北海道・函館で知らぬ人はいないハンバーガーチェーン「ラッキーピエロ」。徹底的に地域・顧客密着を掲げ実現し続けている函館の王者です。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、ローカルヒーローとも言うべきこの企業の戦略を詳しく分析・解説しています。
地域一番の意味
函館で人気No.1のハンバーガーチェーンを展開している企業を分析します。(最後にまとめ解説もあります)
● ラッキーピエロ(ハンバーガーチェーン)
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):函館のテーマレストラン
- 競合(お客様の選択肢):ファーストフード、ファミレスなど
- 状況:函館市の人口は減少傾向にありますが、観光客は増加傾向にあるようです。
■強み
1.美味しい
- すべて手作り。作り置きはしない。
- 地元の食材を利用。
- 冷凍品は一切使わない。
2.楽しい
- 店ごとにテーマ、店づくりが異なる
- 峠下総本店にはメリーゴーランドやイルミネーションがあります
3.豊富なメニュー(驚きのメニューも)
- ハンバーガー以外にカレーライスやオムライスなどを揃えています
- 高さ20cmのTHEフトッチョバーガー
⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★地域一番店主義(地元函館に徹底して密着)
- 人材が育ってから、店舗を出店。
→人が育っていないのに店を出したら、顧客に迷惑がかかるため。 - 地元函館の人を大切にする、喜ばせる。
- 食材は地元産にこだわる。
- 地域の特性に合った店づくり。
- 顧客の要望に応えてメニューを拡大。
→出店当初はハンバーガーのみの8種類だったが、現在は150種類。
上記のように、地域に徹底的に密着できているからこそ、強みを実現できているといえます。
■顧客ターゲット
- 函館市民、観光客
- お子様からおじいちゃん、おばあちゃんまでの全年齢層がターゲット
◆戦術分析
■売り物
メインはハンバーガー
- ハンバーガーは22品目。
一番人気はチャイニーズチキンバーガーで、函館名物となっているほどです。 - ハンバーガー以外にも、店舗によって異なりますが、カレーライスや焼きそば、オムライス、ピザ、スパゲッティ、餃子、カツ丼などのメニューを揃えています。
- すべて手作りで、絶対に作り置きはしない。冷凍品は一切使わない。
- 地産地食へのこだわり(すべての材料の85%が北海道産)
■売り値
- リーズナブル(手作り&圧倒的ボリューム感で、ファーストフード並みの価格)
→学生の多い店舗では、ドリンクの価格設定を低めにしています。
■売り方
常連客を「えこひいき」する
- 「サーカス団員制度」というポイント会員制度があり、準団員、正団員、スター団員、スーパースター団員の4ランクに分けられていて、ランクに即してさまざまな特典がつきます。
- スーパースター団員になるためには、累計利用額で14万4,000円が必要です。
- スーパースター団員になると、利用還元率6%以上に加えて、「スーパースター団員の○○様、ありがとうございます」と迎えられます。さらにラッキーピエロの新年会にVIP待遇で招待されるなどの特典があります。
■売り場
- 函館市内周辺に17店舗を展開。全店が異なるコンセプトで作られています。
→全国展開は考えず、徹底して地域に密着していく方針です。
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
まとめ(戦略ショートストーリー)
函館に住む全年齢層をターゲットに「地域一番店主義(函館に徹底して密着)」に支えられた「美味しい」「楽しい」「豊富なメニュー」という強みで差別化しています。
コンセプトの異なる店舗を展開し、顧客ニーズに応えて、リーズナブルなメニューを拡大し続け、常連客をえこひいきする接客で、地域の幅広い層の支持を得ています。
■分析のポイント
「地域一番の意味」
ラッキーピエロは、函館という地域で一番になることを目標にしてきて、それを実現しています。
地域一番店になることのメリットとしては競合企業との競争において、安定的に優位に立てるということがあげられます。実際に、ラッキーピエロは函館市内において、安定的優位な立場といえる状況です。
函館市内においては、ハンバーガーチェーンの店舗数はラッキーピエロが最多で、マクドナルドなどの大手チェーンも少数派となっています。
全国でみたときには、ハンバーガーチェーンとして、マクドナルドは圧倒的な王者であり、その地位は安定的です。マクドナルドを脅かすようなハンバーガーチェーンが現れるとは思えないですよね。
しかし、函館では、マクドナルドは追いかける立場なわけです。そう、函館では、ラッキーピエロが王者なのです。
王者(地域一番店)が、なぜ優位かというと、その地域の多く顧客の選択肢の最初に出てくる存在であるということ。最初に出てこないとしても、選択肢に入る可能性が非常に高い存在であるということです。
しかも、ラッキーピエロの場合は、店舗ごとにコンセプトやメニューも異なるので、ベイエリア本店にしようか、それともマリーナ末広店にしようかと顧客の選択肢の中に、ラッキーピエロが複数店入ってくることもあるでしょう。
当たり前ですが、顧客の頭の中の選択肢に浮かばない店が、顧客に選ばれることは、まずありませんので、顧客の選択肢に入るということは、非常に重要なポイントです。
そして、ラッキーピエロは函館市内を中心に17店舗を展開していまして、かなり密集して出店しているようです。17店がすべて異なるコンセプトで出店しているというのもありますが、近い店舗では店舗間の距離が歩いて数分とのことです。
これは、競合企業へのけん制になりますね。競合企業が出店するにも、これだけ周辺にラッキーピエロのお店があると出店しにくいものです。よい立地も押さえられていますしね。しかも、地元から非常に愛されている店ですから、なおさらです。
これらのように、エリアを絞った局地戦に持ち込めば、大手チェーンをも凌駕することができるということを、ラッキーピエロは実証しています。
もちろん、ラッキーピエロは、顧客密着の戦略を掲げ、約30年にわたり顧客密着を徹底してきた結果として、地域一番店となっていることも忘れてはいけませんね。
今後、予想される人口減少という環境の中で、ラッキーピエロがどのように成長していくのか、注目していきたいです。
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