世代を越えて売れ続ける純国産の「吉田カバン」。そのカバンは「吉田基準」と呼ばれる厳しい基準をクリアした逸品なのです。日本実業出版社刊『吉田基準』は、ファッション業界だけでなく、すべてのビジネスマンに共通する「基本」に立ち返らせてくれる本として、『毎日3分読書革命! 土井英司のビジネスブックマラソン』で詳しく紹介しています。
こんにちは、土井英司です。
昨日は、HANAE MORIのファッションショーにお招きを受け、出席してきました。
華やかなランウェイにも惹かれましたが、何といっても感動したのは、これほど多くの人が服作りを支えている、ということでした。
よその業界を見ると、ついついスタープレイヤーばかりに目が行きがちですが、出版業界と同じように、いろんな職人さんがいて、すばらしい商品ができあがっている、そのことは一緒なんだと実感しました。
「お金じゃない」ということが言われて久しい昨今ですが、「じゃあいったいなんなんだ」という疑問に答えてくれたのが、ファッション業界の職人たちでした。
「長く愛される素晴らしい商品を創る」
これは、仕事をするうえで、お金を超える目的になり得るものです。
これに気づかせてくれたのが、本日ご紹介する、『吉田基準 価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』です。
世代を超えて売れ続ける、純国産のカバン。業界内で「吉田基準」と謳われる厳しい基準の逸品が、どうやって生まれたのか。
本書には、そのルーツと日々の生産活動の裏側、それを支える職人たちの証言が紹介されています。
カバンをよく知らない人間には、ちょっとマニアックすぎるきらいもありますが、どうやってこだわりの品が生まれるのか、どうやって人を育てているのか、その秘密がわかった気がしました。
さっそく、そのエッセンスを見ていきましょう。
新たな取り組みを決断する時は次の視点で考えます。まず、「創業者なら、こんなときどう決断するか」という視点。そして「それを行うことで社員と職人さんが幸せになれるのか」。この二つを合わせて判断します。
カバンも革製よりもナイロンを含めた布製が主流となり、スーツ姿でリュックを背負って出勤する姿も珍しくなくなりました。カバンの中の荷物も増える傾向にあります。たとえば、近年の異常気象で朝は晴れていても突然雨が降ることがあるので、折りたたみ傘を持ち歩いていたり、夏には熱中症のリスクもあり、ペットボトル飲料を携行する人も多い。
私以下、当社の社員は必ず「職人さん」とさんづけで呼びます。新人からベテランまで仕事を依頼するほうが上だと勘違いしている者はいません。また、そうした社員教育も施してきました。たとえば企画部に配属された新人デザイナーには、最初に本部長が次のような話をします。「これから吉田カバンのデザイナーとして仕事をするわけですが、デザイナーなんてエラくも何ともない。カバンの原材料となる布地や革、金具などを扱う部材屋さんは欠かせません。それを細部にこだわって裁断や縫製などをする職人さんたちがいます。こうした本当のプロに支えられて初めて成り立つ仕事です」
「会社の顔が見えなくなる仕事」はしない
広告ではなく「商品説明」に力を注ぐ
目先の「流行」は追いませんが、「新しさ」の提案はし続けます。
たとえば新商品で、ベーシックな革カバンを発表する場合も、素材やデザイン、機能、使い勝手などの新しさを提案しています
「カバンを床に直接置いたり、雑に扱ってはならない」(吉田吉蔵)
一方で、「変えてはならないものを守るために、変えるべきを変える」という考え方もあると思います。コラボレーションもそうですが、当社が積極的に新たな企画を提案し続けるのは、カバンの生産量を増やすためです。それが当社の成長だけでなく、日本の職人さんを絶やさないことにつながるからです
私は、カバン業界の将来に対しては楽観的なイメージももっています。それはなぜか。「カバンにはまだまだできることがたくさんある」と信じているからです
お金じゃない「報酬」で人を動かし、感動の逸品を生み出す。
吉田カバンの創業者、吉田吉蔵氏はこうおっしゃっていたそうです。
「お客さまに買ってよかったと思われる、喜ばれるカバンをつくること」
吉田カバンの流儀は、多くのビジネスが忘れていた「基本」に立ち返らせてくれる力を持っています。
ロングセラーの秘密を知りたい方、仕事への姿勢を学びたい方は、ぜひ読んでみてください。
image by: Shutterstock
『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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