漫画家、イラストレーターなどの他にも多彩な顔をもち、最近では「ゆるキャラ」の名付け親としても有名な、みうらじゅんさん。その活躍の裏には、表に出さない多くの努力がありました。今回の『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』では、そんな彼の仕事術を暴露した一冊を紹介しています。
『「ない仕事」の作り方』 みうらじゅん・著 文藝春秋
こんにちは、土井英司です。
これまでに数多くのビジネス書を読んでいますが、「仕事術」に分類される本を読んで、大爆笑したことは一度もなかった気がします。
本日ご紹介する一冊は、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなど多彩な顔を持ち、これまでにさまざまなブームを仕掛けてきたプロデューサーでもあるみうらじゅん氏が、その発想のヒントと仕事術を語った一冊。
一人でネタを考え、ネーミングし、デザインや見せ方を考え、雑誌やテレビやイベントで発表する。おまけにそのために接待までする。著者はこれを「一人電通」と読んでいるわけですが、本書にはまさにこの「一人電通」の仕事術が書かれています。
思わず「くすっ」と笑いながらも、文中に面白さを創る方程式や、人を口説く極意、ブームを仕掛けるための手順が書かれており、じつに勉強になりました。
- 名称もジャンルもないものを見つけ、名称とジャンルを与える
- A+B=ABではなく、A+B=Cになるようにする(AかBのどちらかは、もう一方を打ち消すネガティブなものにする)
- 何でも言葉の終わりに「ブーム」か「プレイ」をつけてしまう
- 恥ずかしいこと、口にしたくないこと、陽が当たっていないものごとに、名前をつけたり言葉を言い換えたりしてポップにする
著者の創作の秘密が書かれており、じつに読み応えのある内容です。
さっそく、エッセンスをチェックしてみましょう。
私が名づけたブームのほとんどの名称は、水と油、もしくは全く関係がないものを結びつけるようにしています(中略)A+B=ABではなく、A+B=Cになるようにするのです。そしてAかBのどちらかは、もう一方を打ち消すようなネガティブなものにします
好きだから買うのではなく、買って圧倒的な量が集まってきたから好きになる
私のやっていることは、ほとんどが「ない仕事」なので、先方から依頼がくることはほぼありません。「いま、地方自治体のマスコットが面白いんですけど、みうらさん、取材しませんか?」などと好都合な発注を受けることなど皆無です。なのでいつも私は、「こんな企画があるんですが、どうでしょう?」と雑誌やテレビ局に持ち込んでいるのです
ブームというのは、この「勝手に独自の意見を言い出す人」が増えたときに生まれる
第一印象が悪いものは、「嫌だ」「違和感がある」と思い、普通の人はそこで拒絶します。しかしそれほどのものを、どうやったら好きになれるだろうかと、自分を「洗脳」していくほうが、好きなものを普通に好きだと言うよりも、よっぽど面白いことになる
ブームになるものはかなりの確率で、言葉が略されています。昨今のヒット商品番付と呼ばれるものを見ても、「アナ雪」「朝ドラ」「ハリポタ」「壁ドン」「ビリギャル」「パズドラ」……と、略語が多く目につきます。つまり、「約められる」ことが流行のルール
私は、20年ほど前から、「海女」ブームがくるに違いないと思っていました。それは高校時代、よくエロ映画で見ていた3本立ての中に「海女」シリーズが含まれていたからです
私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです(中略)そもそも何かをプロデュースするという行為は、自分をなくしていくことです。自分のアイデアは対象物のためだけにあると思うべきなのです
「自分探し」をしても、何にもならないのです。そんなことをしているひまがあるのなら、徐々に自分のボンノウを消していき、「自分なくし」をするほうが大切です。自分をなくして初めて、何かが見つかるのです
高級車を買うよりも高級ドールを買うほうが、不自然
原理原則が書かれたところでは、深く頷き、そうでないところでは思わず大爆笑してしまう。
そんな実用性とエンタメ性のバランスが取れた、素敵な一冊です。
これはぜひ読んでみてください。
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著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。