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近づく中国崩壊Xデー。三大投資家ソロスが「リーマン直前の米国に酷似」

以前、「さよなら中国マネー。三大投資家ジョージ・ソロスも中国を見捨てる」という記事でも詳しくご紹介した、世界三大投資家ソロス氏の中国経済へのスタンス。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、再び彼のこれまでの発言に着目し、覇権国家目前で全てを失った中国の犯した過ちと、迫り来る中国経済崩壊の危機について分析しています。

ソロス、「中国は、リーマンショック直前のアメリカに酷似」

リーマンショックが起こる8か月前(2008年1月)に、「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終焉を意味する」と予言した、世界的投機家ジョージソロス。今度は、「今の中国はリーマンショック直前のアメリカに酷似している」と発言し、世界を動揺させています。

ソロス氏:債務で増強の中国経済、07-08年の米国と不気味な類似(1)

Bloomberg4月21日(木)11時25分配信

 

(ブルームバーグ):資産家で著名投資家のジョージ・ソロス氏は20日、債務を増強剤とした中国経済は、クレジット市場が行き詰まり世界的なリセッション(景気後退)に拍車が掛かる前の2007-08年当時の米国に似ているとの認識を示した。

07年を思い出してみると、「サブプライム問題」で盛り上がっていた。08年は、「リーマンショック」が起こり、「100年に1度の大不況」に突入していきました。今の中国は、そんな時期のアメリカに似ている。ソロスさんにいわせると、今は、「超巨大台風前夜」ということですね。

ところで、今の中国と07、08年のアメリカ、どこが似ているのでしょうか?

ソロス氏はニューヨークで開催されたアジア・ソサエティーのイベントで、中国の3月の与信の伸びを警戒警報とみるべきだと述べた。

 

中国の3月の経済全体のファイナンス規模は2兆3,400億元(約39兆7,000億円)と、ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値である1兆4,000億元を大幅に上回り、中国当局が債務抑制より成長を優先していることを示唆した。

 

ソロス氏は中国の現状について、「同様に与信の伸びで増強されていた07-08年の米国の金融危機当時と不気味なほど似ている」とし、「皆が予想する時期よりも後に転換点を迎える可能性がある」と語った。
(同上)

ソロスさんは、世界で23番目の金持ちであると同時に、「オープンソサイエティ財団」を通し、積極的に政治活動をしていることで知られています。つまり、彼の発言は、「実際に中国の現状はそうだから」という側面と、「そういう状況を作り出したい」側面があることを知っておく必要があります。

どういうことでしょうか?

A社はやばい状況にある。誰かが、「A社はやばいよ」と言えば、事実を語ったのです。A社は、「ヤバい」とまではいかない状況にある。しかし、ソロスさんのような有名人が、「A社のハードランディングは不可避だ!」と言えば、A社株は大暴落するでしょう。これは、「事実を語った」のではなく、「事実を創り出した」のです。

そういえば昔、「Xファイル」で、世界支配者グループのメンバーが、スカリーに、「予言を当てる一番いい方法は、自分が予言した現実をつくり出すことだ」と言っていました。ソロスさんにそんなことができるとは言いませんが、「かなり影響を与えることはできる」と言えるでしょう。

ところで、過去と今のソロスさんの発言を追っていくと、

国際金融資本は中国を愛していた

しかし今、「国際金融資本は中国を見捨てた」という事実が見えてきてとても面白いです。

国際金融資本は中国にだまされていた?

皆さん、こんな話を聞いたことがあるでしょう?

  1. 世界を支配しているのは、「国際金融資本」である。
  2. 「国際金融資本」は、国境を超越しており、アメリカが覇権国家でなくても困らない。
  3. 「国際金融資本」は、アメリカの次の覇権国家を「中国」に決めた。
  4. だから中国の未来は明るい。

まず、「金持ち」の方が貧しい人よりパワーがあるのは、そのとおりでしょう。皆さんの会社でも、一番金持ちの社長さんが、一番パワーもあり、支配力もあるはずです。

そして、この世は、とてつもない「格差社会」。なんと、金持ち62人の資産は、貧しい36億人分に匹敵する。そして、トップ1%の資産は、その他99%の資産より多い。証拠はこちら。

たった62人の大富豪の資産が、下位36億人の資産と同じという衝撃データ

トップ62人の支配力はどのくらいなのか、想像するのも困難ですね。

さて、フォーブス富豪ランキング最新版によると、世界で23番目の金持ちである、ジョージ・ソロス。既述のように、「オープン・ソサエティ財団」を通して、世界の政治にも深く関わっている。バリバリの「国際金融資本メンバー」といえるでしょう。

そんな彼の過去の発言を追っていくと、「国際金融資本は実は中国にだまされていたのでは?」と思えてきます。06年に出版された、『世界秩序の崩壊 「自分さえよければ社会」への警鐘』(ジョージ・ソロス)には、以下のように記されています。

