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水面に映る中秋の名月。京都嵯峨・大覚寺で「観月の夕べ」という贅沢

京都の魅力をお届けする無料メルマガ『おもしろい京都案内』で今回紹介されているのは、9月15日~17日に嵯峨嵐山の大覚寺で開催される「観月の夕べ」。平安時代に貴族たちの間で流行したというお月見ですが、直接眺めるのではなく、杯や池などに映る月を観て楽しむという何とも風情のあるものだったといいます。その雰囲気を今も楽しめるという「観月の夕べ」、一体どんなイベントなのでしょうか?

「観月の夕べ」 大覚寺 大沢池

大覚寺の大沢池(おおさわのいけ)は、日本三大名月観賞地であることで有名です。観月の名所として知られ、中秋の頃には観月の夕べが開催されます。詳しくは大覚寺のホームページまで。

● 旧嵯峨御所大本山大覚寺

観月の風習は1,000年以上昔に中国から伝わりました。その後、日本では平安時代に貴族の間でとても流行しました。当時の皇族や貴族たちは、月を直接仰ぎ見るのではなく、手に持つ杯や池に映る月を観て楽しんだそうです。嵯峨大覚寺は平安時代初期の嵯峨天皇の離宮、いわば別荘でした。そんな都のはずれにある嵯峨野の地に池を造り船を浮かべ月見を楽しんだのです。

現在その池は大沢池(おおさわのいけ)と呼ばれ、人造湖では日本最古のものとなります。離宮の一部である大沢池は中国の洞庭湖に模して造られたと言います。和歌にも詠まれたこの有名な場所の池に映った満月を嵯峨天皇や仲の良かった空海などが文人墨客と共に愛でていたのです。今もその風情はそのままに残されていると伝えられています。

毎年中秋の名月の時期になると、1,000年以上前と同じ光景を見ることが出来る「観月の夕べ」が行われます。2隻一対の龍頭船(りゅうとうせん)を池に浮かべて、それに乗って月を観賞します。周りには自然の風景しかなく、月と池しか見えない景色はまさに嵯峨天皇や空海が見ていたものと全く同じものでしょう。このような風雅な行事というか風習はやはり他の地域ではなかなか味わうことの出来ない京都ならではのものだと思います。

中秋の名月とは?

中秋の名月は旧暦8月15日十五夜の夜の月のことです。今年、2016年の中秋の名月は9月15日です。中秋とは秋の真ん中(旧暦8月)を意味します。名月は秋の夕べに見えるひときわ大きなまんまるな満月のことをいいます。中秋の名月の日に月が雲に隠れて見えないことを「無月(むげつ)」といいます。雨が降ってしまう場合は「雨月(うげつ)」といいます。月見は実際に見ることが出来なくてもその存在や秋の風情を感じ宴を楽しむものです。

月は大昔から日本人の心の中に大切なものとして存在していたことが分かります。日本神話の中にイザナギとイザナミの子としてスサノオノミコトと共に月夜見命(ツクヨミノミコト)の存在が記載されています。

大覚寺

真言宗大覚寺派の本山で876年嵯峨天皇の離宮嵯峨院を皇女が寺院に改めたのが始まりです。それ以降、歴代の天皇や皇族が住持された門跡寺院となり、嵯峨御所と呼ばれてきました。書院造の正寝殿は後宇多天皇が院政を執った部屋で、京狩野(きょうがのう)の祖・狩野山楽筆の障壁画が多数所蔵されています。

宸殿は徳川2代将軍秀忠とお江の間に生まれた東福門院和子(後水尾天皇の皇后)が女御御殿の宸殿として使用していた建物です。こちらにも狩野山楽筆の牡丹図・紅白梅図などが所蔵されています。また、嵯峨天皇をはじめ後光厳・後花園・後奈良・正親町・光格の各天皇の写経が祀られていています。このことから般若心経写経の根本道場としても知られています。

境内の東側に広がる大沢池は、平安時代に唐・中国の洞庭湖を模して造られた日本最古で最大の人造池です。月見のためだけに嵯峨天皇が造営させたものと伝わります。池の周りには桜や楓が約650本も自生し、平安時代から1,200年変わらない風光明媚な風景を楽しむことができます。

池の真ん中に華道のいけばな嵯峨御流の礎となった菊ヶ島があり、大覚寺はいけばな嵯峨御流の総司所としても知られています。池の北側にあった名古曾滝(なこそのたき)は有名で平安時代から歌の名所としてもてはやされました。

「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」  大納言公任

藤原公任(ふじわらのきんとう)の歌で百人一首に選ばれている一句です。天皇の別業の地(別荘)として始まり、門跡寺院として受け継がれてきた大覚寺月見華道和歌に詠まれた場所として観るべきものに事欠かない名所です。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock

 

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