パナソニック創業者で「経営の神様」とも言われる松下幸之助氏は、「社員の話に耳を傾ける天才」でもあったそうです。メルマガ『がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策』では、松下流「社長と社員に2つずつメリットが生まれる話の聞き方」が紹介されています。
時間がなくても人の話を最後まで聞いているか?
人の話を聞くということは大切だとよく言います。建設技術者は、近隣住民、協力会社、発注者の言うことをよく聞いて、それを反映させた施工をする必要があります。
パナソニック創業者松下幸之助さんは聞き上手な人でした。少々長いですが、松下幸之助さんの逸話を紹介します。
松下幸之助の「聞く力」
松下さんは、特に社員の話にも非常に熱心に耳を傾けた。社長が社員の話に耳を傾けると、双方に2つずつのメリットが生まれる。
社員にとっては、社長が一所懸命に話を聞いてくれれば、まず「やる気が出る」ようになる。また、社長が喜ぶような情報を持っていこうと「勉強する」ようになる。
社長にとってのメリットの1つ目は「社員から尊敬される」ようになることだ。社員の話をないがしろにしたり、途中でさえぎったりする社長に、絶対に社員はついてこない。社員に素直にものを尋ね、意見を求める社長こそが、尊敬され、信頼されるのである。
2つ目は、何よりも自然に「情報が集まってくる」ようになるメリットだ。松下幸之助さんのところには、日々ひっきりなしにいろいろな人が訪れる。そういう人たちの話を聞くとき、松下さんは「その話は前に聞いた」とか「それは私の考えていることと同じだ」という応対を、ただの一度もしたことはなかった。
いつもいつも「君はいいこと言うな」「君はなかなか賢いな」というふうに感心しながら聞く。椅子から身を乗り出し、相手の眼をじっと見ながら真剣に聞くのである。これにはみんな感激する。「あの松下幸之助さんが私の話を真剣に聞いてくれた。そして話の内容に感心してくれた」と思うのである。
すると人間とは不思議なもので、何か面白い情報が入るたびに、「よし、これを松下幸之助さんのところに持っていこう」「この話は松下の大将の耳に入れておこう」という気になってくる。結果として、自然と膨大な情報が入ってくることになる。
1日に入れ替わり立ち替わり人が来るわけだから、当然、同じ情報もある。しかし松下幸之助さんは、すべての話を初めて耳にするような雰囲気で聞く。それは、たとえ同じ情報であったとしても、話す人によって視点が少しずつ違うからである。松下さんは、1つの事実についても、さまざまな角度から複数の情報と意見を得て、いつも熱心に聞き比べた。
できるだけ多くの人から情報を手に入れること。そして、それらをすべて頭に入れた上で判断すること。これは、いくらテクノロジーが発達した時代になっても、昔と変わらぬ仕事の鉄則であろう。
自分の立場も面子もどうでもいい
ある日の午前中、松下さんの執務室で私は、「なあ江口君、今度、○○ということをやろうと思うんやけど、君はどう思う?」と尋ねられた。すばらしいアイデアだと思ったので、私は「それはいいですね」と答えた。
するとその日の午後、松下電器のある役員が松下幸之助さんのところへ来て、「今度、○○ということをやりたいと思うのですが、いかがでしょう」とアイデアを提案した。その○○というアイデアは、午前中に松下さんが私に話してくれたのとほぼ同じものだった。
だから私は、松下さんが「それはわしも考えていた。午前中に江口君に話していたところなんだ」と言うと思った。しかし、松下さんはそうは答えなかった。ウンウンと頷くと、「君のそのアイデアはなかなかいいな。よし、すぐにそれをやろう」と応じたのである。これが松下幸之助さんのやり方だった。自分の立場も、自分の面子もどうでもよかった。社員にやる気を出させ、生き生きと仕事をさせることが第一義だったのである。
思えば松下幸之助さんは、持ってきた情報そのものを評価するのではなく、持ってきた人の努力や勇気を評価していたのだ。
「よく、わしのところへ話しに来てくれたな」
「その情報を持ってくるためには、大変な勉強が必要だったろうな」
そんな気持ちだったに違いないし、実際、そのように口に出しもした。松下幸之助さんはけっして「今は忙しいから、後にしてくれ」とは言わなかった。アポイントメントが入っている場合は別として、よほどのことがない限り、その社員を部屋に入れ、話を最後まで聞いた。「時間がないから、その辺りでやめてくれ」とも絶対に言わなかった。これは簡単なようで、実はなかなかできることではない。
「猿は猿、魚は魚、人は人」講談社 前PHP研究所社長・江口克彦氏著
「そのことはすでに知っている」
「私も考えていた」
と言わず、また、
「忙しいから後にしてくれ」
「時間がないから、そのあたりで辞めてくれ」
とも言わないという松下幸之助さんの聞き上手ぶりはすばらしいものです。
私は人の話を聞くことが多いですが、つい、
「その話は知っています」
と言ってしまいます。まずは自らの言動を見直すことから始めます。
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ダム、トンネル等大型建設工事の参画経験を有し、テレビ、ラジオ、新聞に出演中の降籏達生さんが、「儲かる」「身につく」建設(土木、建築、設備、電気、プラント)関連情報を厳選。建設業の業績アップ、技術者育成、技術提案、原価低減ネタを紹介します。
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