交渉の際、ほかにも交渉している相手がいることをちらつかせる。これは交渉の基本テクニックです。それに対応するため、そして相手のペースにならないためには、どのような対処が必要なのでしょうか? その方法を、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』が詳しく紹介しています。
ライバルの存在
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
交渉の基本中の基本のテクニックとして、競合他社など、ほかに交渉している相手がいるということをちらつかせながら、よい条件を引き出すという手法があります。
「なんとかこの交渉をまとめたい」と思っていれば思っているほど、ライバルの存在を示されると、狼狽してしまうもの。
交渉が相手のペースになり、譲歩を繰り返してしまう事態にもなりがちです。
私は、数多くの経営者が、こういった状況で、入ってはならない領域まで譲歩し、それが原因で経営危機に陥ってしまう姿を見てきました。
このような事態を防ぐために必要なことは、交渉の事前準備です。
まず準備すべきことは、「交渉が決裂した時にどうするか」というオプションです。
「もしだめだったら次はこの会社に行こう」といった、自分を守るための方策を用意しておくことが、交渉を有利に進めるための武器になります。
そして、無限の譲歩をしないため、「これ以下だったら絶対に受けない」という条件の最低ラインを準備します。
無理な提案にNOを言う用意があれば、落ち着きを失いません。
ただし、何についての最低ラインを用意すればよいのか、ということはよく考える必要があります。
まず思いつくのは料金だと思いますが、それだけではありません。
たとえば納期、入金時期などの支払い条件、保証の有無など、金額以外にもいろいろな条件があります。
それらの諸条件を、
「この料金なら保証はつけられない」
「この料金なら支払いサイトを短く」など、クロスして詳細に決めておくことが重要です。
これを行わないと、交渉の場で提出されるさまざまな要求の意味を理解できず、契約をした後に予想外の悪条件であることに気づくことになります。
事前の準備をしっかり行ったうえで交渉に臨み、実際に競合他社の存在をちらつかされたときは、どのように対処すればよいでしょうか。
無視する、という方法もありますが、相手が他社の存在を示すときは、何らかの反応をしてくれることを望んでいるため、気にする様子を見せないと、相手の感情を害します。
それなりのリアクションを行いましょう。
「それは困る。あなたと取引がしたいのだ」という姿勢を示すチャンスとなるものです。
そして、その他社の条件を質問することです。
質問をすることで、その条件に負けないように頑張る姿勢を見せることができます。
これは譲歩することとは異なります。
相手との合意できる地点を探るプロセスです。
競合他社のことを質問するのは、タブーではありません。
答えたくなければ答えないだけです。
そして、この質問は、「本当に競合がいるのか」ということを確かめるためでもあります。
他社の条件を聞いたとき、あやふやな答えになるようなら、カマをかけるために架空の競合他社の存在を示している可能性が高いため、その存在は気にしなくてよいでしょう。
他社が提出している条件をある程度聞き出すことに成功したら、その条件に関する相手のスタンスを知るように努めましょう。
どの条件に魅力を感じているのか、どの点が不満なのか、知るように努めます。
それによって、自分の交渉戦略を練り直す非常に重要な情報を得ることができるでしょう。
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『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』
人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などテレビ解説でもお馴染みで、「するどい質問力」(10万部)、「弁護士が教える気弱なあなたの交渉術」(アマゾン1位獲得)の著者で現役弁護士の谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。
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