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「安倍政権打倒」の最大の障壁が、民主党という情けない現実

安保法制、辺野古基地移設などについて反対デモが吹き荒れた2015年。安保反対デモにも出席したジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、「この勢を持ち、野党が結集すれば安倍政権打倒も可能だというのに、よりにもよって民主党がその最大の障害となってしまっている」と手厳しく批判しています。

安倍政権打倒の最大の障壁が民主党という情けなさ

今年1年間を政治面から振り返って、何と言っても最大の出来事は、国会周辺を中心に全国各地にまで広がった安保法制反対のデモであり、これは後々、1960年の「60年安保闘争」に匹敵する「15年安保闘争」として、歴史に刻まれることになるだろう。

その両方に(かつては高校2年生で、そして今は70歳を超えた高齢者として)参加した私の実感で言えば、今年の国会デモは、参加者の多さや機動隊・右翼との衝突の激しさなど「量」的な規模では60年を上回ってはいないが、シールズの諸君の「民主主義って何だ? これだ!」のコールや、憲法学者の「法案は違憲」という指摘に導かれて、民主主義とか立憲主義とかへの国民の理解が格段に深まったという意味での思想的な次元の「質」的な到達においては、60年を凌駕したのではないかと思う。

だから、60年には、樺美智子さんが亡くなって、その4日後に安保条約が自然成立、岸信介内閣の退陣によってアッという間に運動は収束に向かったが、今回はそうはならない。

国会デモの枠組みを作ってきたのは、民主党リベラル派や社民党系が中心の「戦争をさせない1,000人委員会」、共産党系の「9条壊すな! 実行委員会」ほか、それにシールズ、学者の会、立憲デモクラシー、ママの会など市民派の3者が大同団結した「総がかり行動実行委員会」だが、彼らは安保法案廃止と辺野古基地建設反対を2本柱に、引き続き集会やデモを開きつつ、同法案廃止を求める「2,000万人」署名運動を展開、それを背景に、野党が来夏参院選の1人区で統一候補を擁立するよう迫っている。

誰が考えても、安保法制に反対した野党がバラバラのままでは安倍政権に打撃を与えることは不可能で、このデモのエネルギーを丸ごと選挙への力に変換することが必要であるのは自明のことであるけれども、そこで煮え切らないのは民主党執行部とその後ろにいる連合である。

民主党の岡田代表は、前原誠司元代表ら集団的自衛権賛成もしくは部分容認を主張し共産党との共闘に絶対反対の党内右派を、説得することも叩き出すこともできずにオロオロするばかり。連合の新しい会長もゼンセン同盟出身のゴリゴリ右翼で共産党は真っ平ご免だし、結局は連合推薦の比例候補が当選すればそれでいいという無責任な立場。

せっかくの「15年安保闘争」のエネルギーを雲散霧消させてしまいかねない最大の障害が、実は民主党と連合であるという、あまりに情けない年末の政治風景である。

日刊ゲンダイ12月17日付から転載

image by: Wikimedia Commons

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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