かずとも、必ず病気という形でツケを回収されます。しゃにむに働いても、病気ですべてを無為にしては意味が無いわけです。
(文/くられ)

第1回:【ちょっと横になるわー】風邪のウイルスでも原因になる、30代、40代の突然死

著者/くられ
シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。まぐまぐ!からは、無料メルマガ「アリエナイ科学メルマ」を絶賛配信中。
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