アメリカ大統領候補の1人である、ドナルド・トランプ氏の発言が物議を醸し出しています。その発言は、「イスラム教徒の入国を禁止すべき」というものです。メルマガ「ニューヨークの遊び方」の著者・りばてぃさんが、その発言に対する問題点からわかる、「多様性の重要性」についてわかりやすく紹介しています。
トランプ発言で大騒ぎ
今週、アメリカでは、共和党内の大統領候補の1人、ドナルド・トランプ氏が、7日に語った
「イスラム教徒のアメリカへの入国を禁止すべきだ」
との発言が、各種メディアはもちろんのこと、オバマ政権や共和党指導部、さらには、英仏首相ら同盟国の指導者からも非難を浴びるなど、とんでもない騒ぎを巻き起こしている。
すでにこのメルマガでも、何度かお伝えしている通り、トランプさんは、アメリカ屈指の不動産王で、誰でも知ってる億万長者。
つまり、政治家ではなく実業家。
自己資金で選挙資金を賄えるため、一切、誰にも遠慮せず、自由に発言することができ、それが共和党の支持者にウケて、最初に立候補したときは、ただの泡沫候補の一人だったのが、今夏頃から現在まで、支持率トップの共和党内の最有力候補になった。
もともと口が悪い・・・というか、どういう発言をすれば、みんながより注目するかとか、メディアがより大きく取り上げるかをよく分かっていて、自分の発言を、『エンターテインメント』化するスキルが極めて高い。
これは、トランプさんが、今回、立候補するだいぶ以前から、いくつものテレビ番組に出演されていて、どういう発言が話題になりやすいかを分かっているためだろう。
彼が出演した番組の中には、ホスト役をつとめた『アプレンティス』(The Apprentice)のように大ヒットしてシリーズ化し、現在も続いている番組もある。
また、ズケズケと物怖じせず、言いたい放題に語っていて、選挙戦の初期から問題発言を連発しているものの、彼の支持者は、トランプは本気でそう思ってるわけではなく、後からより現実的な方向へと修正、調整する能力にも長けている、と見ている。
つまり、とにかく重要な事だから、みんなで考えてもらいたいという狙いで、敢えて物議を醸し出す発言をしているという見方だ。
こうした毒舌発言は、彼の本質的なスタンスが、政治家ではなく実業家である証拠ということで、今回の発言についても、支持者の間では、概ね好意的に受け止められている印象。
もちろん、トランプ氏の発言は大問題で、その言葉通りなら、まともな人は誰も相手にしない内容だが、あまりにも馬鹿げているため、
「真意は別にある」
とか
「そのくらいの気持ちで、みんなで この問題に取り組まないと解決できない」
などと好意的に受け止められているようだ。
実際、この発言の後に行われた最新の世論調査でも、ロイター調査で支持率35%、CNN調査でも支持率36%、でトランプ氏が共和党内での首位を維持している。
また、学歴が高卒までの支持者の間では、さらにトランプ氏の支持率は高く、支持率は約50%になっているとのこと。
〔ご参考〕
■Why voters are loyal to Donald Trump
■「反イスラム」発言しても…トランプ氏、共和党の首位キープ 最新世論調査
■Trump Surges Again:Almost 50 Percent of RepublicansWithout College Degrees Support Trump
多様性の重要性
このようにトランプ氏の「反イスラム」発言は、あまりにも馬鹿げているため、当然、山ほど批判が出ている一方で、支持者の間では、むしろ好意的に受け止められており、なんだかんだと賛否両論が止まらない。
また、つい先月、アメリカでは、ミズーリ大で大学の事務局に黒人差別があるとして、学生らによる全学規模の抗議やボイコットに発展し、適切な対策を取らなかったウルフ総長が辞任に追い込まれる事案があり、さらに、飛び火し、名門のエール大やブラウン大でも人種差別関連の問題が明らかにされ注目を集めていた。
そんな背景もあってか、今回のトランプ氏の「反イスラム」発言とあわせて、今週、アメリカでは、各種メディアが、アメリカの多様性の重要性に関連した記事を量産。
例えば、
「そもそもアメリカは、世界中から集まった多種多様の文化や価値観やライフスタイルを持つ、様々な人種や民族からなる移民によって作られ、発展してきた国だ」
といったごくごく当たり前の話から、
「多様性が私たちをより賢くする」などという話題まで様々である。
〔ご参考〕
■Google CEO slams Donald Trump“America is a country of immigrants”
■Chief Justice Roberts:This Is Why Diversity Matters
■Diversity actually makes us smarter
実に、興味深い現象だ。
まず、当然のことながら、アメリカにおいてこの話題は極めて重要なことなので、こうして、みんなで改めて考えるのは、とても良いことだろう。
どんどんやるべきだ。
また、「多様性」がいかに重要かということについては、アメリカでは、すでにこれまでに何度も、何か新たに優れた発明やビジネスが生まれるのは、たいてい異なる分野の専門家たちが交流した時だったり、生物学的にも多様性は極めて重要と科学的に証明されてたりして、議論されればされるほど、結局、異論の余地がないという結果になると思う。
つまり、なんやかんや言っても、結局、みんなで多様性の重要性を再確認することになるので、良い。
ただ、だからと言って、盲目的に移民を受け入れることが良い結果につながるとは言えないというのも1つの事実だ。
この広い世界には、多種多様の文化や価値観や考え方を持つ人々がいる。
日本人には信じられないことだが、平気で嘘をついたり、デマを広めたり、人を騙し、騙された方が悪い等と、いい歳した大人が公言する、そんな文化や価値観を国民の多くが持っている国だってある。
いくら「多様性」が重要だからと言っても、自分達のエゴのまま、周りの人々を配慮せずやりたい放題するような文化や価値観を持つ人々を、そのまま受け入れるのは、余計な社会問題やコストが生じるなどの問題がある。
最低限のルールとして、嘘をつくのは悪いことだということや、周りの人々を配慮することや、お互いを尊重することを学んで頂き、自分さえ良ければそれで良いという考え方を変えてもらう必要があるだろう。
しかしながら、これは人々の文化や価値観やライフスタイルなどと大いに関係することなので、すぐに変えられるものではない。
時間がかかる。
また、突き詰めて考えると、理想というか、模範のようなものが必要になってくるだろう。
で、そうなってくると、嘘をつくのは悪いことだということや、周りの人々を配慮することや、お互いを尊重するといったことが、長い歴史と伝統を経て、国民全体に共有されている日本の文化に対する世界的な評価が、今後、さらに高まっていくような気がする。
つまり、グローバル化が進めば進むほど、日本の文化や、日本人ならではの国民性とか価値観から何かを学びたいという人々が、世界中で増えていくかもしれないということだ。
そういう時代がやってきたとき(というか、もう来てるかも?)、今アメリカで改めて話題になってるこの一連の「多様性」の重要性について、日本人の皆さんが、まったく何も知らなかったりすると、せっかくのチャンスを逃しかねない。
上述の通り、ちょうど今、アメリカでは、「多様性」の重要性に関連した様々な報道が飛び交っていて、特に、トランプ氏の選挙戦の状況から勘案すると、まだまだこの先も、この手の報道は増えそうだ。
年末年始の休暇などで、お時間のある方は、この機会に、「多様性」の重要性に関するアメリカの報道をいろいろ調べてみると勉強になると思う。
image by:Shutterstock
『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』より一部抜粋
著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。