ピエロの出で立ちで、小児科病棟の子供たちとふれあう「臨床道化師」ですが、そのコミカルな外見からは想像もつかないほど大切な役割を担っているといいます。無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、臨床道化師として活動を続けている塚原成幸さんのインタビューが紹介されています。
今日の注目の人
病院の子供たちに笑顔を取り戻そうと活動を続ける臨床道化師の塚原成幸さん。その具体的活動に迫ります!
やっぱりお母さん
多くの方は病院イコールしんどい場所で、病院では笑顔になれないから、子供たちを笑顔にするために道化師が必要だと思われているんですけど、実は違います。
僕たちはもっと違う角度で子供の現実を見ていて、笑えるまでの助走期間を担うのが臨床現場に入る道化師の役目なんです。
笑わせるところを僕たちが取ってしまったら、それは横取りなんですよ。
それよりも子供たちが笑って関わってほしいのは、日々お世話をしてくれている看護師や主治医の先生、そして病気を抱える子供中心の生活にならざるを得ない親御さんたちなんです。
特に入院している子供がどこまで本心を親に伝えられているか、または親が子供に伝えられているかということになると、お互いかなり無理をしているところがあると思います。
なので、そういう途切れそうな人間関係を再構築させることも、僕らの大切な役割です。
例えば生まれてすぐの新生児が、NICU(新生児集中治療室)に入ったとします。そうすると、その子のお母さんの心理状態はどうかというと、
「ごめんね、ごめんね」
を連呼するというケースがほとんどです。
というのも、生まれてすぐに保育器の中に入れられるので、自分の腕で抱くこともほとんど許されないんですね。
いまは500グラムで生まれてきた子もちゃんと育つといわれていますが、お母さんにしてみると、小さい状態で産んでしまったことで自分を責めてしまい、そんな自分を受け入れられないまま子育てがスタートします。
そうすると子供が大きくなっていっても、そのことが気持ちの中にずっと残るんですね。
だけど気持ちを楽にしてくれる誰かが入ることによって、例えば病室にいる子供に近づいていくと、最初は驚いて泣き出したり、ちょっと嫌がったりする。
その時に、
「ああ、やっぱり嫌われちゃったな。お母さんちょっと顔を見せてあげて」
と言って、お母さんに助け船を出してもらうんですよ。それでその子が泣きやんだりすると、
「やっぱりお母さんは違うな」
って言う。
『致知』2016年9月号【最新号】 連載「生命のメッセージ」 p102
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