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なぜ、松下幸之助は「運が悪い」と答えた人間を不採用にしたのか

誰もが知るようなカリスマ経営者は、なぜか「不幸な生い立ち」であったり「壮絶な人生経験」をしている方が多いように見受けられます。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、そんな経営者3人の例を上げながら、成功するために必要な「2つの要件」と「3つの要素」を紹介しています。やはり歴史に名を残すのは簡単なことではないようですよ。

経営者の性格形成

企業の「最大の経営資源」が経営者であるとするならば、成果を実現させる経営者の性格形成を知ることは秘儀を知ることともなりそうです。ただそのあり様を見てみると、あたかも禅宗の僧侶が「悟り」を開くにも似ており「知識」ではなく「知恵」として訪れるもののようです。その意味では、安易に体得はできそうもないものとも言えます。

松下幸之助さんですが、公的にはきらびやか成功の人生ですがその裏面には私的な苦悩の生い立ちがあります。幸之助さんは3男5女の末っ子でした。父親は11歳の時に、母親は18歳の時に亡くし、兄、姉もはやく26歳で長姉も亡くしており、おまけに長男も1歳にも満たずして亡くしています。

松下幸之助さんは、成功の秘訣を聞かれて3つのことをあげています。

  1. 貧しい家庭に生まれたこと
  2. 学歴が無いこと(小学校中退)
  3. 身体が病弱であること

肉親を早くに亡くしていることとも加えて、物事の本質を深く考えることが自分を律する術となって経営者としての人柄が形成されて行ったようです。

そんな松下さんですが「自分は運が良かったから成功した」と言い、社員の採用面談の最後に「あなたは、運がいいですか」と問いかけ「運が悪いですと答えた人は採用しなかったそうです。そこには、その人の思考スタイルを瞬時に見分けるカラクリがありました。それは、人がどのような「考え方」を持つべきかを教えるものでもあります。

少し話が回りくどくなるのですが、お付き合い下さい。人には生まれ持って自尊心があり、傷つきたくないがために失敗した場合にも「自分の能力が劣るのだ」と思いたくはありません。だからといって、能力を高めるための辛い努力もしたがりません。その時に役立つ考え方が「運が悪いから仕方ないのだ」というものです。

人の心の「摩訶不思議さ」は、自分を防衛するために無意識で「ごまかし」もできるし自分を信じて不可能を可能にもしてしまいます。「運が良い」と思える人は、失敗したり思い通りに行かなかったりした場合でも見方を変えたり更なる努力を傾けてチャレンジすることができます。この人が、成果をもたらすことができて貢献できる人と言えます。

成功する経営者には2つの要件と3つの要素があるようです。2つの要件とは「上昇志向」「自己効用感」であり、3つの要素とは「勇気」「価値観」「素直さ」です。洋の東西を問わず、偉大な経営者はこの2つの要件と3つの要素を自身の生い立ちのなかで「知恵ある悟り」でもって獲得しています。

自己効用感」とは聞きなれない言葉なので、解説します。自己効用感とは、自身が目標を達成する能力があるとする確信」です。この確信は、不運であると感じていたことや困難であると感じる場面において自身の「知恵」や「勇気」を持って克服した時に生まれるものです。多くの成功する経営者には「自己効用感」を持つに至る経緯があります。

京セラの稲盛さんが「自己効用感」を持ったのは、13歳で「おじ」と同じ肺浸潤で病床にふせっていた時で、たまたま隣家の女性に勧められて谷口雅春の『生命の実相』を読むことがありました。そこ書かれていたのは「心のあり方」が現象として現れるという考え方で、このことに衝撃を受けるとともにいつしか病も癒えてゆきました。

TSUTAYA社長の増田宗昭さんにも興味深いエピソードがあります。幼いころ自動車事故に遭い顔に傷を負い、また甘えん坊であったので「いじめ」に遭うことになりました。それが、父親の事業の失敗や母親の頑張りを契機として自分の意思でレスリング部に入りいじめを克服して境遇を一新させました。

一見些細な少年期の出来事のようですが「自身の意志力で困難を克服できた体験は名経営者として成長するための拠り所ともなり得ます。

image by: Lucian Milasan / Shutterstock.com

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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