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ロシアの進撃で、トルコとイスラエルが接近。まるで聖書の預言通り

ロシア機撃墜事件で国際的に孤立を深めたトルコが、イスラエルとの関係修復に動き出したというニュースが報道されました。『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、ロシア対イスラエル&トルコの敵対関係ができたことで、旧約聖書のひとつである「エゼキエル書38章」の預言通りになりつつあると指摘しています。

世界の経済状況

FRBが米景気が良いと利上げを発表したが、原油市場などコモディティ価格の下落が止まらないために、ハイイールド債が崩壊して、米株価は大幅下落している。

日本も日銀黒田総裁が、市場を見下した騙しをおこなったことで、日本の株価も下落して、金融緩和がこれ以上できないと見透かされて、円高121円台前半になってしまった。

FRBが笛を吹いても、世界の供給過剰・需要不足は止まらないし、それを感じて株式市場も盛り上がらない。この市場が活気づかない原因を解消しないと世界経済は復活しない。

また、日銀が意図せずに示唆したように、国債の量がなく金融緩和を長くは続けられないことも明確になった。非伝統的金融政策を逸脱した一部銘柄のJPXというETFを年間3,000億円買うとしたが、これに日本株の取引7割の世界の投資家が中央銀行として逸脱した行為だと反発した。このため、日本株の売りが出ている。また財政拡大による需要創造も財政赤字で限界にきているし、金融政策も限界にきている。

日本政府は、金融政策もできず財政政策もできずに、企業に投資拡大を要求しているが、世界経済の需要不足で多くの企業も投資拡大はできない。もちろん、インバウンド消費が期待できる観光業界や百貨店などは投資するとは思うが、それ以外の業界では、無理がある。

このため、現在世界経済を活性化する方法として、平和的手段は出尽くし、ないのが現状になった。非常に世界経済が難しい状態になってきたことになる。

この難しい経済状況に、石油価格の下落とEUや米国からの制裁で、ロシアは世界より先に陥ったことで、その打開策を模索している。その過程で戦争経済にシフトしようとしているようだ。

しかし、主に財政的な問題で、大部隊の展開ができず戦争の拡大もできずに、かつトルコとの問題が生じて、現在、より苦しい経済状況になっている。

イランからの要望でシリアを助けるために、シリアに空軍を展開したが、ロシア空軍は反政府軍を叩くために、トルコがシリアにいる同じ民族に対する空爆に反発してしまった。

ロシアのプーチンは、過激派組織「イスラム国」(IS)も反政府勢力も同じとイランから唆(そそのか)されて、シリア政府を助けたが、それを米国とトルコに大反発されてしまった。目算が違ったようだ。

トルコをめぐる米露

米国は、ISもシリア政府の独裁も認めない立場であり、このため、プーチン大統領は「米ロは共にシリア危機の解決策を探している」と述べ、ケリー長官は「前進に向けて共に多くのことができる」とした。

シリア情勢が主要議題で、ISとの戦いで調整を図る一方、和平に向けたシリアの政権移行におけるアサド大統領の処遇が焦点となった。

外相会談では、ケリー長官は「ISは共通の脅威だ」と述べ、シリア情勢で米露が協力する必要性を強調した。これに対してラブロフ外相は「解決すべき問題が残っている」と指摘し、政権移行に参加できる反体制派とテロ組織の線引きなどで、溝の深さを示唆した。

ラブロフ外相の言いたいことは、要するに、トルコが支援する同じ民族の反政府勢力をロシアはテロ組織であるということである。また、トルコは、IS国の石油を買い、ISへ武器等を援助しているので、トルコもISと同罪であり、その支援する反政府勢力も駆逐しないといけないというのである。

これでは、トルコはロシアと手を組めない。ロシアはトルコとの戦争も辞さない感じになるが、ボスボラス海峡を封鎖されるとシリアへの物資補給が円滑に行かないことになるのでそれもできない。

しかし、シリアにロシアは、最新鋭のS-400防空システムやシリア沿岸部に長距離防空システムを搭載した巡洋艦モスクワを展開してトルコを牽制している。事実、トルコ空軍はシリアへの空爆を止めている。

そして、ロシアのトルコへの批判と同調するように、カーター米国防長官もトルコ南部インジルリク空軍基地を訪問し、IS掃討に向け、トルコに対して隣国シリアとの国境の管理強化を求めた。トルコがISとの関係をより敵対的にするように勧告したことになる。

米国は、ISの安い原油をトルコが買っていると見ている。

トルコの一番の敵は、シリア政府とクルド勢力であり、次にISなので、クルド勢力を敵とするISは敵の敵になる。このため、トルコはどうしてもISに甘くなりがちで、米国も、そのようなトルコに苦言を呈したのである。

そして、国連安全保障理事会はISに対する決議案で、ISのメンバーや、ISに資金援助した個人や団体に資産凍結や渡航禁止の制裁を科すことが柱。金融面でも国際的な包囲網を形成し、IS弱体化を図るのが狙い。この案は米露で一致している。トルコ企業が対象になる可能性がある。

ロシアと同盟関係にあるイラクも自国内にいるトルコ軍の撤退を国連に申請した。このように、トルコが悪者にされている

アサド政権は

欧米諸国などがアサド政権と反政府勢力との対話の実現を目指していることについて、アサド大統領は、「テロリストとは交渉しない」として、反政府勢力側を強くけん制している。ロシアの支援を受けて、アサド政権は反転攻勢に出ているので、現時点は自国領土の復活を目指している。

しかし、アレッポを簡単に奪還するはずが、サウジから支援された対戦車ミサイルを持つヌスラ戦線の反撃に合い、前進できずにいる。ここでもISがヌスラ戦線をやっつけること期待して、ISから石油を大量に買っているようである。ロシアがトルコを非難するように、米国がアサド政権を非難している。

イスラエルとトルコが手を組む

このようにトルコも国際的な立場が弱くなり、同じく立場が弱いイスラエルと協力する方向になった。ISを生み出したのは、イスラエルのシーア派とスンニ派の分断政策であり、その意味ではトルコと利害が一致している。

イスラエルは、2010年のイスラエル軍によるトルコのガザ支援船襲撃事件を受けて関係が悪化した両国が和解案で大筋合意した。両国の当局者が会談し、召還した互いの大使の再派遣など和解の条件をまとめた。

というように、ロシア対イスラエル&トルコの敵対関係ができつつある。ロシアの南下が、エゼキエル書ではイスラエルの滅亡になるとしているが、その構図ができつつあることになる。

さあ、どうなりますか?

image by: Nickolay Vinokurov / Shutterstock.com

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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