ところが、ここに、皮肉にも愚かな事態が起きた。近隣の大国・中国が基本的に多極主義を受け入れ始めた矢先、アメリカ合衆国が正反対な方向へと動き、国際的な諸制度への疑念を強め、最近の国家安全保障面での難題に対して大幅に一極主義的な治療策を遂行したのである。

ここでソロスさんがいっているのは、

「多極主義を受け入れた中国は賢明だ」
「一極主義のアメリカブッシュ政権は愚かだ」

ということです。つまり、彼の頭の中では、06年の時点で、

アメリカブッシュ政権はバカ
中国は賢明

という構図になっていた。さらにソロスは、いいます。

日本は、この両国の板挟みになった。

 

かたや最大のパトロンかつ保護国ながら、昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきたアメリカ。

 

かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。

どうですか、これ???

かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。

ソロスさん、中国については、「最高評価」といってもいいでしょう。

こういう思考を持っているところ、アメリカでは「住宅バブル」が崩壊した。07年、「サブプライム問題」が顕在化してきた。そして、彼は08年1月、リーマンショックが起こる8か月前に、決定的宣言をします。

「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。
(ジョージ・ソロス ロイター1月24日)

この時点でソロスは、「アメリカの時代は終わってもいい俺たちは中国と共に繁栄していける!」と考えていたのでしょう。2010年11月、彼はこんなことを言っています。

アメリカから中国への、パワーと影響力の本当に驚くべき、急速な遷移があり、それはちょうど第2次世界大戦後の英国の衰退とアメリカへの覇権の移行に喩えられる。

今日、中国は活発な経済のみならず、実際に、アメリカよりもより機能的な政府を持っているという議論を呼ぶであろう。

これ、論理的に考えると、とてもおかしなことです。ソロスの財団は、「開かれた社会」を目指している。要するに、「民主主義」で、「言論、信教、結社の自由」などがあり、「人権の守られる」社会のことです。ところが、一党独裁で人権が全然ない中国について、「アメリカより機能的な政府だ!と大絶賛している。

こんなところからも、「ソロスは、中国がアメリカにかわる覇権国家になることを後押ししていた」様子が伺えます。

だまされたことに気がついたソロス

ところが、ソロスの期待は、「アッ」という間に裏切られます。12年、既に彼は「反中」に転じていました。

12年10月、「成長モデルが息切れしつつある」と発言。13年5月、中国の高利金融商品が、「サブプライムローン」に似ていると批判。14年1月、「中国の成長モデルはすでに力を失っている」と指摘。そして、2016年1月21日、ソロスは、また「あまりに率直な発言」で世界を仰天させます。

ソロス氏:中国のハードランディングは不可避、株投資は時期尚早(2)

Bloomberg1月22日(金)9時54分配信

 

(ブルームバーグ):著名投資家ジョージ・ソロス氏は21日、中国経済がハードランディングに直面しており、こうした状況は世界的なデフレ圧力の一因になるだろうと述べた。

 

同氏はまた、中国情勢を考慮して、自分は米株の下落を見込んだ取引をしていると説明した。

 

ソロス氏はスイス・ダボスでのブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「ハードランディングは事実上不可避だ」と指摘。「私は予想しているのではなく、実際に目にしている」と語った。

中国の

ハードランディングは事実上不可避だ!
「私は予想しているのではなく、実際に目にしている!

皆思っているけれど、怖くて口に出せなかったこと。それを、「ドカン」といってしまったソロス。この変貌ぶりはなんでしょうか?

「国際金融資本」が中国を「覇権国家」に選ぶ条件はなんでしょうか? そう、中国指導層が、「今後も国際金融資本の言うことを聞き続けること」です。つまり、「国際金融資本」が描いていた構造は、

  1. 中国が世界を支配する
  2. 国際金融資本が、中国を支配する

であった。ソロスの発言を見ればわかるように、2010年頃までは、中国も、「それでいいですよ。今まで通り、世界を支配してください。私たちは、いままで国際金融資本に従順でしたし、これからもそうあり続けることでしょう」と一貫してウソをつき続け国際金融資本の信頼を勝ち取っていた

ところが、中国指導層は、「俺たちが十分力を蓄えた暁には、国際金融資本など駆逐してやる!」と考えていた。そして、2013年3月に国家主席になった習近平は、「もう俺たちはアメリカを越えた。もはや国際金融資本の言うことなど聞く必要はない!」と増長したのでしょう。それで、ソロスの態度が豹変したのだと推測できます(習近平が国家主席になったのは2013年だが、その前から中国は増長していた。アメリカもロシアも「リーマンショック」後、「1人勝ち状態」になった中国指導層の態度の豹変ぶり、増長ぶりに驚いていた)。

ここまでをまとめると、中国は、「もう国際金融資本に逆らってもいい」と判断し、実際そうした。ところが、その結果、中国経済はボロボロになってしまった。これが、今の世界で起こっていることの本質なのでしょう。

image by: Frame China / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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