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成功者の分析…大経営者になるために必要だった3つの「T」

経営者には誰でもなることができる。しかし、大成するためには、「野心」や「熱意をともなった実行」が必要だと浅利良一さんは言います。彼は大成した経営者たちのキャラクターに共通する点を見つけ出し、自身のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』でわかりやすく語っています。

経営者のキャラクター

中堅企業を立ち上げた創業社長には、結構やんちゃで苦労肌でガキ大将的なキャラクターが多いようです。鋭利な秀才肌は、図太さが求められる創業者には不向きなようです。

日本では松下さん、本田さん、稲盛さん、永守さん、アメリカでもエジソン、ヘンリー・フォード、サム・ウォルトンなどがそうです。

大成するのに必要なのは、動機の是非はともかくとして“野心”です。世のため人のためといった使命感であったり、劣等感を覆そうといったものであっても、そこにあるエネルギーで道が開けていきます。そして、好きなことに突き進むビジョンと世界一になるのだという気概が加わればまわりを引き込む魅力となります。

ノーベル賞を受賞できる要素についておもしろい話を聞きました。
それは能力の違いでなく、どんなテーマを選ぶかが問題だそうです。
「DNAの2重螺旋」、「iPS細胞」でも最初から、ここに焦点を絞り研究を集中させています。

そして、最後の勝負所は、知力ではなく直観や運がものを言います。

余談ですが「DNAの2重螺旋」にしろ「iPS細胞」にしても、ノーベル賞級の研究は、同時代に多くの研究者が取り組んでおりノーベル賞に結びつくのはタッチの差の発表で決まることもあるようです。そうみてみるとノーベル賞を取るノウハウは「テーマを絞り」「集中し」「閃きを大切に」「タイミングを外さず発表」となるかもしれません。

事を成すには、最初に「思い」がなければなりません。
そして、強烈な熱意をともなった実行が道を開いていきます。
よいアイディアはそこらじゅうにあるそうで、要点は実行するかどうか。優秀な知性を集めて戦略計画を練ると、形が整ったものはできます。
しかし、実行となると優秀な知性はそこで終わるそうです。

そこで、実行が行われる要因を考えてみます。松下さんは、「思わな、いけまへんなぁ~」から始めています。稲盛さんは、それをベスト・プラクティスとして「潜在意識にまで透徹する強い持続した願望をもつ」そして成功の秘訣を「単純なことです。成功するまであきらめません」と述べています。

大成する経営者のキャラクターを見ると、一つの風韻があります。
矛盾の中に首尾一貫した基本があり、それは冷徹でありながら優しさがあり、ケチでありながら気前が良いなど言葉での表現が困難なものです。
共通するのは、人を引き付ける何かがあることです。夢であったり、やり抜く意志であったり、キャラクターであったりです。

船井総研の創業者船井幸雄氏は、成功者の3条件を「素直」「勉強好き」「プラス思考」だとしています。

「素直さ」が条件であることを意外に思われる方がいるかもしれませんが、経営の神様と称される松下さんがこの「素直」を経営者としての大目標にして、どんな人の批判も素直に耳を傾けたそうです。

「電力王」「電力の鬼」と言われた松永安左エ門さんは、大経営者になるためには、3つの「T」が必要であると言っています。それは「投獄」「倒産」「大病」で、このうちの2つ経験して一人前だと述懐しています。それに加えて「自分は、2つを経験して」とも言っています。

松下さんは病弱でした。孫正義さんは大病を経験しています。
これらの3条件でないものの、大経営者になった人はその創業時に「投獄」「倒産」「大病」と同じ辛酸を舐めて「事業とは何か」「人とは何か」という経営のコツに思い至ったことでしょう。

そして「プラス思考」「鈍感」で「喜び」に昇華されたのでしょう。

専門家の役割

経営者には誰でもなれます。

しかし、他の人を雇用とするとなるとマネジメントが必要になります。
企業にはその仕事の中身によって、適切な規模があります。仕事の性質により大規模になることが求められると、経営者としての考え方とマネジメントのスキルが必要になります。

ホンダでは、マネジメント自体は副社長の藤沢武夫氏が行ってきました。

しかし社長は本田さんでした。

本田さんは大好きな技術に専念し、経営は好きではありませんでした。会社の顔である社長の役割と、経営者の役割は少し異なります。ホンダでは、別な人格が担当してうまくいったケースです。

経営には絶対的に必要な2つの要件があります。

一つは「価値観」で、もう一つは「マネジメント」です。絶対に社長が人に委ねてはいけないのは「価値観」です。マネジメントは、一定の目標と基準と範囲のもとに委ねます。ホンダの場合「価値観」では、本田さんと藤沢さんの合作という形です。

パナソニックの場合、松下さんが徹底した「価値観」を構築しました。
また、マネジメントについてもその根幹のあり方を作り上げています。
そうしたらすべてのマネジメントも行ったかというと、パナソニックにもマネジメントの専門家がいました。会計基準、目標管理制度をつくった松下教の伝道師の高橋荒太郎さんです。

経営は経営者のみ能力で行えるような単純なものではなく、多くの専門家の協力を必要とします。

「価値観」構築は経営者が行わなければならない独自職責ですが、コンセプトとして名言化してその軸に社会変化の読み解きを組み込み行動指針となる「ビジョン」にまでつくりあげて行きます。

ビジョンの骨格と基礎判断は経営者が行いますが、実際的な構築は専門家と現場の協力のもとにつくり上げて行きます。
さらに、目標と課題に合わせて各部署の行動計画に落とし込んで行きます。そして、行動計画の目的と目標と評価基準を明示したうえで適正人材を配置し、現場で実行計画をつくらせるとともに必要な権限を委譲します。

土光さんが、東芝再建に乗り込んで重視した行動がありました。一つは誰でもが直接話ができる「オープン・ザ・ドアー」で、もう一つは供を連れずの現場巡りです。それは、直に情報を収集することと励ますためです。現場の従業員こそが、“専門家”であり最大の経営資源であるからです。

最後に、ホンダの副社長の藤沢武夫さんの生き方を少し考えてみます。
藤沢さん自身の性格をロマンチストと定義しています。自分の夢を適えたい、その時の最高の経営資源が「本田宗一郎」でした。また逆も真で、本田さんの夢を適えるマネジャーが藤沢さんでした。

二人の夢見る“専門家”の幸運な結合から「ホンダ」が生まれました。

image by: Shutterstock

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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